フードペアリングの簡単な法則【後半/全2回】

March 7, 2016

原則を理解すれば、意外にシンプルなウイスキーとフードのペアリング。前回のチーズに引き続き、シーフードとチョコレートにスポットを当てよう。その相乗効果で、ウイスキーの魅力を再発見できること請け合いだ。

文:セアニーン・サリバン

 

シーフードとウイスキーをペアリング


食事と一緒にウイスキーを楽しむお気に入りの方法が、寿司とウイスキーの組み合わせだ。日本の皆様ならご存じであろうが、ウイスキーはソーダで割って味わうのがよい。醤油、海苔、生姜もウイスキーによくあう。さまざまな魚介料理がペアリングの楽しさを教えてくれる。

 

1. サーモンとシングルモルト

サーモンとスコッチの組み合わせは、ありふれた陳腐なものになった感もある。だが陳腐なものには、たいてい真実がある。サーモンをスモークしたり、柑橘類を絞ったセビーチェ風にしたり、ハーブやスパイスで味付けしたり、この組み合わせに変化を加えることでペアリングの幅も広がるのだ。サーモンの脂身は、ウイスキーと争わずに風味を補完してくれる役割を果たす。「アラン10年」とスモークサーモンは素晴らしい組み合わせだ。ウイスキーの甘味と穀物の風味が、魚の味を引き立てる。

 

2. オイスターと海系のウイスキー

殻を開けたてのオイスターは、海の記憶をその殻の内部にたっぷりと湛えている。リッチなミネラルと磯の風味が、海沿いの蒸留所で熟成されたウイスキーと抜群の相性を示す。「オールドプルトニー」や「ラフロイグ」を数滴オイスターに振りかけると、オイスターの風味にコントラストをなす見事なピート香や甘味が立ち上がり、まさに海の香りが響きあった一皿に。

 

チョコレートとウイスキーをペアリング


ビロードのパネルで飾られた、ロンドンのコンノートホテルのカクテルバー。ここでは100種類以上のウイスキーコレクションに合わせ、ぴったりのチョコレートが供される。食べ過ぎると興奮状態になる恐れもあるトンカビーンのウッディなスパイスや、アールグレイの香りとしてお馴染みの柑橘ベルガモットなど、さまざまな風味がチョコレートを飾り立てる。市販の高級チョコレートにも、ウイスキーとの相性に優れたものはたくさんある。チョコレートはウイスキーと同じ発酵食品。カカオ豆の発酵期間に得られる特徴的な香りが、さまざまなペアリングに適した風味を作るのだ。この風味には生産地ならではの特徴があり、カカオ豆の生育環境の影響を大きく受ける。

 

1. エクアドル産チョコレートとラム樽熟成のウイスキー

エクアドル産のカカオはトロピカルフルーツの隣の畑で栽培されるため、特有のフルーティーな風味がある。「バルヴェニー14年カリビアンカスク」と、エクアドル産の「パカリ70%」を合わせてみよう。チョコレートの豊かな味わいがウイスキーの大胆な芳醇さを輝かせ、モルト香をロースト香のアロマで補ってくれる。チョコレートが持つ花のような風味がウイスキーの甘味で強調され、カシスやスパイスのような風味を引き出す。

 

2. マダガスカル産チョコレートとワイン樽熟成のウイスキー

マダガスカル産のカカオにはかなり酸味があるので、果実と一緒にボンボンの材料として使用されることが多い。赤ワイン樽だけで熟成され、ベリー類の酸味を感じさせるアイルランドのシングルグレーンウイスキー「ティーリング」は、カカオバリーの「マディロフォロ65%」によくあう。ウイスキーとチョコレートの双方が温かなスパイスや樹木のタンニンを引き立て、互いの風味を強調しあう。

 

3. 海塩キャラメルとシェリー樽&ピート香のウイスキー

ココアをまぶしたブラックチョコレートは、ウイスキーのシェリー風味ととても相性がいい。「ボウモア15年ダーケスト」と、アルティザン・デュ・ショコラの「No.1 ソルトキャラメル」などはその好例だ。ボンボンが割れると甘く塩気のあるキャラメルが出てきて、ウイスキーが持つ柔らかな塩気と響きあいながら、炭っぽいオレンジやピートの風味を解き放つ。

 

大切なのは、ウイスキーと食べ物のペアリングを楽しむこと。楽しくなければ意味がない。日本の食材でもどんどん恐れずに実験をして楽しんでみよう。

 

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