ローズバンクの復活【後半/全2回】

April 30, 2018

かつてのローランドの王と呼ばれたローズバンクは、3回蒸溜のエレガントな酒質で知られていた。そのシングルモルトを完璧に再現しながら、21世紀らしいアプローチで生産地のフォルカークを活性化する計画が本格的に動き出している。

文:ロブ・アランソン

 

フォルカークの運河沿いで、静かに眠っていたローズバンク蒸溜所。25年以降の歳月を経て、伝統のローランドモルトが復活するのは嬉しいニュースだ。

現在の場所で、ローズバンクのウイスキーづくりが始まったのは1840年のこと。運河の向こう側にあるキャメロン蒸溜所から、まずはジェームズ・ランキンがモルティング施設を買収した。

ウイスキーツーリズムの先駆者とでもいうべきアルフレッド・バーナードが、1886年に現地を訪ねて感想を記している。名著『英国のウイスキー蒸溜所』によると、ローズバンクの蒸溜所機能は運河の両側に2箇所あり、旋回橋によって結ばれていたのだという。

19世には運河の西岸にある旧キャメロン・モルティングズで原料を製麦し、旋回橋を通って東岸のローズバンク蒸溜所に移送されていたことがわかっている。同書には、当時の貯蔵庫スペースで50万ガロンのピュアモルトウイスキーが熟成できたとも記されている。

またアルフレッド・バーナードは、蒸溜所周辺の風景についても鮮やかに描写している。ここに一部を引用してみよう。

「今日は早朝から出発して、興味深いこの蒸溜所で素晴らしい時間を過ごすことがきた。ローズバンクはフォルカークから1マイル、キャロン川から半マイルの場所にある。フォース・クライド運河の岸辺に建ち、交通の途絶えない幹線道路にも面しているので、他の多くの蒸溜所のように辺鄙な環境ではない。目の前の運河では、ひっきりなしにボートや蒸気船が行き交っている。作業場はバンタスキン通りに隣接しており、背後を木造りの街並みが彩っている。ローズバンクハウスの敷地には、向かって左側に立派なニレの古木があり、そこにミヤマガラスが巣を作っている風景もまた美しい」

 

フォルカークの新しいシンボルに

 

貯蔵庫は放置されたままだが、古い原酒で希少なボトリングも予定されている。この場所に新しい樽が運び入れられる日も遠くはない。

アルフレッド・バーナードが見た風景も、今ではだいぶ変貌を遂げてしまったかもしれない。だが新しい蒸溜所周辺の環境も、ローズバンクの歴史を称えるものになるとレナード・ラッセル氏(イアン・マクロード・ディスティラーズ)は請け合ってくれた。

「スコットランドにおけるウイスキーの伝統のなかで、ローズバンクは特別な位置を占めています。だから周囲の風景も、その伝統に相応しいものとなるように注力しなければなりません」

新しく用意するのは、ウイスキーの生産設備だけではない。ビジターセンターを建設して、素晴らしいウイスキーの物語を来場者に伝える。煉瓦が印象的な運河沿いの雰囲気や、昔ながらの風景も将来にわたって維持するのだという。

「フォルカークでは、回転式のボートリフト『フォルカーク・ホイール』や『ケルピー像』といった名所が人気を集めています。ローズバンクのビジターセンターは、そんな町の見どころのひとつとなるでしょう。復興した蒸溜所が、フォルカーク観光をさらに隆盛させられるように力を尽くします」

不死鳥の如く、復活を果たそうとしているローランドの宝。蒸溜所の再興や、その先のリリースを待ちきれない人のために、イアン・マクロード・ディスティラーズは現存する貴重な原酒樽をいくつか確保した。ラッセル氏は語る。

「これから数カ月かけて残された希少なローズバンクの原酒を慎重に吟味し、本当にレアで特別なウイスキーを発売しようと考えています。このようなリリースには、間違いなく高い需要があるものと見込んでいます。ウイスキーコレクターの方や、ローズバンクを愛してやまない皆様に、もれなく最新情報をお届けできるように計画を進めているところです」

ローズバンク復興計画の詳細は、公式ウェブサイトで随時アップデートされている。

 

 

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