木香カクテルはいかが?
スモーキーな木の香りを味わいたい。煙を材料に使った画期的な木香カクテルを銀座のバーでオーダーした。(文:ニコラス・コルディコット、写真:ウィル・ロブ)
木の香りを含んだカクテルを楽しむ方法として最もわかりやすいのは、スピリッツを樽に入れてじっと10年ほど熟成を待ち、しかる後に樽から取り出してカクテルのベースに使うというものである。
そんな時間はないって? せっかちなあなたのために、もうひとつの方法を紹介しよう。それは調理用スモーキングガンという画期的なマシーンを使い、木を燃やした煙をカクテルシェイカーの中へ直接的に噴出させ、お酒そのものを燻してしまおうという大胆な発想だ。
このような突飛なカクテルを考案してくれたのは、バーテンダーの上野秀嗣氏。そもそもこんな道具をカウンターの背後に隠し持っていること自体が驚きであるが、銀座のBAR HIGH FIVEに何種類かの木材チップが持ち込まれ、ユニークな実験は始まった。
驚いたことに、上野氏がおもむろに取り出したのはボストンシェイカーである。「ボストンシェイカー内部の体積が大きい。煙がそれだけ多く入りますからね」。西洋のバーテンダーにはお馴染みのシェイカーだが、ここ銀座ではほとんど目にすることがない。
そしてこの日本屈指のバーテンダーが採用したのは、木とスピリッツの種類を同系統に合わせるという路線だった。ウイスキーにはオーク、チェリーリキュールにはサクラの木、カルヴァドスにはリンゴの木という具合である。「通常のカクテルは同じ種類のフレーバーを合わせないのですが、ことスモークに関してはうまくいくような気がするんですよ」。
スモークにはふたつの効果がある。ひとつはシェイカーから漂い出して鼻孔をくすぐるアロマの効果。もうひとつは、液体の中に閉じ込められて味覚に訴える高価である。その効果は、予想を越えて絶大。木香カクテルに、極めて繊細な煙の取り扱いが求められることは確かである。
チェリー+スモーク
ウォツカ40ml、チェリーリキュール20ml、マラスキーノ10ml、オレンジジュース10ml、レモンジュース10ml、桜チップの煙
アップル+スモーク
カルヴァドス45ml、シナモンリキュール10ml、ハニーリキュール5ml、レモンジュース10ml、アップルウッドの煙
ウイスキー+スモーク
インヴァーハウス45ml、ドングリリキュール15ml、レモンジュース 10ml、オレンジビター5ダッシュ、オークチップの煙