フランスで注目を集めるジャパニーズウイスキー「富士山麓」

November 9, 2017


「キリンウイスキー 富士山麓」が、グルメの国フランスでウイスキーファンの心をつかんでいる。情報の発信源は、高級酒のディストリビューター「デュガ社」と老舗チェーン店「ニコラ」。2種類のボトルを手に、田中城太マスターブレンダーがパリに降り立った。

文:WMJ
写真:吉田タイスケ

 

フランスが押しも押されぬウイスキー大国であることは、意外なほど日本では知られていない。一人当たりのウイスキーの消費量は欧州本土随一で、パリのウイスキーライヴも欧州最大級の賑わいを見せる。オードヴィーの母国で、ウイスキーはスピリッツの一部門を超えた大人気カテゴリーとして成長を続けている。

自分自身の官能を信じて、詳細に品質を評価する。香味に厳しい目を向けるフランスにおいても「富士山麓」の魅力が広がりつつある。

香味に厳しい目を向けるフランスにおいて、多彩な高級酒の輸出入を手がけているメゾンがデュガ社だ。約20年前より、生産地の個性を重視したオーセンティックなセレクションを身上としている。デュガ社が10月2日にパリのアールフォラン美術館ベルシー館で主催した展示会「サロン・クリュブ・エクスペール」には、アイコンズ・オブ・ウイスキー2017で「マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、“世界最優秀”のブレンダーに輝いた田中城太氏の姿もあった。

客層は量販店や料飲店のオーナーとバーテンダーが大半というプロ向けのイベントである。キリンウイスキーのブースに並んでいるのは、「キリンウイスキー 富士山麓 樽熟原酒50°」と「キリンウイスキー 富士山麓 Signature Blend(シグニチャーブレンド)」。田中氏は熱心な来客の一人ひとりと向き合い、富士御殿場蒸溜所のウイスキーづくりについて説明している。

ウイスキーをテイスティングしながら、熱心にメモをとるパリのプロフェッショナルたち。彼らの口からは、「Well-balanced(バランスがいい)」、「Finesse(繊細)」などといった寸評が聞こえてくる。「フィネス」とは、細やかさと上質な気品を含意するフランス語。日本と同様にシングルモルトのファンが多いフランスだが、突出したインパクトよりも複雑な深みを好む人は多い。これは食へのアプローチにも共通したお国柄といっていいだろう。

 

卓越したバランスと風味の爆発を評価

 

このサロンを主催したデュガ社のフランソワ=グザビエ・デュガ社長が、キリンウイスキーに関心を持ったのは3年ほど前のこと。富士御殿場蒸溜所に足を運んでクオリティの高さとこだわりを持った製造方法に感銘を受け、昨年より取り扱いを始めた。今回、田中氏が持参した「シグニチャーブレンド」の味わいも高く評価した。

「キリンウイスキーの強みは、オリジナリティを持ちながらも多くの人に受け入れられる風味。「樽熟原酒50°」は幅広い消費者に好まれ、「シグニチャーブレンド」は原酒ごとの特長がいっそう際立っています。今回はふたつのウイスキーを比較する発見の旅を楽しみました」

自らの言葉で、顧客に直接お酒の魅力を紹介するのが老舗チェーン「ニコラ」の販売スタイル。ブランドへの信頼は着実に築かれていく。

デュガ社が初めてキリンのウイスキーをフランスに輸入したのは2016年秋のこと。その大半をわずか数週間で売りさばいてしまったのが、1822年創業の老舗チェーン店「ニコラ」である。

田中氏が昨年デュガ社でおこなった事前のプレゼンテーションには、このニコラの役員とマーケティングディレクターも参加している。デュガ氏によると、多忙な彼らがわざわざこのような内々のイベントに出向いてくることは滅多にない。キリンウイスキーに対するニコラの関心は、当初より高かったのである。

ニコラはフランス全土に支店を展開し、パリ市内でもあちこちに小さい店舗を運営している。マドレーヌ広場の旗艦店で店長を務めるのはエマニュエル・アリエス氏。「シグニチャーブレンド」を口に含むなり、「エクスプロージョン・オブ・フレーバー(風味の爆発)」とつぶやいた。富士山麓のブレンドには、原酒それぞれの香味要素がしっかりと内在されている。その香味が口の中で一度に弾ける様子を表現したのだ。つくり手の意図を見抜いたコメントに田中氏は驚いた。

別のニコラの店舗を田中氏が訪問した際にも、ウイスキー談義をしながら店長がワインを買いに来た客に「樽熟原酒50°」の試飲を薦める場面を目にした。「美味しいね、今度買うよ」と店を後にした顧客が、しばらくして「やっぱり今日買おう」と戻ってくる。こんな具合に、広告やキャンペーンだけに頼るのではなく、店主みずから対面で商品の魅力を丁寧に伝えるのがニコラの販売スタイルだ。顧客も、品質に納得しなければ歯牙にもかけない。このようなチェーンが国内で500店舗以上も展開している事実に、フランス市場の圧倒的な成熟を感じる。

ニコラから消費者へと広がる「富士山麓」への支持は、一過性のもので終わることがない。店主や顧客の振る舞いを見て、田中氏はそう確信した。大きなブームを起こさなくとも、品質への評価は着実に浸透していく。それがフランス市場で受け入れられる流儀なのだ。

 

カクテルやフードペアリングの広がり

 

今回のパリ滞在中に、田中氏はデュガ社のセールス担当者を対象にしたマスタークラスも開催した。勉強熱心な参加者は、顧客に直接ウイスキーの魅力を伝える代理人となる。特に田中氏を勇気づけたのは、デュガ社において「富士山麓」のブランドアンバサダーを務めるドナルド・マッケンジー氏。つくり手である田中氏から直接聞いたウイスキーの魅力を、自分事として雄弁に伝えられる知識と意欲に満ちあふれている。

現在すでに「富士山麓」を扱っているパリの店舗は、どこもユニークな特色にあふれている。ウイスキーやカクテルにも力を入れるイタリア料理店「ポポラーレ」では、バーテンダーが「富士山麓」をベースにした2種類のカクテルを披露した。「樽熟原酒50°」の果実風味に、パイナップルジュースを合わせたアルゴンキン。そして「シグニチャーブレンド」のリッチな熟成香を引き立てたマンハッタン。複雑なウイスキーの香味要素が、クリエイティブに解釈されている。この店の試飲会では富士山麓を構成する5つの原酒タイプ(モルト2種、グレーン3種)をテイスティングしたバーテンダーが、「これを他の原酒とブレンドするなんて実にもったいない」と嘆く一幕もあった。だが後からブレンド後の商品を味わった彼は前言を撤回する。それぞれの原酒の特性が、ブレンドの中でいっそう深みを増していることに気づいたのだ。

ヨーロッパに先駆けて「富士山麓」の真価を見い出したデュガ社。一人ひとりの知見と情熱が、フランスでの人気を広げる力になる。

エッフェル塔に程近いアッパークラスのホテル「プルマン」でも、系列ホテルのバーテンダーたちを集めて小規模のテイスティングセミナーを開催した。また選りすぐりのプレミアムウイスキーを常備する専門店「ザ・ウイスキーショップ」は、チキン、刺身、チョコレートなどのフードと「富士山麓」を合わせるペアリングも提案。かねてより田中氏はポトフやフルムダンベール(青かびチーズ)とのマッチングも提唱してきた。フランス人がマリアージュにうるさいのはご存じの通り。そしてウイスキー消費の半分以上が「家飲み」であるのもフランス市場の特徴である。

自分たちのウイスキーに対する評価を、パリの街で初めてダイレクトに感じた田中城太氏。その手応えは、予想を上回るものだったようだ。

「食やドリンクに対する感度が高いフランスで、自分たちのウイスキーづくりがしっかりと理解されている。大きな励ましをいただき、もっと良いウイスキーをつくろうという意欲が湧いてきました」

ジャパニーズウイスキーへの関心が高まっているフランスだが、まだスコッチやバーボンに比べると国内での流通量は限られている。2016年秋にフランスへ輸入を開始した「富士山麓」は数多くの取引先に届けられ、そのほとんどが短期間で売れてしまった。これは驚くべき成功だとフランソワ=グザビエ・デュガ氏が語っている。

フランスにおけるキリンウイスキーの歩みは、まだ始まったばかりである。

キリンウイスキーの理念、こだわりの生産プロセス、蒸溜所見学などの情報発信をおこなっている富士山麓のオフィシャルサイトこちらから。

「富士山麓 シグニチャーブレンド」はキリンオンラインショップDRINX・富士御殿場蒸溜所売店で購入可能です。

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