絵画とウイスキーの共通点

May 11, 2013

スコットランドで今最も話題の画家と対談し、彼のモルトウイスキーとの関連を訊く

Report:アマンダ・ブロック

読者の方々も子供の頃、いつか有名になって使う日を夢見て、一生懸命自分のサインを練習したことがなかっただろうか。

ジョン・ローリー・モリソンもそうした練習をして、自分の3つの名前からそれぞれ最初の2文字を取ったjolomoというペンネームを作り出した。今では、このペンネームでスコットランドのハイランド地方の風景画を描き、その過程で同国の最も愛されている芸術家のひとりになっている

Jolomo(モリソン)はスコットランドのハイランド地方を鮮やかな色彩でドラマチックな絵画に仕立て、スコットランドの西海岸を描くことで有名になった。学生時代に才覚を現し、グラスゴー芸術学校に入学し、60年代に教鞭を取った。彼は妻のモーリーンと若い家族(3人の息子)および彼の兄と一緒にアーガイルに移った。ここは彼が子供の頃休日を過ごした場所で、過去38年にわたり彼らの居住地となった。

モリソンは、スコットランドの西海岸での休日について楽しそうに語る。田舎で休日を過ごすことが若いモリソンに一種の自由を感じさせた。彼はタイナブルーイックの港でウェイバリー行きや他のボートが発着するのを見ながら何時間も楽しく過ごした様子を話してくれる。国内で休日を過ごす幸せなスコットランド人でいっぱいだった。

今では彼の従兄が住んでいるハリス島にモリソン家は菜園を持っていて、モリソンもそこに滞在することがある。ハリス、マルや他の島への旅行を経験した後モリソンは初めてアイオナ島に出かけた。アイオナはモリソンの多くの絵画の題材となっており、非常に宗教的なこの島は、少なくとも、しばらくの間はモリソンの作品とほぼ同義語となっていた。

アイランズモルトで知られるこれらの島々で多くの時間を過ごしたモリソンが筆者に「ウイスキーとウイスキーづくりに関わることはすべて好きだ」と語るのはあまり驚くにはあたらない。

「スカイ島ポートナロングに住む私の従兄マード・マックロードが以前カーボストの蒸溜所で働いていたので、私は何回もそこに行ったことがある。私はマードの生き方が好きだった。彼は菜園を持ち、ハリスツイードを織り、地元のトラック運転手で、かつタリスカーで働いていた」

モリソンは絵画で生計を立てられるのはすばらしいと言う。彼はストラスクライド地方での芸術アドバイザーが最後となった輝かしい教職時代に続き、過去14年間フルタイムで絵を描いている。「ウイスキーづくりと私の仕事には共通点があると思う」

「ウイスキーは長いプロセスを経てゆっくりつくられる。私は絵具の層を積み上げて絵を描いていくが、これはまず風景の下絵を描き、写真を撮って、ゆっくり構想を練っていくことから始める。これは長いプロセスで、そのプロセスは私が8才の頃から継続している。現在までが全部つながっているので、いわばより大きい構図になっている」

彼は自分が描く風景のなかにどのように人の存在を感じ取らせるのかを説明する。菜園に梯子が立てかけられたのを見ることもあるだろう。菜園の存在自体がもちろん我々人間の存在を表している。

モリソンがよく描くので知られているのは菜園だけではなく、風景の中に見られる他の建物や灯台、教会、また蒸溜所だ。

モリソンのカタログを見た、あるいはJolomo ランドスケープ・ペインティング・アワードを知っている人は彼がバルブレア蒸溜所と関係があるのに気がつくだろう。

「蒸溜所とそこに働く人々は私にとって非常に興味深い」とモリソンは語る。

「バルブレアの所有者が私から彼らの蒸溜所の大きな絵を買ったことがある。訪問した時にエダートンの蒸溜所を見た。すばらしい経験だった」

モリソンは笑みを浮かべて言う。学生時代から現在に至るまで彼は常に、スコットランドの風景の中でもそれほど魅力がない場所を描くのが好きだった、と。そしていくつか具体例を挙げる。

その中で特筆すべき人造建造物は、アレックス・サモンドが自治政府首相として最初につくったクリスマス・カードにも描かれたリンリスゴー宮殿だった。

この絵画は慈善事業用印刷版として非常な成功を収め、2万5千ポンドを売り上げ、最終的に慈善事業のための競売に出され、かなりの高値を獲得した。小さな白い小屋を描いた古典的なモリソンの絵画は非常に人気があるが、彼は新しい絵画スタイルを試すことを恐れていない。彼の絵画技法は拡大と発展を続けている。近年、そのスタイルはより自由で若干抽象的になっている。一定の形をまだ決めていないのだ。
モリソンの絵具パレットは日常的に変えられ、彼のム−ドを反映することもある。「私の絵画は一種の明暗法で、色彩と暗さ、および光と影が人間の精神の寓意となっている」

モリソンのウイスキーに対する好みは従兄のマードにより形成されたようだ。

「私はタリスカーあるいはアイラモルトのようなピートの効いたウイスキーが好きだった」

しかし彼は自分のウイスキーに対するパレットは、絵画の場合と同じように時間をかけて発展してきたことを認めている。

「私が年をとってパレットも変わってきたように、今では軽いウイスキーの方が好きだ。バルブレアの他に、アイランズのスキャパなどのモルトが大好きになった」

良質のウイスキーを味わえるのはモリソンが成功した唯一の恩典ではない。彼は慈善団体に寄付することでよく知られており、毎年様々な慈善事業や競売用に年間40以上の絵画を寄付している。(彼自身の「天使の分け前」だ)。自身の成功に関して「継続的な成功は慈善事業、また自分の慈善団体を通して、あるいはザンビアやマラウイのような他国で人々と協力して、財政面で人々を支援できることでもあった」と語る。

2005年にモリソンはJolomo基金(The Jolomo Foundation)というスコットランドの風景を描くことを推進、奨励する慈善団体を設立した。
この慈善団体を通じて2006年にはJolomoアワードが設立され、その最初の授与が2007年に行われた。賞金総額が3万ポンドに上るこの賞は、英国で最大の民間資金による芸術賞となっている。
最初の賞の成功に続き、Jolomo基金はグラスゴーで2009年2回目の授賞式を行ったが、そのスポンサーの1社がバルブレアだった。

ウイスキーを愛する画家が、ウイスキーにまつわる土地を題材に作品を描き出す。
読者のみなさんにも、グラスを片手に眺めていただきたい。

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