大論争 低温濾過と着色料 その1(反対論)

February 17, 2012

ウイスキーの品質を一定に保つ、低温濾過と着色料の使用。反対派は、消費者への欺瞞であると糾弾する。(文:ティム・フォーブズ)

オンラインのフォーラムで始まった「本物のウイスキーを求めるキャンペーン」が、大論争に発展している。このキャンペーンは業界に対する消費者の声だ。ほとんどのウイスキーが人工的にその色を変えられ、低温濾過されているという事実に多くの人々が気づき始めた。

事実、スピリッツ用のカラメル色素(E150a)と低温濾過はウイスキー産業にしっかり定着している。この慣習に消費者は異議を唱えたのだ。多くのモルト愛好家は、自分たちの飲むウイスキーが本来の色であってほしい、またウイスキーの特性を変えない「バリアフィルター」を使って濾過してほしいと考えている。

着色料の使用に対する反対意見はシンプルだ。「E150は蒸溜や熟成の産物ではなく、人工的な添加物だから」。つまりカラメル色素による着色は、ウイスキーを実際よりも熟成が長く見せるための不誠実な細工であり、人工色素はウイスキーのフレーバーを鈍らせ、苦味のもとになるという主張である。

もうひとつの低温濾過は、ブレンドされたスピリッツが低温時に曇るのを防止するための工程だ。冷やしても曇ることがない46%以上のウイスキーには必要がないはずだが、濾過法の表示がなされていないため、消費者は正しい情報を得られていない。

要求は「廃止」ではなく「表示」

このような混乱を取り除くには、着色と低温濾過がおこなわれていることを明確に表示すればいい。事実を正直に表示する方が、業界の長期的利益に資するのではないのか。着色料の添加や低温濾過は製造コストを増し、多くのケースで論理的に不要なのに、品質を下げるためになぜ余計な経費をかけるのか。

新興成長市場で受け入れられるため、ブレンデッドウイスキーの色が均一でなければならず、氷を入れても濁らないようにしたいのは理解できる。しかし、同一銘柄が世界中どこでも完全に同じであることを販売員が保証しなければならないという主張は馬鹿げている。セールスマン数百人の利便性のために、より高価で品質が劣る製品を何百万人もの消費者に売るのはいかがなものか。

生産者はこう言う。「E150はウイスキーの色の変化を防ぐためだけの添加物であり、無視できるわずかな量しか使用していない」。しかしそれなら、40年熟成の限定製品を検査するとE150が検出される事実をどう正当化するのか。着色料や低温濾過を禁止しろと要求しているのではない。ただ情報を表示してほしいだけなのだ。ドイツやスカンジナビアでは何年も前からE150の表示が義務づけられているのに、簡単なラベル表示ができる国とできない国があるのはどういうことか。

これまでもE150の問題に対して、業界はおおむね真面目に対応しようとはしなかった。「含まれている量はわずかなのでフレーバーには影響しない。以上」といった感じである。しかしこの主張が正しいのかどうか、まだ一度も証明されたことはない。

業界内部では、こんな声も囁かれている。「テイスティングをすると、みんなカラメルを添加した方が美味しいというんだよね」。「味が良いのなら、いったい何が問題なんだろう?」。しかしカラメルが本当にフレーバーに影響を与えるのなら、これは香味料の使用を明確に禁じたスコッチウイスキー協会の規則に違反することになり、E150の使用を正当化するすべての論理が破綻する。

 

 

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