アイコンズ・オブ・ウイスキー 2023【第1回/全3回】

April 3, 2023

今年で第21回目を迎えた「アイコンズ・オブ・ウイスキー(以下IOW)」は、ウイスキーマガジンの発行元でもある英国パラグラフ・パブリッシング社主催の世界的なコンテスト。「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」が製品としてのウイスキーを対象とするのに対し、IOWは世界のウイスキー業界に著しい貢献を果たした企業、蒸溜所、人物、小売店、バーなどを表彰する。2023年の受賞者を3回に分けてご紹介。

 


 

ディスティラー・オブ・ザ・イヤー

提供:グレンケアン・クリスタル・スタジオ

ヘブンヒル(アメリカ)

ヘブンヒル・ブランズは、1935年にケンタッキー州で設立された。創業者はシャピラ兄弟で、米国最大のスピリッツメーカーとなった今でも家族経営による独立性を保っている。傘下のヘブンヒル蒸溜所は、アメリカンウイスキーを代表する生産拠点。まさにアメリカンウイスキーの伝統そのものを語り継ぐ存在である。確固たる独立性に家族経営らしい情熱を注ぎ、品質へのこだわりや思慮深い革新性でウイスキーづくりを支えている。現在のヘブンヒルはネルソン郡とジェファーソン郡に65軒以上の貯蔵庫を有し、常時合計190万本以上の樽を熟成している。「エライジャ・クレイグ」や「ラーセニー」などのアメリカンウイスキーは、これまでも数々の賞を受賞してきた。「ボトルド・イン・ボンド」の基準を満たす豊富なコレクションで、バーボンの魅力を世界に広めている。

 
入賞

  • ビームサントリー・インディア(インド)
  • アイリッシュ・ディスティラーズ(アイルランド)
  • カバラン蒸溜所(台湾)
  • グレンファークラス蒸溜所(スコットランド)

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    マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー

    グレッグ・グラス/ホワイト&マッカイ(スコットランド)

    名匠リチャード・パターソンが退いた2021年に、マスターウイスキーメーカーとして後を継いだグレッグ・グラス。2022年にはホワイト&マッカイのスコティッシュオーク・プログラムを開始し、史上初となるスコットランド産オーク材での熟成を実現した。都市空間での植樹で小さな森を造園するなど、ウイスキーづくりと自然保護のバランスを重視しながらさまざまな新しい試みにも取り組んでいる。ホワイト&マッカイ入社以前には、スコットランドの独立系ボトラーとして著名なコンパスボックスで商品開発に従事。上質なブレンディングで知られたエキスパートである。

     
    入賞

  • カレブ・キルバーン/ケンタッキー・ピアレス蒸溜所(アメリカ)
  • アヌップ・バリク/ラディコ・カイタン蒸溜所(インド)
  • ポール・コーベット/パワーズコート蒸溜所(アイルランド)
  • トマー・ゴーレン/M&H蒸溜所(イスラエル)
     

    ディスティラリーマネージャー・オブ・ザ・イヤー

    提供:ラークファイヤー

    タイラー・ピーダーソン/ウエストランド蒸溜所(アメリカ)

    ウエストランドの蒸溜所長として、ウイスキー製造工程全体を管理するタイラー・ピーダーソン。日々のウイスキーづくりだけでなく、ブランドの中核的なビジネスプログラムも主導して、ウイスキー業界の最先端を行くウエストランドの原動力となっている。アメリカ西海岸北部で採掘されるピートを使用したウイスキーづくりも始め、農家との関係を構築しながら製麦業者とさまざまな実験を繰り返している。地元の蒸溜酒製造者組合では、アメリカンウイスキーの未来を担うウエストランドの顔として重要な役割を果たしている。

     
    入賞

  • ミシェル・ギルフォイル/ディングル蒸溜所(アイルランド)
  • ヘザー・ティロット/サリヴァンズコーヴ蒸溜所(オーストラリア)
  • マーク・ワトソン/ホーリールード蒸溜所(スコットランド)

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    クラフトプロデューサー・オブ・ザ・イヤー

    チャタヌーガ蒸溜所(アメリカ)

    アメリカ屈指のウイスキー生産地であるテネシーで、創業10年目を迎えたチャタヌーガ蒸溜所。アメリカンウイスキーの伝統を受け継ぎながら、革新的でスタイリッシュな新世代のリーダーとして注目されている。テネシー州のいくつかの郡で100年以上続いてきた酒造関連法の改正に2年がかりで取り組み、小規模なチームながらテネシー州を代表する実験的なウイスキーメーカーとして知られるようになった。ここ2年間は100本以上の樽でさまざまな実験を繰り返し、大麦モルトの風味を押し出したストレートバーボンを開発。樽の数にして約7,000本に及ぶ試行錯誤も続け、現在6種類の主力商品を展開している。チャタヌーガの実験精神は、留まるところを知らない。

     
    入賞

  • ゴダワン蒸溜所(インド)
  • ブラックウォーター蒸溜所(アイルランド)
  • M&H蒸溜所(イスラエル)
  • ナクニーン蒸溜所(スコットランド)

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    シングルエステート・オブ・ザ・イヤー

    ロッホリー蒸溜所(スコットランド)

    蒸溜所の建物から1.5km以内にある敷地内の農場だけで、ローレイト種の大麦を栽培しているロッホリー蒸溜所。2022年には2回の製麦試験を成功させ、2024年までにフロアモルティング用の設備を完成させようと準備を進めている。粉砕から糖化、発酵、蒸溜、貯蔵までの全製造工程が蒸溜所内で完結。チームは農地を長期的に保護しながら環境に配慮した生産スタイルを守り、あらゆる工程を改善していくために定期的な分析を続けている。

     
    入賞

  • タイ・ウイスキー蒸溜所(デンマーク)

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    サステナブル・ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー

    提供:サーテン

    スタウニング蒸溜所(デンマーク)

    2005年の創業以来、サステナビリティを強く意識したスピリッツづくりを続けているスタウニング蒸溜所。2018年にデンマーク西部でオープンした新しい蒸溜所でもサステナブルな工夫を凝らし、さまざまな環境への配慮が織り込まれている。昨年採用された改善点は、精麦中のキルンから生じる熱エネルギーを他の工程にも転用すること。マッシング、洗浄水の加熱、オフィスやショップの暖房などに精麦時の熱を再利用している。サステナブルなこだわりの強化はまだまだ終わらない。

     
    入賞

  • ヘブンヒル(アメリカ)
  • ミドルトン蒸溜所(アイルランド)
  • トマーティン(スコットランド)

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    クーパレッジ・オブ・ザ・イヤー

    カスクノリア(スペイン)

    何世代にも受け継がれた、スペイン伝統の技術と専門知識。カスクノリアは貴重なノウハウを今日のウイスキーメーカーのニーズや理想と融合させ、樽造りにおける新しい黄金時代の代表的な存在となっている。現在は2代目が率いる家族経営のカスクノリアは、品質、革新性、持続可能性を追求する業界のリーダー的存在。アメリカ、デンマーク、スペイン、フランスなどで伐採されたオーク材の新樽も幅広く製作しているが、高く評価されているのはシェリー樽の分野だ。

     
    入賞

  • ロッホローモンド・クーパレッジ(スコットランド)

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    クーパー・オブ・ザ・イヤー

    アンディ・ムーア(スコットランド)

    アンディ・ムーアは、ロッホローモンド・クーパレッジのシニアクーパーとして、7人の正社員と2人の見習いからなるチームを統括している。樽職人として40年以上の経験があり、ロッホローモンド・グループで使用されるすべての樽の品質を監督。ロッホ・ローモンドが発売する全製品のリリースに欠かせない役割を担ってきた。サイズや木材もまちまちな樽を年間20,000本以上も点検し、修理と品質の維持に努めている。

     
    入賞

  • 該当なし
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    ビジターアトラクション・オブ・ザ・イヤー

    ジョニーウォーカー・プリンセスストリート(スコットランド)

    エディンバラにある8階建ての「ジョニーウォーカー・プリンセスストリート」は、ディアジオ社がスコットランドのウイスキー観光に1億8500万ポンド(約300億円)を投じた大規模な体験型施設。パーソナライゼーションの概念を別次元にまで高めたアトラクションだ。「ジャーニー・オブ・フレーバー」ツアーでは、ゲストが個人の味の好みをマッピングし、それぞれの味覚に合わせたドリンクを楽しむことができる。
     
    入賞

  • サゼラックハウス(アメリカ)
  • ポールジョン・ビジターセンター(インド)
  • パワーズコート蒸溜所&ビジターセンター(アイルランド)
  • M&H蒸溜所ビジターセンター(イスラエル)

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    ビジターアトラクションマネージャー・オブ・ザ・イヤー

    リサ・ジェムソン/ティーリング・ウイスキー(アイルランド)

    2016年にティーリングウイスキーに入社して以来、リサ・ジェムソンは経験豊富なビジター担当のチームを育ててきた。現在は観光業界を巻き込みながら、国際的な関係構築に多くの時間を割くことでティーリングを国内トップクラスの観光名所にまで押し上げている。ビジターエクスペリエンス&アトラクション協会の一員であり、アイリッシュウイスキー協会では観光委員会の委員として尽力。業界の仲間たちと力を合わせ、アイルランド全土のウイスキー観光を促進するために活動している。

     
    入賞

  • マット・ヒギンズ/バッファロートレース蒸溜所(アメリカ)
  • コリン・ハート/グレンタレット蒸溜所(スコットランド)

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    アメリカンウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー

    キャム・ドーソン/ブラウン・フォーマン(イングランド)

    キャム・ドーソンは、2014年4月からブラウン・フォーマンの英国担当ブランドアンバサダーとして働き始め、8年以上にわたってジャックダニエルのチームに欠かせない存在となっている。その間にジャックダニエルを始めとする幅広いブランドをアピールし、アメリカンウイスキーのカテゴリー自体を力強く後押しした。英国中のバーテンダーたちをインスパイアし、得意のブランドイベントを通じて消費者にもアピール。ジャックダニエルに対する情熱は格別で、厳格なスコッチウイスキーの愛飲家さえ心を揺さぶされてしまうほどだ。

     
    入賞

  • リン・ハウス/ヘブンヒル(アメリカ)

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    アイリッシュウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー

    クリス・ヘイズ/ティーリング・ウイスキー(ヨーロッパ)

    クリス・ヘイズは、ウイスキー業界の人気者だ。ティーリング・ウイスキーの欧州担当ブランドアンバサダーを6年間にわたって務め、その後もさらに自分の世界を広げようと複数の言語を習得。ウイスキー蒸溜の免許も取得して、ティーリングのオン・トレード・プラットフォーム「クラフテッド・トゥ・クリエイト」を成長させてきた。アイリッシュウイスキーを世界に広める決意は揺るぎなく、北アフリカ、東欧、スカンジナビアを行き来しながら、ウイスキーファン、バーテンダー、ジャーナリスト、生産者たちと交流している。

     
    入賞

  • ダン・グランメル/ブラックウォーター蒸溜所(アイルランド)

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    ワールドウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー

    コレイ・カーン・エズデミル/ポールジョン・ウイスキー(アメリカ)

    コレイ・カーン・エズデミルは、インディアンシングルモルトウイスキー「ポールジョン」の米国西海岸担当ブランドアンバサダーとしてキャリアをスタートした。その後は2021年4月にサゼラックに移籍して、米国におけるポートフォリオアンバサダーに就任。スコッチウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキーの全ポートフォリオを管轄する立場となった。今もなおインド産のシングルモルトを愛するコレイ・カーン・エズデミルは、ポールジョンのナショナルアンバサダーとしても傑出した成果を残している。

     
    入賞

  • ラクシット・ジャグダール/アムルット・ディスティラリーズ(インド)
  • アリー・バーナ/サリヴァンズコーヴ(オーストラリア)

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    スコッチウイスキー・ブランドアンバサダー・オブ・ザ・イヤー

    マーク・トムソン/ウィリアム・グラント&サンズ(スコットランド)

    2014年にスコットランドでグレンフィディックのブランドアンバサダーに就任して以来、マーク・トムソンはウイスキーとスピリッツへの愛と熱意を伝え続けている。ウイスキー業界で17年以上働いた後、2019年には栄誉あるキーパー・オブ・ザ・クエイヒに任命。消費者や業界関係者を対象にしたウイスキー講座を開催し、グレンフィディックだけでなくウイスキーカテゴリー全般の紹介と普及に努める。自身のSNSプラットフォームを駆使しながらエンターテインメントと教育を融合し、オンラインでチャリティーオークションも開催している。

     
    入賞

  • シュウェタ・ジェイン/ディアジオ(インド)

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    地区別の候補者も含めたアイコンズ・オブ・ウイスキーの全容はこちらから。

     
     

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