開発担当ブレンダーに聞く
新時代の定番「ブラックニッカ ディープブレンド」の魅力
(前半/全2回)

October 20, 2015


ニッカウヰスキーのロングセラー「ブラックニッカ」のラインナップに、今年6月から新顔が加わっている。ブラックニッカ史上もっとも濃厚で深みのある味わいを完成させたのは、昨年ブレンダー室に配属されたばかりの最年少ブレンダーだ。ニッカ独特のアプローチで導き出された、新スタンダード誕生の物語。

文:WMJ
 

とにかく値段以上の味がするから、飲んでみたほうがいい。あるウイスキーファンの言葉に偽りはなかった。香りも味も驚くほどに深みがあり、心地良い余韻がしばらく続く。まさにウイスキーを知る大人のためのウイスキー。それが「ブラックニッカ ディープブレンド」の第一印象だ。

ブラックニッカといえば、もちろんニッカを代表するブレンデッドウイスキーのブランドである。現在「クリア」「リッチブレンド」「ディープブレンド」「スペシャル」の4種類が展開されているが、商品ごとに風味は大きく異なっている。戦略的にポジショニングされたバリエーションで、あらゆるタイプの消費者にブラックニッカブランドを訴求するのがニッカの狙いなのだ。ニッカが想定する5つの志向に当てはめると、「スッキリ志向」と「飲みやすさ志向」をカバーするのが「ブラックニッカ クリア」。「甘さ芳醇志向」に対応するのが「ブラックニッカ リッチブレンド」である。最後に残された「濃厚志向」と「スモーキー志向」を満足させることが、新商品「ブラックニッカ ディープブレンド」の至上命題だった。味わいを実感する限り、その目的は間違いなく達成されている。

このニッカの新定番ウイスキーを開発したのは、現在33歳の二瓶晋(にへい・すすむ)ブレンダーである。ウイスキーづくりの司令塔であるブレンダーに、ニッカはこれまでも才能ある若手を登用してきた。しかし配属後1年未満の新人ブレンダーに主要ブランドの新商品開発を一任する佐久間正チーフブレンダーの方針は、社内でも驚きをもって迎えられたという。

 

宮城峡蒸溜所から、弘前工場を経てブレンダー室へ

2007年にアサヒビールに入社した二瓶氏は、茨城県にあるビール工場で1年間の研修後、念願だったニッカウヰスキーに出向となる。最初の勤務地は、宮城峡蒸溜所だった。

「実家が仙台市の秋保なので、宮城峡蒸溜所は隣町のような感覚です。生まれ育った土地で産出される飲料に関わりたい、できれば宮城峡でウイスキーづくりをしてみたいという思いで入社したので、念願がかなった喜びはありました」

宮城峡での二瓶氏の仕事は、主にニューポット(貯蔵前の原酒)の品質を向上させること。仕込から蒸溜までの工程に改良ポイントを提案し、現場の設備で仮説を検証するPDCAサイクルだ。

「製造スケールが大きいほど、ちょっとした変化が思いがけない大影響を与えてしまいます。責任のある仕事を、若いうちに任されるのがニッカの社風。やりがいを感じました」

仙台では3年半を過ごし、その間に東日本大震災も経験した。その後、2011年10月からシードルの製造を行っている青森県・弘前工場で既存製品の品質維持や発酵の管理を担当。弘前赴任から2年が過ぎたある日、運命の辞令が二瓶氏のもとに届く。

「ブレンダー室への異動は、予想外で驚きました。仙台時代から憧れの仕事でしたが、自分には無理だろうと思っていたので。でも、やってみようと心を決めました」

官能評価はボキャブラリーの交換だ。豊かな自然の中で育った二瓶晋ブレンダーには、さまざまな香りの記憶がある。

新人ブレンダーとなった二瓶晋氏は、2014年2月からオールモルト、ハイニッカ、カフェモルト、カフェグレーンなど既存商品の維持管理を開始。日々の官能評価を通して、ニッカ流のブレンディングを学んできた。

「先輩ブレンダーのコメントを見て、その言葉がどの香りを指しているのかを理解し、ボキャブラリーを自分のものにしていきます。今も学んでいる最中ですが、大枠を捉えるまでに1年以上かかりました」

温泉地として有名な秋保でも、特に山深い集落で育ったという二瓶氏には、ユニークな嗅覚のストックがある。ある原酒の特徴をとらえて「アゲハチョウ」と表現したコメントに、佐久間正チーフブレンダーは驚いた。尋ねれば、アゲハチョウの幼虫の触覚から放たれる独特な匂いを表現したのだという。

「幼いころに記憶した匂いなので、強烈におぼえているのです(笑)。佐久間さんは、たしかエステル香やキンカンなどと表現していました。ブレンダーによって香りを表現するコメントが異なることもありますが、日々のコミュニケーションを通じて、先輩方の言葉が示す風味の定義の範囲も厳密に見極めています」

宮城峡での経験から、蒸溜時に生まれる風味のメカニズムはある程度わかる。だが貯蔵の間に起こる変化については、学ぶことが山ほどあると二瓶氏は言う。

「今は漠然としかわからないものでも、長く経験するうちに因果関係が見えてくるかもしれません。まだまだ勉強は続きます」

(つづく)

 
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