フォアローゼズ蒸溜所マスターディスティラー ジム・ラトリッジ氏インタビュー 【前半/全2回】

August 5, 2013

7月21日に開催された「バーボン&アメリカンウイスキーフェスティバル」にあわせて来日されたフォアローゼズ蒸溜所マスターディスティラー ジム・ラトリッジ氏へインタビューの機会をいただき、お話を伺った(通訳・説明:キリンビール株式会社チーフブレンダー 田中 城太氏)。

――本日はお忙しい中お時間いただきましてありがとうございます。
まず、今回のイベントに参加されてのご感想をお聞かせ下さい。

ジム・ラトリッジ氏 (以下ジム氏) 今回は日本で初めてのバーボンフェスティバルということで、過去22回行われているアメリカの「ケンタッキー・バーボン・フェスティバル」の開催当初の頃を思い出しました。今でこそ6日間に渡って5万人が訪れるイベントになりましたが、1992年に行われた第1回に比べますと、こちらのほうが大盛況でしたし、来た甲斐がありましたよ!
セミナーでも、ブースでも皆さんの熱心さが伝わってきましたし、想像以上にバーボン、フォアローゼズについて関心をお持ちいただいていることに感激しました。

――セミナーに参加させていただきまして、5種類の酵母と2つのマッシュビル(原料のレシピ)から10種類の原酒をつくり分けるというフォアローゼズのつくりを詳しく知ることができました。マッシュビルはコーンの比率が多い「タイプA」とライ麦が多めの「タイプB」があるとのことでしたね。そして原料の品質にも非常にこだわっていると感じました。

ジム氏 まず「いい原料がなければいいバーボンはつくれない」これが私の最大の信念です。ライ麦は今年はドイツ、去年はデンマークと、産地にはこだわらず最高品質のものを使用するという点を重視しています。トウモロコシは53年間変わらず、厳しい生産管理をする米国の農家と契約し非遺伝子組み換え品を仕入れています。

――また、大変興味深かったのが5種の酵母それぞれが華やかさやリッチなフルーティさなどの個性を生み出すというお話です。この5種類の酵母は、オリジナルのものなのでしょうか?

ジム氏 フォアローゼズは1943年からシーグラムグループに加わったのですが、シーグラムでは当時から酵母について盛んに研究を行っていました。酵母は自然変異を起こしやすいので、その変異を起こさないように注意していくと同時に、変異したもののなかからもより優れたものを選び、フリーズドライ(凍結乾燥)にしてストックしていくという方法を取っていたのです。そして最終的に300種を超える菌株の中からフォアローゼズの求める性質を得られる酵母を厳選しました。ですから、現在使っている5種の酵母は完全なオリジナルということになります。

――酵母によって発酵の過程は異なりますか?温度や時間など、調整されていると思いますが。

ジム氏 5つのうち2つの酵母は発酵がゆっくりです。通常80時間かかるところが83時間くらいかかります。同じ酵母でもマッシュビルのライ麦の比率によって発酵の進み方に違いは出てきますが、ほかの3種はだいたい同じです。どの酵母も元気な発酵をしてくれますよ。

――熟成庫が平屋(Single Story)であるというのも独特かと思います。温度差が生じにくいとのことですが、樽のローテーションはされないのでしょうか。

ジム氏 多くの蒸溜所では樽を高く積み上げ、ローテーションを行うことで熟成庫内の温度差による熟成の進み方の調整を行うとしていますが、それには莫大なコストがかかります。私たちは熟成庫を平屋にすることで、上の方で寝かせている樽と床に近い位置で寝かせている樽の環境差をなくしています。高く積んだ場合、上部と下部の温度差は20℃くらいありますが、私たちの6段組のラックでは5℃程度です。ですから、位置を変える必要がありません。そのためローテーションにかける費用も時間も節約することができます。もちろん長期の場合には多少の熟成感の違いは生じますが。品質を均一に保つために、平屋造りの熟成庫にこだわっています。

後半に続く

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