シェリー樽の真実【前半/全2回】

February 6, 2015

ウイスキーメーカーとシェリー生産者の関係について、アルウィーン・グウィルトがレポート。スペインのボデガ ホセ・イ・ミゲル・マルティン社を訪れる。

近頃では数種類のウイスキーを試すと、そのうちの幾つかはほぼ間違いなくシェリー樽熟成だ。マッカランからグレンファークラスまで、また山崎からジェムソンまで、シェリーを入れていた樽を使う伝統は長く続いている。
しかし、ウイスキーメーカーが生産を増やし、これまでより多くの樽が必要にななっている。それに伴って、シェリー生産者がウイスキー業界の求める数に追いつけなくなりつつある。バーボン樽同様、供給の不足が問題になっているのだ。

まず、ウイスキーをシェリー樽で熟成するにあたって、メーカーにとって重要なこととは何だろう?
それは、スピリッツの熟成に使うために調達するのだから、樽の品質に関して信頼できるボデガ(ワイナリー)と強力な関係を持っていることだ。

スペイン南東部のウエルバ近く、埃っぽい丘陵地帯に位置する家族経営のシェリー生産業者。やはり家族経営のグレンファークラスに全ての樽を供給しているホセ・イ・ミゲル・マルティン社(以下J&MM社)を訪れたときにも、この「強力な関係」の重要さを目のあたりにした。

J&MM社のワイナリーでは、陽光の降り注ぐ裏庭に、様々な形や大きさのトラクターが並んでいた。その荷台に溢れんばかりに積まれた色とりどりのブドウ…パロミノ種コロンバール種だ。
瑞々しいブドウが、大きなトラクターの荷台にぎっしりと詰め込まれている。 この思わず歓声を上げてしまう光景が見られるのは、毎年秋の6週間だけだ。

そして、ブドウの最終目的地である建物に入ると、一変して対照的な光景が現れる。
屋外では、農夫がトラクターを運転している様子に魅了され、室内では、容積20万リットルのステンレス製発酵タンクに驚かされる。
伝統的な方式と新しい方法。両者が一体となって、シェリー造りが「倉庫に並ぶ埃っぽい樽」「昔ながらの大きな木製タンク」というイメージだけでなく、スマートでモダンなビジネスでもあることを証明している。

J&MM社の主軸工場は、シェリーのボデガと聞いて思い浮かべるものとはほど遠い。
建物に入るとまず、掃除したての床から立ちのぼる消毒液の臭いを感じる。徹底した衛生管理は、事業の成功を裏付けている。
タンクの中では、農夫たちが運んできたブドウの絞り汁が様々な期間にわたって自然発酵している。
この後、この発酵液にニュートラル・グレープスピリッツを加えて自然発酵を止め、アルコール度数を高めることになる。伝統的なシェリー造りの製法だ。

もちろんこれはJ&MM社の業務の全てではない。敷地内には大規模なクーパレッジもあるし、樽板を乾燥させる広い庭、他にもステンレス製タンクを入れた熟成庫3ヵ所、伝統的なソレラ・システム熟成庫、それにシェリービネガーの工場もある。

ウイスキー用の樽をシーズニングするオロロソはまずこれらのタンクで熟成するのだから、シェリー産業とウイスキー産業の最初のつながりはこの実に清潔な空間にあると言えよう。それはJ&MM社にとっては重要なつながりだ。25年近く協力関係にあるグレンファークラスなどのウイスキーメーカーに樽を供給することが、同社の業績の50%以上を占めている。

【後半に続く】

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