魅惑のボトルキャップ【後半/全2回】

July 27, 2015

コルクとストッパーからなる、ウイスキーボトルのキャップ。この小さなキャップの果たす重要な役割を掘り下げる連載の後半をお送りする。

【←前半】

「未開封のボトルの場合、コルク栓と液面の間の空気はウイスキーに影響を与えるか」という疑問については、「きわめて長期間保管されていたものであれば、ごくわずかに影響を及ぼす可能性はある」と考えられるが、一概には言えない。なぜなら、空気以外に他の要素も関連するからだ。

グレンモーレンジィビル・ラムズデン博士はこう考えている。
「未開封のボトルの中で何らかの変化が起きている可能性はありますが、それはヘッドスペースの空気の影響と言うよりも、ボトルの中で原酒同士の調和、融合が続くことに関係するのではないかと思います。ほとんどのモルトは、さまざまなカスクをブレンドしたものですから」。

ボトルを開けて中のウイスキーをグラスに注いだら、当然ながらウイスキーの量が減ってヘッドスペースが増え、ボトルの中にはより多くの空気が入る。加えて、ウイスキーを注ぐたびに、ヘッドスペース内の空気も排出されて、コルクを戻す前に新鮮な空気に置き換わる。

しかし、ラムズデン博士によると、「開けてからしばらくキャビネットに置かれているボトルから何度も飲みましたよ。『ヘッドスペースの空気が入れ替わる』ということだけで何か影響があるとしても、長い期間にわたってであっても余りにも小さな影響なので、まず99.9%気付かないでしょうね」
もちろん「開封済みのボトルが、しばらく経ってから味も香りも抜群に良くなっていて驚いた」という経験をお持ちの方も多いだろう。 これはまた別の要因(ウイスキーの香味成分が空気に触れて開いてくる、など)だ。しかしそのような場合も、コルク栓はその良い状態を保ってくれるのだ。

では、改めて「コルク」そのものを掘り下げてみよう。
地中海原産のコルク樫は、ポルトガル南部の森に最も多く生育している。コルクの供給が専門のアモリム社もこの地域に位置している。

コルク樫を植えてから樹皮を使ってコルクキャップを生産できるようになるまで、平均43年かかる。そのうえ、コルクは9年ごとにしか収穫できない。樹皮が「再生」するまでにそれだけの年数を要するためだ。
木の寿命は220〜250年なので、キャップを作るためにおよそ15〜17回収穫できることになる。

コルクは、空気を含んでいる微小な細胞が何百万個も集まってできている。ボトルの口より少しだけ大きめに作ったコルクをボトルのネックに押し込むと、圧縮された細胞の中の空気が元の大きさに戻ろうとする。その結果、きっちりと封印しながらも容易にコルクを抜いたり戻したりできるようになる。

この小さなボトルの栓にも、ウイスキーを守る重要な意味があった。そして、各メーカーが世に送り出すウイスキーの価値をより高め、メッセージを込めるために、様々な趣向が凝らされている。

あなたが次にウイスキーボトルの栓を開けるとき…それはそんなに先のことではないだろうが(今この記事を読みながらかも?)、ぜひこのコルクとストッパーのことも、少し気にかけてみてほしい。
ウイスキーを楽しむほどに、最初から入っている空気がだんだんと増えて、この空きスペースが憎らしくなってくる気持ちもよくわかる!
しかし専門家が太鼓判を押すように、あなたの大切なウイスキーはこのボトルキャップが守ってくれている。まあ、「もう1杯…」という気持ちにストップをかけるどころか、再び栓に手をかけてしまうことは止められないだろうが。

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