歴史の息吹―グレンギリー蒸溜所【後半/全2回】

January 2, 2015

1700年代後半からの長い困難な時代を経て、ついに個性を開花させたグレンギリー。連載後半では、現在の生産工程とシングルモルトとしての存在を示すアイテムをご紹介する。

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しかし時代は変わり、J. G. トムソンは第一次大戦後に店をたたんだ。そして1935年には、今では主に「ブース・ロンドンドライジン」を生産するブース・ディスティラーズ社が管理していたが、わずか2年後に同社はディスティラーズ社(DCL)に吸収された。
その後を1968年まで早送りすると、グレンギリーは慢性的な水不足や生産能力等の問題で一旦閉鎖され、DCLはスタンレー・P・モリソン社(後のモリソン・ボウモア社)に売却し、同社が生産を再開した。

やがて水不足の問題も解決し、1972年と1973年にはスコットランド初のガス火力スチも新たに加わって生産は拡大した。
蒸溜所のラベルを付けたシングルモルトが1973年に発売開始されたが、モリソン社はこの頃まだ主として大量供給に重点を置いていた。1994年にサントリーがモリソン・ボウモア社を買収し、現在に至る。

そして今、この蒸溜所は不思議な対比を見せている。
一方には古いモルティング室のどっしりとした巨体やもう空になって使われていない歴史的な建物があり、一方には軽快で近代的なビジターセンターがある。
蒸溜所を一巡りすると、新旧の混合がはっきり分かる。そして、ビジターが来やすいようにと考えて設計されなかったことも。熱心なファンには一層魅力的だろうが。

歴史的に少なくとも1880年代にさかのぼる生産スタイルは、ヘビリーピーテッドスピリットのためのものだったが、1967/68年にDCLによって次第にその色は薄められ、最終的にモリソン・ボウモア社が1997年11月からアンピーテッドのスタイルに切り替えた。しかし、見事なヴィンテージラインの一部で、まだピーテッドウイスキーを楽しむことができる。

現在は「中核製品」として2つのアイテムが提供され、いずれもノンチルフィルタード、48% でボトリングされている。ノンエイジの「グレンギリー ファウンダーズ・リザーヴ」(WMJ註:日本未発売)と、WWA2012において「ベスト・ハイランドモルト 12年以下」受賞にしては40ポンドを下回る(一般的な英国の販売価格で)お買い得な「グレンギリー 12 年ダブルウッド」だ。
ハウススタイルは微かなスパイスを伴う独特なヘザーハニーの香りを示す。ヴィンテージラインには多数のラインナップもある(WMJ註:日本未発売)。
また、ボトラーズからもシングルカスクが時々入手できる。

モリソン・ボウモア社はシングルモルトとブランドの拡大に重点を置きつつあるため、この魅力的な蒸溜所も新たな躍動の時代に入り、未来は明るいと思われる。広く知られるようになれば、その評判は確実に高まるはずで、スコットランドの隠れた宝石のひとつとして相応しい名声を得るだろう。
創業以来すでに300年を経たグレンギリーは、その長い伝統と、爽やかでフレンドリーなスタイルがひとつになって、ウイスキーファンを楽しませてくれている。

ところで、そのスペルからは想像もできないだろうが、発音は「グレンギリー」だ。お忘れなく!

蒸溜所インフォメーション

  • モルト…アンピーテッド(オプティック種)
  • マッシング…ステンレス製マッシュタン
  • 発酵…ステンレス製ウォッシュバック8基(22,500L) 発酵時間48~60時間
  • 蒸溜…ウォッシュスチル 25,000L
  •      スピリットスチル 11000L

 

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