「天使の分け前」試写会レポート＆試写会ご招待
ウイスキーを題材にした映画というのはそれほど多くはない。巨匠ケン・ローチが手がけたといえば、ウイスキーファンでなくとも気になるところだろう。タイトルからして気になる「天使の分け前」、一足早く観る機会をいただき、試写会に訪れた。また、BOND#1会員様を試写会にご招待。
本作品は2012年、グラスゴーを舞台に制作されている。英国労働者階級の問題を主題に扱うことの多いケン・ローチ監督、今回も主人公を失業中の若者として現在の英国の社会問題をバックグラウンドにしている。
暴力事件で裁判沙汰になった主人公のロビーは、恋人のレオニーの出産が近いことに免じて刑務所行きを免れ、社会奉仕活動をすることになった。そこで出会った指導官のハリーにウイスキーについて手ほどきを受け、自分の隠れた才能に気づいていく。今英国が直面している現実的な問題…ドラッグや暴力事件の増加、若年層の失業率の高さ（昨年末で100万人以上）などが非常にリアルで、その負の鎖を断ち切ろうとする主人公たちの姿が力強く描かれているが、これまで同監督の作品と異なるのがコメディとして笑いにも満ちていることだ。
ストーリーについては、公式サイトなどを参考にしていただければと思う。ここではウイスキーマガジン・ジャパンらしく、登場するウイスキーや蒸溜所についてお話しよう。
まずロビーが初めて口にするウイスキーはスプリングバンク32年。ロビーの息子誕生を祝ってハリーが開けたのだが、これでハリーはなかなかの通ということがわかる。
さらに蒸溜所見学に行くシーン。この蒸溜所がディーンストン蒸溜所。実際に見学に行ったことがある方は少ないのではないだろうか？フレンドリーなツアーの様子は、小さな蒸溜所見学の雰囲気を楽しめることうけあいだ。
そしてマスター・オブ・ザ・クエイクの称号をもつウイスキー世界的権威のチャーリー・マクリーンが登場する。劇中でもウイスキーの専門家としての立場でテイスティングをし、コメントを述べている。
劇中重要な役割を持つのが幻のシングルモルト「モルトミル」だ。幸いにも記者はラガヴーリン蒸溜所マネージャー、ジョージー・クロフォード氏にインタビューした際、面白いお話をうかがっていた（どんな話かは、また別の機会に…）。
モルトミル蒸溜所は、ラガヴーリン蒸溜所敷地内（現在のビジターセンターの位置）にもうひとつあった小さな蒸溜所である。生産量はラガヴーリンの1/5程度と少なく、シングルモルトとしてボトリングされたことはないため、ほぼ「モルトミル」というボトルは現存しないと言われている（現在3本あると言われているものの2本は偽物という説が一般的）。実際には樽も存在し得ないのだが、その幻の樽が見つかったという設定なのである。
オークションのシーンでは100万ポンド（約1億4千万円）以上の価格がついているが、1962年に閉鎖したこの蒸溜所のウイスキーが存在したとしたら…世界中のウイスキーファンが熱狂することは間違いないだろう。この幻のウイスキーは最初ポートエレンという設定だったそうだが、モルトミルへの変更を提案したのは前述のチャーリー・マクリーンである。モルトミルとなったことで現実味とまた逆に寓話性も高まり、この映画に一層の深みを与えている。
また、ストーリーの大詰めは、バルブレア蒸溜所が舞台。熟成庫内のひんやりした空気の中、息詰まるような白熱したオークションの模様が見られる。さらにグラスゴーからハイランドまでの道のりでは、スコティッシュバンド「ザ・プロクレイマーズ」の“I’m Gonna Be (500 Miles)”をバックに、壮大なスコットランドの景色を堪能できる。
ウイスキーファンならニヤリとするようなエピソードや、目を覆いたくなるようなシーンも出てくるが、そこはコメディ映画としてお楽しみいただきたい。
本作品中の会話はほとんどスコットランド西海岸特有のアクセントなので、現地を訪れたときのような感覚に陥ること間違いなし。ちなみに同監督作品「スウィート・シックスティーン」も同様にグラスゴー近郊のグリーノックで撮影されており、こちらはカンヌ映画祭で英語字幕がついたほどのスコティッシュアクセントで話題になった。興味のある方は合わせてご覧いただければと思う。
スコットランドの宝であるウイスキーとの出会いで人生を切り開く若者達の姿と、ふんだんに盛り込まれたユーモアで非常に見ごたえのある「天使の分け前」。
2013年4月13日（土）より銀座テアトルシネマにて公開されるので、足を運んでみてはいかがだろうか。
★本作品の配給を手がけるロングライド様のご厚意により、BOND#1会員5組10名様を試写会にご招待！★
試写日：4月2日（火）
時間：開場 18：30 開映19：00 （上映時間101分）
会場：サイエンスホール [千代田区北の丸公園2-1 地下2F]
ご希望の方は、info@drinksmedia.jpまで
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