バルブレア蒸溜所を訪ねて【後半/全2回】

January 11, 2016


高い品質のヴィンテージをつくり上げるため、サンプリングを通じて最上のカスクだけが選ばれる。そして、さらなる時間がさらなるヴィンテージを生み出す。タイムカプセルの中で語られる、蒸溜所の過去と未来。

文:ガヴィン・スミス

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2006年よりバルブレア蒸溜所を率いるジョン・マクドナルド氏。ヴィンテージの品質に妥協はない

1887年に古典的大作『英国のウイスキー蒸溜所』の執筆用調査でバルブレアを訪れたアルフレッド・バーナードは、蒸溜所の製麦には地元産のピートが不可欠であったという事実を確認している。著書より引用してみよう。

「エダートン周辺の水は、どこもスピリッツの蒸溜に向いていると考えられる。さらに近隣から無尽蔵のピートが得られるため、エダートンは『ピート特区』の名でも知られている」

バルブレアでは従来のヴィンテージが在庫切れになったのを受けて、新しいヴィンテージをリリースしている。現在のラインナップは1983年、1990年、1999年、2003年のヴィンテージで、1999年と2004年のヴィンテージがトラベルリテール(空港など)限定で展開されている。ジョン・マクドナルド氏はこのヴィンテージの構成法について解説してくれた。

「ヴィンテージの年を選ぶと、私たちはその年のカスクをもれなくテイスティングします。カスクは個々に品質を評価され、最上級のカスクだけがボトリング用に選定されます。ここで選ばれなかったカスクは出来が悪いのではなく、まだ最高の熟成度に達していないということ。これらのカスクは、また後から改めて調査されます。同じ年のヴィンテージが、時期をずらして2度リリースされるのはそんな理由があるのです」

個人的なお気に入りのヴィンテージは何かと訊ねると、マクドナルド氏はこう答えた。

「そのときの気分、時間帯、一緒にいる人、状況などで変わるので、ひとつに絞るのは難しいですね。でも今なら『バルブレア1990年』でしょうか。香りが素晴らしく、バーボン樽とシェリー樽のバランスに優れた理想的なウイスキーの一例です。フィニッシュが見事で、本当に満足できるボトルですよ」

 

選び抜かれたシングルカスクのボトリング体験

比較的最近のニュースとしては、2011年に上品なビジターセンターができたことも挙げられるだろう。ここには「タイムカプセル」の部屋があり、訪問者は蒸溜所の歴史についてさらに学びを深め、ヴィンテージがつくられた各年の蒸溜所の様子を視聴体験できる。

マクドナルド氏によると、ビジターセンターの人気は今でもまだ上昇中なのだという。

「情熱いっぱいで、とても親切な素晴らしいスタッフに恵まれています。ビジターブックやトリップアドバイザーなどでお客様のコメントを読めば、評判の度合いがおわかりいただけますよ」

ビジターセンターでは、訪問者が自分のバルブレアをボトリングできる。現在はバーボン樽で熟成された1997年のシングルカスクがあり、古いものだと1969年のものも手に入るとジョン・マクドナルド氏は言う。

「999本のボトルがあって、かなり壮観です。これらのカスクの香りを初めて嗅いだときは、いずれもまさに決定的な瞬間でした」

バルブレアで生産されるスピリッツの約15%が、シングルモルトとしてボトリングされる。そしてシングルモルト用の貯蔵はすべてこの蒸溜所内でおこなわれる。ストックの内訳は98%がバーボン樽で、2%が以前に使用されていたシェリー樽。それ以外のメイクはラナークシャーのエイドリー近郊にあるインバーハウス本社施設内に運ばれ、ハンキーバニスターをはじめとする同社のさまざまなブレンデッドウイスキーの原料になる。

ジョン・マクドナルド氏に訊ねた。結局、バルブレアのウイスキーはどのような点において特別なのか。

「特長はたくさんありますね。自分たちの仕事に誇りを持っている、情熱的な専任のスタッフたち。蒸溜所の素晴らしい立地。そしてもちろん、途方もない品質のウイスキーです」

 

<バルブレア蒸溜所>
モルト:ノンピート(コンチェルト、プロピノ)
マッシュ:セミローターのマッシュタン(4.75t)、毎週21マッシュ
発酵:6槽のオレゴンパイン製ウォッシュバック、総容量21,500L、平均56時間
蒸溜:初溜釜1基(容量18,888L)、再溜釜1基(容量11,751L)
年間生産量:180万LPA(100%アルコール換算のリッター数)

 

 

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