グレンフィディックの長い旅【前半/全2回】

February 17, 2016

世界に先駆けてシングルモルトを商品化し、スコッチウイスキーのシンボルとして愛されてきたグレンフィディック。新発売のフレーバーにも、伝統への敬意と革新への意欲が宿っている。初来日した6代目モルトマスター、ブライアン・キンズマン氏の独占インタビュー。

文:WMJ

 

「グレンフィディック」は世界180カ国以上で愛飲され、世界中で数々の栄誉あるアワードを受賞しているシングルモルトウイスキーだ。グリーンの三角ボトルでおなじみの「グレンフィディック 12年 スペシャルリザーブ」を始め、ユニークな熟成手法を取り入れたラインナップがモルト愛好家を魅了している。1月26日に発売された「グレンフィディック 21年 グランレゼルヴァ」は、ロンドンで開催された世界的な酒類コンペティション「第20回インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ 2015」のスコッチウイスキー部門で最高賞を受賞。同じく「グレンフィディック 18年 スモールバッチリザーブ」は金賞を受賞しており、その品質はエキスパートのお墨付きだ。

グレンフィディックの6代目モルトマスターを務めるブライアン・キンズマン氏は、1997年に化学者としてウイリアムグラント&サンズに入社して以来、統計や分析を駆使しながらこの繊細なウイスキーの風味と向き合ってきた。2009年には先代のデイビッド・スチュアート氏より重責を引き継ぎ、伝統を守りながら新しいファン層の期待にも応えている。

意外なことに今回が初来日であるというキンズマン氏は、大阪と東京でプロフェッショナルとメディアを対象にしたブランドセミナーを開催し、熟成年数の異なるバリエーションを試飲するヴァーティカル・テイスティングを実施した。グレンフィディックはそれぞれの商品にユニークな工夫を施しているため、12年、15年、18年、21年といった数字だけでは計れない複雑さがある。それでいて核となる特徴がまったくブレないのも印象的だ。

「グレンフィディック 18年 スモールバッチリザーブ」は、グレンフィディックらしい洋なしのような香りをぐっと凝縮させ、シェリー比率が20%とやや高めであることから複雑な深みがある。また「グレンフィディック 21年 グランレゼルヴァ」は、バニラやトフィーを思わせるクリーミーな感触と、軽やかな甘味が特徴。アメリカンオークの原酒を多く選び、ラム樽でフィニッシュした芳醇な仕上がりだ。このような複雑なカスク構成を自社でまかなえるのがグレンフィディックの底力である。

 

家族経営ならではの長期的展望

1887年、ハイランドのスペイサイド地域にあるダフタウンの町で、創業者のウィリアム・グラントは1人の石工職人と共に蒸溜所の建設に着手した。グレンフィディックとは、鹿(フィディック)の谷(グレン)を意味するゲール語。翌年に蒸溜所が完成し、1887年のクリスマスに最初のスピリッツが流れ出す。7人の息子、2人の娘が力を合わせた家族経営の伝統は今でも潰えていない。

スコットランドの東北部は比較的気候が安定していて、雨量も少なく、大きな気温の変化がない。キンズマン氏が、蒸留所の立地について教えてくれる。

「夏の暑さも、冬の寒さもほどほどで、大量の液体が置かれた貯蔵庫内の温度はほとんど同じ。夏にはひんやりと涼しく、寒い冬の日には温かいのが貯蔵庫の環境です」

ウイスキーづくりに欠かせない水は、ロビーデューの泉から汲んでいる。ウィリアム・グラントは、ここであらかじめ1,200エーカー(500万平米弱)もの水源地を買い上げたところに先見の明があった。

「どんな蒸溜所でも、水源の確保が必須の問題になります。ウィリアムは今必要な一部の土地だけを買うのではなく、デューの湧き水が確保できるような周辺全域の土地を取得しました。おかげでヒルサイドの利用可能な水源はすべてが敷地内に収まっています。蒸溜所が拡大を繰り返してきた今でも、水源をしっかりと確保できているのはこの最初の判断があればこそなのです」

そんなウィリアム・グラントから経営を受け継いだ2代目は、娘婿のチャールズ・ゴードンだった。現在は5代目のグレン・ゴードンがチェアマンである。世界屈指の出荷量を誇る蒸溜所なのに、家族経営を続ける利点をキンズマン氏は明確に説明してくれる。

「ウイスキーづくりは、長い時間を必要とするビジネス。家族経営なら、目先の利害にとらわれず、長期的視点に立った経営ができます。50年先まで見越した計画ができるのは、家族経営の最大の利点なのです」

世界的なウイスキーブームでモルトウイスキーの在庫不足が懸念されるなか、12年、15年、18年という熟成年別のブランドを維持しているのも、このような長期的視点の産物である。

「一時期、スコットランドのウイスキー業界全体が、需要の冷え込みにあわせて蒸溜量を減らしたことがありました。でもグレンフィディックだけは『ストックがたくさんあるのはいいことだ』と楽観視し、逆に蒸溜量を増やしたのです。今後も年数表示をやめることはありません」

はるか未来を見通し、時の価値を知り尽くしていた男。そんな形容が似合うウィリアム・グラントの精神は、ブライアン・キンズマン氏にもしっかりと受け継がれている。

<後半につづく>

 

 

グレンフィディック 21年 グランレゼルヴァ

700ml  希望小売価格(税別) 25,000円  40%

 

21年以上熟成したヨーロピアンシェリー樽原酒とアメリカンオーク樽原酒をブレンドし、カリビアンラム樽で4ヶ月間熟成。バニラやフローラルを思わせる香りとやわらかな口当たりが特長で、まろやかながらも複雑な味わいを楽しめる。

 

※掲載価格は販売店の自主的な価格設定を拘束するものではありません。

グレンフィディック 18年 スモールバッチリザーブ

700ml  希望小売価格(税別) 10,000円  40%

 

18年以上熟成したスパニッシュオロロソシェリー樽原酒とアメリカンオーク樽原酒をブレンドし3ヶ月以上熟成。熟した果実やシナモンを思わせる香りで、深い味わいと長く続く余韻が特長。

 

※掲載価格は販売店の自主的な価格設定を拘束するものではありません。

 

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