人生のスパイス【前半/全2回】
東洋の食の喜びの一端を求め、ウイスキーとフードのマリアージュを検証するテーブルにつく
Report:ケイト・ポートマン
私達ウイスキー愛好家は、まさしく多様性が人生のスパイスだということを知っている。つまり、ウイスキーの最大の魅力は、その種類とフレーバーの端的な多様性であり、それ故に私達の味蕾を常に渇望させ、飽くなき探究を続けるように仕向けているところだ。ウイスキーとフードのマリアージュ(組み合わせ)は当然のことながら、これらの味覚体験の幅が何倍にも増やし、フレーバーのフロンティアがどんどん拡張する。
フレーバーのフロンティアとは、比喩的な言い方だが、それだけでなく地理的な意味も持つ。非常に多くの蒸溜所と多くの種類のウイスキーを誇るスコットランドは、食物と組み合わせるウイスキーを探すのに苦労がないので、味蕾を楽しませるためにあえて国境を越える必要がない。しかし、私が最近のブッシュミルズのウイスキーディナーで気がついたことは、国外まで視野を広げるべき十分な理由があるということだ。
アイルランドは隣のケルト系のスコットランドと比較して、稼動している蒸溜所はわずかかもしれない。しかしこのエメラルド色の島では今も多くの特徴をもつ非常に多彩なウイスキーがつくられており、広い範囲のさまざまな食物を本当に引き立てることができる。
ブッシュミルズは、アイリッシュウイスキーには食卓で味わうべきものがたくさんあることを証明するために、大胆な食のスタイルを選んだ。香辛料をふんだんに使った、インド料理が持つ多様な要素とのマリアージュを披露してくれた。
組み合わせる料理のメニューは、ロンドンのコヴェント・ガーデンにある革新的なインド料理店、モティ・マハルの協力を得て考案されものだった。このレストランは、アイリッシュウイスキーとインド料理の組み合わせを行うことによってフロンティアを押し広げて、客に新しい経験させる史上初の試みに、ブッシュミルズと同じくらい強い関心をもっていた。
モティ・マハルの料理長、アニ・アロラは大のウイスキーファンで、スパイスたっぷりの料理を、同店のバーにおいてある多様なスコッチウイスキーと組み合わせる夕食会を、開催したことがあった。今回アニは、ディアジオのコリン・ダン、ブッシュミルズのブランド大使のダンカン・マックラエ、組み合わせの専門家でありソムリエでもあるリチャード・ワイスとチームをつくり、5品のコースメニューを考案した。
リチャードのフードとウイスキーの組み合わせの最初の冒険的試みは、ロンドンに本店がある別のインド料理店ラ・ポルテ・デ・ザンドで行われたウイスキーディナーでのテイスティングである。ボウモアとオーヘントッシャンのモルトをスモーキーなタンドリー料理とマリアージュさせたのだ。その成功により、リチャードは是非もう一度やってみたいと思っていた。
「ウイスキーは、料理に使える微妙な違いの幅が広いので、フードとのマリアージュは複雑かつ興味深いのです」とリチャードは説明する。
「私はスピリッツのアルコール分を上手く使って料理の質感と混合させることにやりがいを感じます」
では、テイスティングチームはどのようにしてこの課題に取り組んだのだろうか? この4人組のチームがウイスキーと食物の組み合わせについて落ち着いて議論しようとしたとき、質感という概念が重要な検討対象となった。
「私たちは、味とフレーバーの特徴のマリアージュだけでなく、五感と口触りも組み合わせ、結論に至るまでに長時間のテイスティング会を2回行ないました」と、コリンが述べる。
単純明快さということが強調すべきもうひとつのテーマで、アイリッシュウイスキー、とくにブッシュミルズには、食物とウイスキーの組み合わせの初心者の関心を惹くものがたくさんあることを証明した。「一般にアイリッシュウイスキーは、どのように料理に合わせるかについて単純明快な点が共通しており、マリアージュされたフレーバーは巧みな軽い感触とシルクのような質感をもち、味を整えてくれます。そして、ソーヴィニヨン・ブラン種のブドウのように、すっきりして、爽やかであり、はっきりした特徴をともないます」と、コリンは述べる。
後半へつづく
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