バランタインに学ぶブレンディングの芸術

February 29, 2016


2月16日に発売されたブレンデッドスコッチウイスキー「バランタイン17年 スキャパエディション」とシングルモルトウイスキー「スキャパ スキレン」を比較テイスティングすることで、緻密なブレンディング技術の一端が明らかになる。バランタインの5代目マスターブレンダー、サンディ・ヒスロップ氏が主導したブランドセミナーの驚き。

文:WMJ

 

両手のグラスから立ち上がる繊細な芳香。個別の要素に気づくたび、見事なバランスで構成された風味の謎が解き明かされる。時間とともに変化する立体的なフレーバー。ウイスキーは、かくも複雑で奥深い。

ブレンデッドスコッチの代表格である「バランタイン」は、40種類以上のモルト原酒とグレーン原酒を使用したブレンデッドウイスキーである。昨年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジでは2部門で最高賞「トロフィー」を受賞し、『ワールド・ウイスキー・バイブル』2011年版では世界最高のウイスキーとして紹介されている。著者ジム・マレー氏が「驚くほど構造化された偉大なスコッチの象徴」と評するブレンデッドスコッチの王者だ。

そのバランタインの5代目マスターブレンダーが、サンディ・ヒスロップ氏である。3代目のジャック・ガウディ氏、4代目のロバート・ヒックス氏の両者から薫陶を受け、創業以来190年(バランタインブランドとしては117年)の歴史を継承している。このたび限定発売された「バランタイン17年 スキャパエディション」は、バランタインのキーモルト原酒のひとつ「スキャパ」の特長を際立たせたウイスキー。2012年に続き、ファンの声に応えて限定で再発売されることになった。

このブレンドの主役であるスキャパは、スコットランド最北部にあるオークニー諸島でつくられたモルトウイスキーだ。新発売の「スキャパ スキレン」は、ユニークなローモンドスチルから生まれるフルーティーなスピリッツを、ファーストフィルのバーボン樽だけで熟成したバニラのような甘味が特長。スキャパ蒸溜所のウイスキーは、小ロットで管理するシングルモルトウイスキー「スキャパ」とブレンデッドウイスキー「バランタイン」のみに使用され、独立系ボトラーズなどの他社ボトルで味わうことはできない。

さまざまな原酒が織りなす絶妙なハーモニーが、バランタインの身上だ。初代マスターブレンダー、ジョージ・バランタイン氏の時代から続くブレンディングの伝統を、ヒスロップ氏は油絵になぞらえて説明する。

「キャンバスの下塗りや画面の背景に相当するベースがグレーンウイスキー。そこに個性豊かなモルトウイスキーが鮮やかな色彩のように加えられます。さあ、テイスティングを始めましょう」

 

ブレンディングの妙技をブレンダー自身が解剖

 

目の前には、6つのウイスキーグラスが並んでいる。1つめのグラスは、スキャパのニューメイク(樽貯蔵されていない蒸溜されたままのスピリッツ)だ。蒸溜所外部では滅多に味わえない非売品である。ヒスロップ氏は、別皿に用意されたパイナップルのドライフルーツの匂いと比較しながら香りを分析する。

「フローラルなトロピカルフルーツの香りが顕著です。奥に革のようなニュアンスもあります。パイナップルのドライフルーツと比較して、トロピカルな要素を識別してみてください。これがスキャパの核となる個性なのです」

そのニューメイクを熟成させた新発売の「スキャパ スキレン」が、2つめのグラスである。左手にニューメイク、右手にスキレンのグラスを持って交互に香りをさぐると、オーク樽の作用がはっきりと把握できた。

「ファーストフィルのアメリカンオーク樽で熟成された原酒が100%なので、バニラのようなクリーミーさが際立っています。弾けるようなレモンドロップのような感触もありますね。さまざまな熟成年数の原酒で、重層的な丸みのある味わいに仕上げました」

3つめのグラスは、がらりと変わって17年熟成のグレーンウイスキー。小麦を原料としたストラスクライド蒸溜所のスピリッツが中心だという。ヒスロップ氏が指摘するのは、アメリカンオーク由来の花、バニラ、バブルガムなどの要素。クリーミーで甘く、オレンジなどの柑橘風味を感じさせる。

「ブレンデッドウイスキーの基本であるグレーンウイスキーを、軽く見てはいけないことがおわかりいただけるでしょう」

そして4つめのグラスは、17年以上熟成したシングルモルトのグレンバーギー。スキャパと並ぶバランタインのキーモルトのひとつである。赤リンゴのようなフルーツ香や、シロップを思わせる凝縮感があり、余韻は長くて甘い。

いよいよ5つめのグラスが「バランタイン17年」だ。先ほどのグレーンウイスキーと比較すると、モルト由来の濃縮感が際立つ。グレンバーギー由来の赤リンゴのような甘みや、かすかなスモークが感じられる。うっとりするようなバランスだ。

「17年はまさにクラシックで、個人的にも最高峰といえるブレンド。この風味の構成で、飲み始めの第一印象に大きな役割を果たしているのがスキャパです。パッっと口にひろがる果実風味や、軽やかな花の香りはスキャパ由来の要素。そのあとで力強い骨格のミルトンダフ、フルーティーで甘いグレンバーギー、なめらかで繊細な後味を作るグレントファーズなどの個性が次々と現れてきます」

そして最後のグラスが、限定発売「バランタイン17年 スキャパエディション」だった。スタンダードな17年よりも、スキャパらしいパイナップルやマンゴーなどのトロピカルな印象が強調されている。柑橘系の爽やかさがあり、余韻は極めて長い。

「デリケートで軽やかな特長がおわかりでしょうか。単にスキャパの比率を増やしたわけではなく、グレーンウイスキーの比率も変えながら全体のブレンドを再構成しました」

 

繊細なブレンドの構造を楽しんで、ウイスキーの世界を広げよう

 

ニューメイクと樽熟成。グレーンとモルト。複数の蒸溜所や微妙な配合の違い。そんな基本的な比較検討を体験しただけでも、ブレンディングの複雑さは想像できる。40種類以上の原酒を使って伝統を継承し、ときには新しい風味を提案しながら、後継者も育てなければならないのがバランタインのマスターブレンダーという重責である。

「フレーバーを識別する能力は、一朝一夕で身につくものではありません。今回のように、さまざまな原酒のサンプルを比較し続けるのが私の仕事です。昨年のISCでトロフィーを受賞したのは大変な栄誉でした。銘柄を伏せたブラインドテイスティングで審査されるので、先入観なしに高品質を認めてもらったという自信になるのです」

やわらかくまろやかな甘味が、すべてのバランタインの共通点であるとヒスロップ氏は説明する。だが熟成年ごとに特性は異なる。17年はスムーズでクリーミー。21年はレーズンを思わせるリッチな風味。30年はシロップ漬けの白桃のようにフルーティーでふくよかだ。

テイスティングの際に、ヒスロップ氏は必ず少量の水を入れてからノージングするのが印象的だった。

「繊細なフレーバーの要素を特定したいのなら、ウイスキーにほんの少しだけ水を入れると香りが開いてくれます。ただしその水は冷やさないでください。風味の複雑さを充分に楽しむには、室温の水が最適なのです」

今回発売された「バランタイン17年 スキャパエディション」は、日本国内でわずか3,000本という限定品だ。このような企画をさらに拡大させる予定はないという。底知れないノウハウを秘めたマスターブレンダーは、最後に深遠なウイスキーの世界を楽しむためのヒントを教えてくれた。

「自分の記憶や人生から掘り起こされる言葉で、ウイスキーの香りや味わいを語ってみてください。私の3人の部下も、みなそれぞれ独自の言葉でウイスキーを表現しています。そして自分にぴったりのウイスキーを見つけて、お気に入りの飲み方で自由にお楽しみください」

 
 


スキャパ スキレン

700ml 希望小売価格(税別)6,400円 40%

 

スキャパの詳しい方法はこちらから。

 

 


 
バランタイン17年 スキャパエディション

700ml 希望小売価格(税別)9,000円 43%

(日本国内3,000本限定)

 

バランタインの詳しい情報はこちらから。

 

 
※掲載価格は、販売店の自主的な価格設定を拘束するものではありません。

 

 

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