台湾の独特な風土を酒に醸す職人のこだわり


西洋の要素が東洋の風土と出会う時、何が生まれるのだろうか。スコットランド生まれの麦芽が台湾ならではの風味へと変貌を遂げ、独特のハーモニーを鳴り響かせる。ウイスキーに影響を及ぼす伝統的な三大要素は麦芽、酵母、水。しかし現代では、「風土」もウイスキーの風味に大きく影響すると考えられている。風土とは何か。『世界のウイスキー図鑑』(デイヴ・ブルーム) によると、風土とは人と大地による調和と共存の表現であり、ウイスキーには生産地の特色が反映される。風土とは、その場所の気候や土壌だけでなく、人類の文化や風俗、更にはその土地で暮らす人々が共有する記憶までも包括しているものなのだ。

伝統的なウイスキーの三大要素 麦芽、酵母、水
現代におけるウイスキーの核心的価値 風土

貯蔵庫


台湾南投酒廠では、その道のプロがシングルモルトウイスキーの品質を守っている。蒸溜室の厳しい暑さに耐え、味わいが凝縮した一滴一滴を醸造。樽の修繕には、冷たい小川で摘み取ったコガマを使う。南投酒廠オリジナルのフルーツワインに使っていた樽を再利用し、ユニークなウッドフィニッシュへと発展させる。洋酒の中に台湾らしさを表現しようと一徹に取り組み、東洋の白檀の香りをテーマに、オマー(OMAR)シングルモルトウイスキーは生み出された。

南投酒廠の独特な風土 Terroir of Nantou Distillery
蒸溜 高温多湿の熱帯の島
熟成 エンジェルズシェア(天使の分け前)が毎年6~7%
樽の修繕材料 コガマ
オリジナルの後熟技法 南投酒廠生産の台湾フルーツワイン
(ライチ酒、梅酒、ブラッククイーン・ワイン)

南投酒廠の樽職人がコガマで樽を修繕する様子

 台湾ならではのウイスキーを醸造するため、南投酒廠は世界各地から設備を購入し、様々な樽を使って繰り返し実験を行い、最高の風味と口当たりを追求してきた。このような不屈の精神や冒険心、伝統やしきたりに固執しない大胆な発想には、台湾人の気質が現れている。オマーの口当たりは、確かに伝統的なウイスキーとはいささか異なる。バーボンカスクで言うと、伝統的なバーボンカスクはバニラやハッカの清らかな香りに比較的近いが、オマーのバーボンカスクはエレガントな花の香りに加えてパイナップルやマンゴーといった熱帯フルーツの香りがかすかに漂う。日本の消費者に人気のあるシェリーカスクで言うと、伝統的なシェリーカスクはどっしりとした黒なつめやほろ苦いチョコレートの風味に近いのに対し、オマーのシェリーカスクはドライフルーツや梅の蜜漬け、龍眼蜂蜜の風味がある。

 良い料理には良い酒を組み合わせたいもの。実はウイスキーは和食にも大変よく合う。和食で重視されるのは「うまみ」。出汁もタレも、さまざまな食材を組み合わせ、素材の味を活かしてコクや奥行きを出す。オマーのバーボンカスクの清らかな花の香りは、煮物や蒸し物、口当たりさっぱりの海鮮料理に合う。串焼きや揚げ物もウイスキーとの相性抜群で、オマーのシェリーカスクと合わせると、一日の仕事を終え疲れた自分への最高の癒しとご褒美になる。