ウイスキークッキング・8 【アイリッシュ風サーモン】

January 19, 2015

 釣りの醍醐味は、穏やかな時間を過ごすことや魚との駆け引き、そして獲物を手にした時とそれを味わう喜び…趣味と実益を兼ねる最高のレジャーだ。もちろんそこに料理をする楽しみもあればなおのこと。前回に続きサーモンの料理法をご紹介しよう。今回はアイリッシュウイスキーとともに。

ウイスキークッキング・7 【ティースモーク・サーモン】

私たちはグリーン夫妻、ジェニージャスティンが所有するおとぎ話のようなコテージ、バリーヴォレイン・ハウスに泊まっている。釣りを終えた後はそこに戻り(想像の中では、山ほどの魚とともに)、客間で他の客たちと和やかにその日の出来事を話しながらウイスキーを飲むだろう。

バリーヴォレインは夢のようなところだ。敷地内の木々はきらめく照明の下でダンスしているようだし、空き地では毎朝ハチの羽音が聞こえ、ティーライトシャンデリアまで備えた高さ4メートルのグランピング(WMJ註:豪華なキャンプのこと)用テントもある。
こんな場所でなら実に幸せに日々を過ごせることだろう − エドワード朝の大食堂で家庭的に大皿に盛って出されるジェニーの素晴らしい季節料理を堪能し、暖炉の側ではジャスティンが叩くバウロンドラム(WMJ註:アイルランドの民族楽器で、片面に皮を張った太鼓)に合わせて他の客たちと一緒に歌う。そしてビンテージカットのクリスタルタンブラーに入れた、自家製のシロップと近くミドルトン蒸溜所のウイスキーを加えたカクテルとともに楽しく時を過ごして。

ジェニーとジャスティンがこれほど細かく気配りする以上に情熱を傾けているのは釣りだけだ。
ジャスティンによれば、母親が趣味の釣りに夢中だったので、子供時代の家族の休暇は常に釣りが中心だったそうだ。
「朝の3時に両親に起こされたのを覚えていますよ。サーモンがのぼってくるときだからって、川が満潮のときにスピニングロッドを渡されてね。水面が下がって、フライフィッシングができるくらい澄んできたら、一日中釣りを続けるんです。そして時折、サーモンを釣り上げるという恍惚の瞬間を体験します。捕まえたものは全て食べましたよ」

バリーヴォレイン・ハウスはブラックウォーター川と特別な関係を築いている。
この川はアイルランドの南に位置する諸州を抜けて流れ、ヨールで40㎞離れた海に注ぐ。ジャスティンの家族は4世代にわたりこの川で釣りをし、コテージでは30年近く釣りのグループを迎えてきた。サーモン釣りとブラックウォーター川は、この大きなアイリッシュハウスの生命線だ。釣りの国家ライセンス発行と、ロッドや防水ズボンのレンタルに使われている離れの辺りをジャスティンが案内してくれた。フライ用の羽毛が目を引く、古風で趣のある建物だ。
彼のこの川に対する情熱、そして自分の土地に抱く誇りには頭が下がる。さらに、親切にもワイルドサーモンの身を最も美味しく食べる秘訣まで教えてくれた。ブラックウォーター川のサーモンは養殖モノより風味が強く身が締まって、パサパサしていない。
私はアイリッシュウイスキーに漬けることや古い樽の鏡板をスモークに使うことなど、サーモンのレシピに関するアイディアを細々としゃべりまくる。彼は、地元のウイスキーは魚の王者にぴったりだと同意し、レシピはシンプルにと言う。適切なアドバイスだ。
ここで、ジャスティンに教えてもらったシンプルかつ素晴らしいサーモンの料理法をご紹介しよう。ウイスキーとともに愉しめること請け合いだ。

 【アイリッシュ風サーモン】

レシピ:
ワイルドサーモンのフィレ 500g
アイリッシュウイスキー 50ml(ジェムソンなど)
キャノーラ油 50ml
シーソルト 一つまみ
ジャガイモ 2個
季節の野菜を好みで(蒸した野菜など)

手順:
1.サーモンを冷蔵庫から出し、常温にしておく(30分程度)。
2.ジャガイモを一口大に切り、10分ほど下ゆでしてざるにあげる。
3.オーブンを100℃にする。
4.2のジャガイモをトレイに並べ、サーモンをその上に乗せる。サーモンの身がトレイに触れないよう注意する。
5.ウイスキーと油、塩をよく混ぜ、サーモンの上に流しかける。
6.オーブンに入れて25~30分ほど焼く。時々トレイに流れ出たウイスキーとオイルのミックスをサーモンの上にかける。
7.オーブンからトレイを出し、サーモンを皿に乗せる。
8.季節の野菜やマッシュポテト(サーモンと一緒に調理したジャガイモに牛乳、シャロット、塩コショウを加える)を添えて。

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