スコッチウイスキーとエコロジー 【その3/全3回】

October 17, 2013

スコットランドのウイスキー業界が取り組む環境対策―ピート湿原は重要な保護対象である。長い年月をかけて形成されるピートを守る方法とは、どのようなものだろうか?

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3.ピート <Peat>

水と大麦とは異なり、モルティング工程で芳香と風味をもたらすだけの役割のピートはウイスキーづくりでは「オプション」であり、かなりの量のモルトはピートを全く使わずにつくられている
基本的に、ピートは植物性の物質だ。炭素の豊富な植物の残骸が、酸性の湛水条件下で蓄積されて泥炭地が形成される。
生成されるピートの種類は元になる植物(主としてミズゴケだが)によって 異なり、また高地にあるか低地にあるかでも異なる。
ティモシー・C・S・ドランが「ウイスキー・テクノロジー― 製造とマーケティング」(2003年出版)で述べているように、「ピートは熱源としてではなく風味の源として、大麦の焙燥(キルニング)中に使用される。ピートを採取した場所、およびその使用法が、生産されるスピリッツの風味に大きく影響する」
「焙燥中、ピートは炎を出さずに焚かれ、ピートリークと呼ばれる煙を作り出す。麦芽がその煙を十分に吸収するように、ピートは焙燥の早い段階で焚かれる」

ピートが再びつくられるまでに何百万年もかかるため、事実上、限りある資源であり、ウイスキーづくりでの使用に関しては敏感にならざるを得ない。しかし、ほとんどの蒸溜業者は環境への配慮を堂々と表すことを好み、モルティングのためにピートを採取する業者は、使用量をできる限り最小限に抑えて、責任を持ってピートを使用するように努めている。

アイラ島のボウモア蒸溜所では、ピートを浸漬、焼いて「カフ(固形ではなく粉砕された状態)」にする処理が数年前に開発された。この処理を施すと少ない炎でより多くの煙が生み出され、麦芽に焚き込まれるピートの風味が増加する一方、必要なピートの量を以前より最大で75%削減できる。

オークニー島のハイランドパーク蒸溜所もフロアモルティングを行っており、ホビスター・ムーアでピートを採掘している。蒸溜所マネージャーのグラハム・マンソン
「私たちはオークニー諸島評議会、スコットランド自然遺産RSPB(王立鳥類保護協会)と連携して操業しています。湿原の野生動植物に及ぼす影響という点で、可能な限り環境に配慮した方法でピートを採掘しています」と述べている。
「1年間に必要な250〜300トンを採掘するピート切り出し期間の終わり頃には、ピート採掘にために剥がしたヒースのマルチング層を戻します。その地域の植生を戻すために、他の湿原からのヒース・マルチングも加えます」

スコッチウイスキー産業は英連邦で毎年使用される全ピートの約0.5%しか占めていないことも知っておくべきだろう。
国際自然保護連合(IUCN)英連邦国家委員会泥炭地プログラムのコミュニケーション・コーディネーター、リア・クリスは言う。
「全体的に見ると、ウイスキー産業がピートに及ぼしている影響は本当に僅かです。園芸の場合はピートに替わるものがありますから、園芸用土にピートを使う必要はありませんが、ウイスキー産業ではピートの替わりに使えるものはありません」
「保護の目的では、私たちは2020年までに百万ヘクタールの泥炭地の回復を目指していますが、政府の資金だけではこれを達成できませんから、協力者としてウイスキー産業のような民間部門や事業に関与してもらうことが不可欠です。ウイスキー産業を含めて、一部のビジネスは以前にダメージを与えた泥炭地を既に修復しつつありますが、これらの泥炭地はウイスキーに使用したからではなく、農業で損なわれたのです。私たちはこの復興を援助してもらうために、様々なビジネスとの提携を目指しています」

原材料を責任を持って使用することと環境を守るという点で、スコッチウイスキー産業は誇るべきところが多い。SWAの操業・技術部長、ジュリー・ヘスケス‐レアードは、ウイスキー産業は常に十分に環境に配慮してきたと述べ、
「私たちの環境に関する目標が年々高くなっていることは、ウイスキー産業が献身的に努力し、結果が伴っている証しです。もしうまくいっていないければ、こんなに高く目標を設置することはできませんよ」と付け加えた。
自然の影響が大きいこの業界では、いつまでも変わらぬウイスキーづくりを伝えていくために、今守るべきものをしっかりと守る体制ができている。私たちは蒸溜業者たちの陰の努力を忘れてはならない。

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