クラフト・ブレンディング【後半/全2回】

December 15, 2014

 蒸溜所から原酒を購入し、自社でブレンドを行う「クラフト・ブレンダー」たち。かつてスコットランドで盛んに行われていたこのブレンディング専門業者が、今バーボンの世界でも活躍している。

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普遍的な商品をつくるのではなく、個性を重視した商品をつくるのがクラフト・ブレンダーの存在意義であるという意見には、イングランドにある「マスター・オブ・モルト」ベン・エレフセンも同意する。
彼の「ザ・ロストディスティラリーズ・ブレンド」は2014年ワールド・ウイスキー・アワードワールドベスト・ブレンデッドウイスキーに輝いた。

ベンはこう語る。
「私たちは幸運にも、手に入る原酒に応じてブレンドをつくることができています。これは本当に嬉しいことですよ。特定の原酒を使わなければならない、定番のアイテムのために必要な原酒が手に入らないなどの問題なしに、『今手に入るもので最高のブレンドをつくる』という創造的な自由がありますから。
私たちの仕事は、常に一定の製品をつくっている大手ブランドのブレンダーと同じではありません。手に入るストックから、最高のものを創り出すことを目指しているだけです」

そして、クラフト・ブレンダーが勢いをに参入しつつあるように思えるのはスコッチの世界に限らない。
1997年に「ジェファーソンズ・バーボン」を設立したトレイ・ツェラーは「はじめ私は蒸溜所を設立しようと考えていました。でも、ケンタッキーの人々が持っている設備を見て気が変わったんです。非常に巨大で、歴史に基づいた“科学”がありました。そこで、『じゃあ私は熟成とブレンディングに的を絞ろう』と思いました」と話す。

トレイによると、ブレンディングは彼の製品を一定に保つために重要な要素だが、生産する各バッチの中には必ずそれぞれの特徴があるようだ。
「私はマッシュビルの異なる様々なバーボンを買い、それを4種類のスタイルに分けています。ある製品は4つすべてのスタイルのバーボンをブレンドしていますが、50〜55%くらいはひとつのスタイルのバーボンから、残りは他の3つのスタイルの原酒でつくります」と彼は言う。

「ひとつのバッチをまとめるたびに、基準となるサンプルと照らし合わせます。同じサンプルをもう3年以上使っていますが、もう少しこのままで行くかもしれませんし、変えるかもしれません。異なるバッチでも、ある程度の一定性を保つためです」

トレイは「ブレンディング」という考えを一歩進めて、熟成部分をもっとコントロールしたいと思っている。そのためスピリッツの生産は外注で十分だが、樽についてもっと詳しく知りたいと言う。「バーボンはフレーバーの85%程度が樽由来ですから、熟成にも気を遣っています」

さらに、「目下、『コラボレーション』というシリーズで、有名なシェフたちとコラボして料理に合うものをつくったりしています。他にも『オーシャン』シリーズ…海中で熟成しているものなど、14種類の様々な実験が進行中です。これからもっと多くの実験的なシリーズもリリースする予定です」とトレイは生き生きと話してくれた。

ブレンド専業として技術を追求している人々は、個性的なスモールバッチに重点を置いているようだ。
この先何か珍しい、面白いものやちょっと変わったものを探そうと思ったときには、1800年代の先駆者たちの技術を受け継ぐ現代の「クラフトブレンダー」のことをお忘れなく。

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