バーで飲むハイボール【2】 ロックフィッシュ

August 29, 2012

第一回目から大好評となった新連載「バーで飲むハイボール」、第二回目は「ロックフィッシュ」。「ハイボールといえばこの店」といわれるほどの名店だ。酔っぱライター・江口まゆみがその評判のハイボールと絶妙な組み合わせで楽しませてくれるフードをレポート。

ロックフィッシュは銀座のはずれ、新橋からほど近い雑居ビルの2階にある。バーにしては明るめの店内。入口のカウンターは立ち飲み、奥に数席のテーブル。小さな店はいつ行っても満員だ。とくに日本中でハイボールが流行ってからの混み方はすさまじい。

「うちは10年前からハイボールを出しているんですけどね。それがおいしいと噂になって、今では出る酒の95%はハイボールです」と言うのは店主の間口一就(かずなり)さん。
出身地の愛媛にはオーセンティックなバーはなく、あるのはスナックぐらい。そんな中、トム・クルーズの映画「カクテル」を見てバーに憧れ、大阪でバーテンダーになった。10年後に上京し、ロックフィッシュを開くと、彼の作るハイボールが評判になる。さらに缶詰などを駆使したつまみも話題になり、酒やつまみに関する著書も出した。9月には「麺々エブリディ」という新刊を出版する予定だ。

では、噂のハイボールを飲んでみよう。作り方はシンプル。
グラスとサントリーの角とウィルキンソンの炭酸を、あらかじめよく冷やしておくのがポイントだ。ウイスキーと炭酸を1対3の割合で入れ、レモンピールを搾る。氷は使わない。スッキリとしていて、レモンの香りが効いている。ウイスキー臭さがないので、女性やウイスキーが苦手な人にも好評だ。
一杯目からスイスイ飲めて、ずっと飲み続けられる。だから、ビールを頼むお客さんはほとんどいないという。

ロックフィッシュといえば、缶詰つまみも有名だ。なかでもオイルサーディンは誰もが注文する名物。缶詰のメーカーは「竹中」に限定。小さいイワシを使っているので食べやすいのだとか。その油を切って、酒と醤油と胡椒を加え、火にかける。最後に山椒の実の佃煮をかけて完成だ。
食べてみると、意外にサッパリしていておいしい。酒と醤油がいい具合にからんで、山椒の実がアクセント。スッキリとしたハイボールとも相性抜群だ。

さらに自慢のつまみスコッチエッグをいただく。ゆで卵にコンビーフを巻いて、胡麻をまぶし、半分に切ったものが出てきた。コンビーフの塩気と胡麻の食感がいい感じ。お好みでマヨネーズやケチャップ、ガラムマサラをつけて食べてもおいしい。

間口さんは酒好きで、赤羽や立石など下町の居酒屋が大好きだという。だから、ロックフィッシュにもどことなく居酒屋っぽい雰囲気がただよっている。「チャージもないし、安いし、バーと言ったらほかのバーに悪いから、うちは飲み屋だと言っているんです」と間口さん。お客さんと談笑することもなく、一緒に飲むこともなく、いつもキビキビと働いている。

そんな間口さんに聞いてみた。「今一番行ってみたいお店はどこですか?」と。すると「それはもう、ロックフィッシュです。お客さんを見ているとホントに楽しそうだなあと思うんですよ。だから自分の接客でこの店で飲んでみたいですね。いや、もちろん不可能ですが。夢ですね、ハハハ」
今日もまた間口さんは、愛するお店でおいしいハイボールを作り続けているのである。

バーで飲むハイボール【1】 スタア・バー・ギンザ

カテゴリ: Archive, features, TOP, バー, 最新記事