独立系クラフト蒸溜所として、高品質な樽熟成とシングルカスク商品にこわわるアナンデール。スコッチウイスキーファンたちが、再びローランドの地を目指す時代が帰ってきた。

文:ガヴィン・スミス

 

デービッド・アシュトンハイドが蒸溜所総支配人になって以来、アナンデールのビジネスは着実に成功を収めている。

「オーナーであるデービッド・トムソンと妻のテレーザ・チャーチが抱いている情熱を市場に届けたい。そんな目的に相応しいコアなチームを結成しました。チームは団結して、効率的に目標を達成しています。ブランドの認知度は広がって、ビジネスの見通しも良好。蒸溜所は『ビジット・スコットランド』で5つ星をもらい、ウイスキーづくりを体感できるインタラクティブな蒸溜所ツアーでお客様を呼び込んでいます」

商品のウイスキーについても、アシュトンハイドが解説してくれた。

約百年ぶりに復活し、『ビジット・スコットランド』の5つ星にも輝いたアナンデール蒸溜所。一番の魅力は、妥協のないウイスキーの品質だ。

「最新のシリーズは、ボトル1本85.95英ポンドの『ファウンダーズ・セレクション』。アナンデールのシングルモルト商品がすべてそうであるように、これも単一の樽からカスクストレングスでボトリングされるシングルカスク商品です。一般消費者のみなさんにも味わっていただきたいので、価格帯は100英ポンド以下に抑えたいと思っていました」

上位カテゴリーである「レアビンテージ」では、2014年ビンテージのバーボンカスクモルトを300英ポンドで販売している。また2015年ビンテージのバーボンカスクとシェリーバットも注目度が高い。

価格を抑えたという「ファウンダーズ・セレクション」には、幅広い個性的な樽で熟成した原酒も使用している。たとえばホグスヘッドのシェリー樽や、STR樽(再生樽)もその一例だ。シャトーヌフ=デュ=パプ(赤ワイン)、ラム、コニャック、ポート、テキーラ、その他のワイン樽などにもスピリッツを詰めて熟成している。

「現在は、地元のビール醸造所から預かったビールを樽熟成しています。ビールの熟成が終わった樽で、アナンデールのスピリッツを熟成するという訳です。毎月のように新しい樽のタイプを試していますが、出処がはっきりとした信頼できる樽しか使いません。樽には最高の品質が要求されるので、熟成はとても楽しいプロセスですよ。いま手に入れにれたいのは、ノイリープラットの熟成樽。でもタバスコの樽には興味がありません(笑)」
 

小口で「樽買い」ができる画期的な制度

 
このような実情を明かしながら、アシュトンハイドは樽の販売に関するビジネスモデルについても教えてくれた。

「アナンデールでは、熟成樽の販売もビジネスの重要な一部分。これはアナンデールの『ファミリー』を拡張していくための事業でもあります。樽のバイヤーには、かなり幅広い樽の種類(現在18種類)を提供しています。ここに来てからというもの、樽の売上は堅調に伸びてきており、スピリッツ入りの樽も購入できるようになりました。ご希望なら、そのまま自分のブランド名でボトリングもできるので、簡単にウイスキーを商品化できますよ」

ノンピートの「マノワーズ(Man O’ Words)」とピーテッドの「マノスウォード(Man O’ Sword)」は、地元に縁の深い偉人たちを称えたネーミングだ。

デービッドとチームは、潜在的なバイヤーを想定して新しいオプションも用意した。樽入りの原酒に全財産を投じるつもりがない人や、熟成したウイスキーが届いても量が多すぎて手に負えないと考えている人たちが対象だ。

そこで思いついた素晴らしいコンセプトが『ポートフォリオ購入』だ。これは10種類の樽原酒からなるポートフォリオ(つまりウイスキー10点セット)を3種類(ピーテッド、ノンピート、その両者の組み合わせ)用意し、各ポートフォリオを15人の購入者で分け合うというプログラムなのだとアシュトンハイドが説明する。

「ポートフォリオは厳選された10種類の樽原酒からなっており、その熟成年数もスタイルも異なっています。購入者には、毎年1つの樽からボトリングされたウイスキーを10年間にわたってお届けします」

ウイスキーの量でいえば、1年で約18本のボトルが10年間連続で届くシステムなのだという。リリースごとにバーボン樽、ラム樽、テキーラ樽、ポート樽、シェリー樽などのさまざまな樽熟成が楽しめるのも嬉しい。

「樽の販売もボトルの販売も、ロックダウンの期間中は好調でした。この期間にオランダとドイツでは専門の販売代理店を任命しました。スカンジナビア諸国も、蒸溜所にとって大きな市場となっています。8月1日に蒸溜所を再オープンしてから、非常に忙しい日々が続いています。カフェと蒸溜所ツアーは水曜日から日曜日までオープンしていて、来場者数の最多記録を塗り替えた日もありました」
 

州ぐるみのPRにも全面協力

 
オリジナルの貯蔵庫2棟は、すでに新しい樽の置き場がなくなっている。樽20,000本を収容できる新しい貯蔵庫1棟が、敷地内に新築された。数ヶ月以内に、その貯蔵庫の一角にはボトリング設備も導入される。現在は貯蔵庫の準備にまつわる一連の業務が一段落したところで、生産部長のマーク・トレーナー率いる製造部門のスタッフ5人がスピリッツの蒸溜に集中している。

デービッド・アシュトンハイドは、ダンフリーズ&ガロウェイ州全体の宣伝を手伝うことも自分の重要な仕事だと見なしているようだ。

「英国内でのステイケーションを考えたら、ダンフリーズ&ガロウェイよりも魅力的な場所はほとんどないでしょう。周囲の景観は本当に美しい。州内のコラボレーションも活発化しています。セントジェームス・スモークハウス社と提携して、アナンデールのウイスキーで漬けたスモークサーモンを作りました。またガロウェイロッジプリザーブズ社は、アナンデールのウイスキーを使ったマーマレードを販売しています」

アシュトンハイドと妻のサマンサ、それに4人の子供たちは、スコットランドとイングランドの国境を越えた南側のカーライルに住んでいる。スコットランドでの仕事には誇りを持っているようだ。

「北に移住して、ここでアナンデール蒸溜所総支配人として働いていることを本当に誇りに思っています。スコッチウイスキー業界でアナンデールのブランドを確立していく仕事は、忙しくて大変な面もあります。でも最初から最後まで、楽しさにあふれた仕事です。生産部長やオーナーはもちろん、チームの一人ひとりから力強いサポートをもらい、大胆でクリエイティブなアイデアを推進することができるから。これほど幸運な仕事も他にありません」

独立したクラフトディスティラーとして、アナンデールはウイスキー業界のプレミアムカテゴリーでシングルカスクにこだわっている。そんな特別感のあるモルトウイスキーを消費者に知ってもらうため、アシュトンハイドと蒸溜所のチームは挑戦を続けている。

「私たちは日々のチャレンジを楽しんでいます。この蒸溜所に宿る価値観を、消費者のみなさんにも信頼していただいている手応えがあります。ファンからのサポートがあるので、日々の重圧にも耐えられるのです。アナンデールの未来は、これまで200年の歴史と同じくらい輝かしいものになると確信しています。私自身もウイスキーを進化させるべく努力を続け、同時にダンフリーズ&ガロウェイ州の魅力も伝えていきたいと思っています」