空前のウイスキーブームに沸くアメリカ(上)

August 17, 2015

膨大なウイスキーのコレクションを売りにしたバーがアメリカで急成長している。ニューヨークとシカゴから、増加するウイスキーファンに対応するバー経営の現状をレポート。

文:ライザ・ワイスタッチ

 

ニューヨーク「ブランディーライブラリー」のようにストックのバリエーションで勝負するバーは、在庫の補充と維持に頭を悩ませている。

4月下旬、ニューヨークのトライベッカ。開店して11年になるバー「ブランディーライブラリー」の店主であるフラビアン・デゾブランは、3カ月も入荷待ち状態だった「響12年」と「響17年」を3本ずつ受け取って胸をなでおろした。昨年イーストヴィレッジで開店したやや小ぶりな店「コッパー&オーク」にも同銘柄を2本ずつ補充し、「山崎12年」6本と「白州18年」3本も手に入れた。

「でもたった3本ずつなんて信じられない。山崎12年も、山崎18年も、10年前ならすぐ手に入った。1カ月は余裕を見て買い置きしているけど、3カ月も探し回るはめになるとは。山崎と響を切らしているときは、本当に惨めな気分だった」

2004年にブランディーライブラリーを開店したときは、日本のウイスキーを話題にしている人も、マニアのようなウイスキー愛好家もいなかった。だが今や事情は変わり、ウイスキーは大流行。アイリッシュウイスキーの消費も8年連続で倍増し、話題にすらなら上らなかったライウイスキーの価値が急上昇し、バーボンの生産が需要に追いつかない。米国蒸溜酒協議会によると、スーパープレミアムクラスのアメリカンウイスキーは10年で120%も増産した。各人がお決まりの銘柄を飲む習慣は廃れ、熟成年数、カスクストレングス、特別な樽のフィニッシュなどにこだわるマニアックなファンが増えた。

「10年前は、スタッフの商品知識が競争でした。今は製品を入手するのが競争です。ストックの構成はもっと難しい。ある製品が在庫切れのときに、似たようなボトルを2〜3種類おすすめできるような代替品が必要です」

増え続けるセレクション

常連客がより上位のボトルを飲むようになったため、デゾブランのコレクションは30%を増量しただけで総価値が3倍にも増えたという。アメリカのバーは、どこも商品の特徴に焦点を絞ったストックの拡大に力を入れている。シカゴで1993年に開店した「デリラズ」のような名店以外にも、新世代のウイスキーバーが増えてきた。そのようなバーには何千種類ものウイスキーが細かく分類された革製の分厚いメニューがあり、バーテンダーが棚から珍しいボトルを取り出すための高い脚立も付き物だ。

400銘柄で開店して、4年で3,500銘柄までウイスキーが増えたというシアトルの「キャノン」。都市部のウイスキーバーは、どこもストックが巨大化しつつある。

在庫の維持は、いつもバー経営者を悩ませる。客が未知のボトルを求め、無数のボトルが価値を増していく中で、リストを増やすのは綱渡りのようなゲームでもある。

シアトルの「キャノン」は3,500銘柄以上のウイスキーを常備する本格的なバーだ。こんな店も、2011年の開店当時の在庫はわずか400銘柄に過ぎなかったのだという。オーナーのジェイミー・ブードローが語る。

「当店は世界最大のアメリカンウイスキーコレクションが特徴ですが、あらゆるスタイルのウイスキーを網羅しています。19世紀のウイスキーは本当に美味い。お客さまはみな新しい体験を望んでおり、どこにでもあるような有名銘柄は当店に置いておく意味もあまりありません」

(つづく)

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