ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所のビジターセンターがオープン【後半/全2回】

April 14, 2017


新しいビジターセンターがオープンして、さらに充実したニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所のビジター体験。ウイスキーファンなら、ぜひ有料プログラムのテイスティングも試してみよう。ブレンダーさながらに複数のキーモルトを味わえば、竹鶴政孝がここに第2の蒸溜所を建設した理由がわかるはず。

文:WMJ

 

真新しいセミナールームに、春の明るい光が差し込んでいる。目の前は、黄金色や琥珀色の液体が入ったグラスが5つ。その脇に白紙のテイスティングノートとペンが置いてある。ニッカのブレンダーは、新人時代から1日に100種類もの原酒をテイスティングしてこのノートをつけるのだという。ビデオ越しに、佐久間正チーフブレンダーが語りかける。

セミナールームでおこなわれるテイスティングは毎回24名が定員。希望者はなるべく早めに公式ウェブサイトから予約しておこう。

「原酒をテイスティングして、自分の言葉で感じたままを書くことが、すべてのブレンディングの基礎になります。どんな風味なのか、その風味を感じているのは口蓋や鼻腔のどの場所なのか、詳細なノートを後進のために残しておくのです」

3月27日にオープンしたばかりのニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所ビジターセンターは、ウイスキーの製造、宮城峡蒸溜所の特長、ニッカウヰスキーの歴史などが体験的に学べる画期的な見学施設だ。同センターの開業に合わせて導入された、ウイスキーテイスティングの有料プログラムは見逃せない。宮城峡蒸溜所のウイスキーについて、よりプロフェッショナルな視点から学べる格好のチャンスだ。

テイスティングのために用意された5つのグラスの内訳は、モルトウイスキー4種とグレーンウイスキー1種。なかでも面白いのが、宮城峡蒸溜所でつくられている異なった3種類のモルトウイスキーだ。「シングルモルト宮城峡」を構成する重要なキーモルト(主要原酒)を比較テイスティングすることで、蒸溜所の個性やブレンディングのアプローチを構造的に理解することができる。

 

キーモルトを比較しながらブレンディングを擬似体験

 

ガイド付き蒸溜所見学(無料)は相変わらずの人気。9名までなら公式ウェブサイトから予約できる。ビジターセンターと組み合わせれば、充実した体験になるだろう。

講師の手引きで、まずはシングルモルト宮城峡「モルティ&ソフト」を味わってみる。竹鶴政孝が宮城峡蒸溜所を創設した動機のひとつが、まさにこのウイスキーをつくること。すなわち余市とは特徴を異にするモルト原酒の典型である。ノンピートおよびライトピートの麦芽を使用し、軽快なモルトの香ばしさと、甘くてシルキーな味わいが印象的だ。

次に味わうのは、シングルモルト宮城峡「フルーティ&リッチ」。これは「モルティ&ソフト」よりもフルーティな香りを生み出す酵母を使用することで、より華やかな果実香を強調したバリエーションだ。メロン、バナナ、ベリー、モモなどのフルーツ香が旺盛で、甘酢っぱさとかすかなほろ苦さがある。醸造段階から複数の選択肢を持つことで、多彩な原酒のストックが得られるようになるのだ。

そして3つ目のキーモルトが、シングルモルト宮城峡「シェリー&スイート」。他の2つの原酒よりも濃い琥珀色が、ヨーロピアンオークのシェリー樽で貯蔵されたことを示唆している。レーズンのような甘いドライフルーツの香りと、カカオを思わせる香ばしさ。甘くてコクのあるほろ苦さも感じられる。

以上の3種類のキーモルトは、蒸溜所限定商品としてショップで販売されている。頭のなかで風味を予測しながら、スタンダードな「シングルモルト宮城峡」を味わって驚いた。香りから後味まで、単なる足し算を超えた新しい印象が精密に立ち上がっている。まさにブレンディングの妙技というべきであろう。

ニッカ池の畔に建つビジターセンター。屋内にいても、宮城峡の自然がダイレクトに感じられる設計だ。

最後に味わったのが、カフェグレーン「ウッディ&メロー」。バニラを思わせる甘い香りがあり、樽由来の濃密なコクが一般的なシングルグレーンウイスキーとは一線を画している。宮城峡蒸溜所のカフェ式連続式蒸溜機は世界的にも珍しく、この上質でユニークな風味がブラックニッカなどのブレンデッドウイスキーを骨格から支えているのである。

この有料プログラムは、4月末からスタートする予定だ。土曜日、日曜日、祝日に各日2回開講し、各回の定員は24名。所要時間は約80分である。体験の内容を考えれば、1人1,000円(消費税込)という受講料は破格の安さだ。宮城峡蒸溜所では今年も20万人以上の来場者が見込まれており、早めの予約は必須である。ニッカウヰスキーの公式ウェブサイトから事前予約を申し込もう。

佐久間チーフブレンダーいわく、自然の働きを自分たちが望む方向へと誘導するのがウイスキーづくりの要諦だ。容易ではないが、ひとつひとつの細部にこだわることで、少しずつ変化が現れる。

「目指す目標はひとつではなく、到達すべき地点もたくさんあります。今のウイスキーより、明日はもっと美味しいウイスキーをつくる。それが私たちの目標なのです」

 

ニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸溜所

住所 宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地

アクセス
電車:JR仙山線作並駅下車徒歩で約25分
バス:仙台駅前から作並温泉行「ニッカ橋」下車徒歩で約5分

休業日 年末年始(臨時休業あり)

見学時間 9:00~11:30、12:30~15:30

電話 022-395-2865

FAX 022-395-2305

料金
一般の蒸溜所見学:無料
ウイスキーテイスティングの有料プログラム:1,000円(消費税込、2017年4月下旬より開始)
 
ガイド付き蒸溜所見学や有料プログラムの予約もできるニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所の見学ガイドはこちらから。

 

 

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