ローランドを往く【後半/全2回】

June 10, 2015

ローランド地域には、一般公開をしていない蒸溜所を含めると、実に多くのウイスキー関連施設がある。そしてまた新たな蒸溜所がいくつも活動を始めている。最新のローランドレポート後半をお送りする。

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エディンバラからフォース・ロード・ブリッジを渡って北に向かい、かつてのファイフ・カウンティに入ると、2005年にカスバート一家の農場にある古い製粉所の建物に作られたダフトミル蒸溜所(一般公開されていない)の他に、この数ヵ月で2ヵ所の新規蒸溜所が操業を始めている。ファイフにはスコットランド最大であるディアジオ社の広大なグレーンウイスキー蒸溜所、キャメロンブリッジ蒸溜所もある。

ファイフで最も新しい2ヵ所の蒸溜所はキングスバーンズ蒸溜所イーデンミル蒸溜所だ。
キングスバーンズは歴史的な大学街でおそらくは世界一有名なゴルフコース「オールド・コース(The Old Course)」があるセント・アンドルーズの南東9 kmに位置している。
キングスバーンズ蒸溜所はカンボ・エステートにある古い農場に開発され、2014年の聖アンデレ(アンドルー)の祝日に開業した。1組のスチルを備えたこの蒸溜所のオーナーは、何代にもわたってファイフに土地を所有し、2005年にはウィームス・モルト という独立系のボトリング事業を設立したウィームス家だ。

セント・アンドルーズを経由してキングスバーンズから北西に20 kmほど行くとイーデンミルがある。イーデンミルは2012年に醸造所として始まったが、2014年に蒸溜装置を設置してからスピリッツ生産に移行し、ジンとウイスキーをつくっている。
イーデンミルは、もともとヘイグ家というローランドの蒸溜家一族が1810〜1869年に建設・操業された旧セギー蒸溜所の敷地に建つ、旧製紙工場の一部を基盤としている。スコットランド唯一の蒸溜所兼醸造所だ。
イーデンミルでは3種類の異なるスタイルの大麦麦芽を使った3種類の異なるスタイルのニューメイクスピリッツをボトリングし、蒸溜方法の多様さを証している。4月からは、ペドロヒメネスシェリーカスクを使って蒸溜所で仕上げ熟成した、「あなただけの」スペイサイドスタイル・ブレンデッドモルトウイスキーをボトリングするオプションも登場する予定だ。
イーデンミルにはビールとジンのツアーが用意されているが、3月からはウイスキーのツアーも加わった。

西の方では、ブラドノックが稼働停止し、ウイリアム・グラント&サンズ社アイルサ・ベイ蒸溜所(モルト)とガーヴァン蒸溜所(グレーン)が一般公開していないため、ローランドウイスキーの体面を維持しているのはオーヘントッシャンアナンデールということになる。
オーヘントッシャンはグラスゴー中心部から16 kmほど。1823年に初めてライセンスを受け、現在は日本の超大手蒸溜会社、ビーム サントリー社が所有するモリソン・ボウモア社の一部として操業している。
オーヘントッシャンではかつてローランドのモルト蒸溜の特徴だった3回蒸溜を行っており、中核ラインはアメリカンオーク、スリーウッド、12年、18年、21年のシングルモルトだ。蒸溜所には立派なビジター施設とともに、会議センターが創られている。

グレンキンチーを訪れたらエディンバラでひとときを過ごさずにはいられないのと同様に、 オーヘントッシャンまで旅したら、スコットランド最大の都市で人口100万人を超えるグラスゴーを見物しない手はない。
21世紀のグラスゴーは、スコットランド工業力の旧中心地帯の真ん中に位置し、18〜19世紀にかけてロンドンに次ぐ「大英帝国第二の都市」と言われるまでに成長した。その富の多くは、18世紀中のタバコの輸入と後の土木工学と造船を中核とする重工業によるものだった。

グラスゴーはウイスキーの伝統も誇り、10年にわたり7ヵ所の蒸溜所を擁していたが、現在稼働しているのはゴーバルス地区にあるシーバス・ブラザーズ社のストラスクライド(グレーンウイスキー蒸溜所)のみで、ビジターは受け入れていない。
しかし、クライド川の土手にある歴史的な「ポンプハウス」に位置するグラスゴー蒸溜所のおかげで、グラスゴーにも間もなくモルトウイスキーづくりが戻って来る予定だ。

アナンデール蒸溜所はグラスゴーの南東100 km、魅力的な旧カウンティの中心地、ダンフリーズから20 kmのところにある。スコットランドの国民的詩人、ロバート・バーンズは最晩年(1791〜1796年)をダンフリーズで過ごし、税官吏として働きながら町のグローブ・タヴァーンに足しげく通った。この酒場で詩人を讃えて一杯やるのもいい。一般公開されている彼の家を見学することもできる。
新たに建設されている他の蒸溜所とは異なり、アナンデール蒸溜所は1830〜1921年に操業していた既存の蒸溜所を再建して復活させたものだ。アナンデールの再生は主に地元生まれのビジネスマン、デイヴィッド・トムソン教授のお陰だ。彼は大金を注ぎ込んで7年かけて古い蒸溜所を修復・増強し、実に素晴らしいビジター体験が得られる施設を作り上げた。

イギリス旅行の際、スコットランドの蒸溜所にも足を延ばしたいが遠くて日程が厳しい、と思っている方にはローランドの蒸溜所がぴったりだ。ぜひこちらをご参考に、蘇りつつあるローランド地方のウイスキーづくりを体感していただければと思う。

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