ウイスキー用語集―AからZまで【H ・I・ J】

March 27, 2014

ウイスキー用語を説明するシリーズ、今回は”H”、”I”、”J”で始まるウイスキー用語を解説する

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もしあなたが、ウイスキーの蒸溜の話を読んでちんぷんかんぷんだとしても、それは無理もない。
ウイスキーができ上がるまでの各段階には、実にさまざまな用語が登場するため、それを理論的に順序出てろという方が、無理な話なのだ。例えば、HeadsとHigh wineというふたつの言葉がある。どちらもHで始まり、ウイスキー製造においてとても重要な言葉だ。では、論理的に順序立てて説明していこう。

混乱しないように、モルトウイスキーに限って話を進めよう。
まず原料の大麦からつくられた麦汁と酵母を混ぜ合わせ、ウォッシュバックで醗酵させる。これで酸味のある発酵液ができ上がる。このウォッシュ、日本語では醪(もろみ)と呼ばれる液体は、ウォッシュスチルと呼ばれる最初の蒸溜釜に移され、熱して蒸溜される。

このプロセスにより、アルコールと水が分離し、気体となったアルコールが再び冷却されて集められる。この液体は、ローワイン(low wines)と呼ばれることが多い。アルコール度数は20%強になる。蒸溜の際には、再溜に望ましい度数があり(概ね30%近く)、それに近づけるには前回の再溜でカットされた部分を混ぜ込むことが多い。この液体をハイワイン(high wine)という。

こうしてつくられた液体は、次にスピリットスチルと呼ばれる第2の蒸溜釜に入れられる。
この2回目の蒸溜段階で、蒸溜液は3つの成分に分けられる。
最初に発酵液を沸騰させて得られる気化したアルコールは、度数が高く、揮発性も高い。これにはおいしいとはとても言えず、切り離される部分だ。ヘッド、またはフォアショットと呼ばれている。

蒸溜にあたる者は、自分の勘を頼りにタイミングを計り、ウイスキーづくりに適している状態の液体を集め始める。この工程はカットと呼ばれ、蒸溜全工程の中間部分にあたる。つまりこの段階で得られた液体がニューポット、ニューメイクと呼ばれるウイスキーの赤ん坊だ。

スチルの中身が少なくなってくると、蒸気にはアルコールより水分の方が多くなり、蒸溜液のアルコール度数がウイスキーに適さないレベルまで下がる。この3つ目の部分もまた別に分けられる。この部分はテール、あるいはフェインツと呼ばれる。中間のカットは樽に詰めて熟成されてウイスキーとなる。ヘッド(フォアショット)とテール(フェインツ)は、また次回つくられるローワインと混ぜ合わせ、ハイワインとして次の2次蒸溜で使われる。つまりローワイン+前回の再溜のヘッドとテール=ハイワイン、というわけだ。

 

用語集―【H ・I・ J】

ヘッド(Head)‐本文参照

ハイワイン(High wines)‐本文参照

ホッグスヘッド樽(Hogshead)
ホッグスヘッド樽とは、アメリカのバーボン樽を解体し、スコットランドに輸送し、新しい側板や鏡板をつけて元の200L樽よりも大きな250L樽として作り直された樽である。
ホッグスヘッド樽は、スコットランドで最も一般的に使われている樽の種類だが、極端に大きいものや小さいものは使われていない。ラフロイグやアードモアの独特の風味をつくり出すために使われるクォーターカスクは、大きさがわずか45Lしかなく、更にそれよりも小さなものもある。その一方で、シェリーの古樽などの「バット」は500Lもの容量を持ち、フィニッシュで使われることの多い「ポートパイプ」も500Lの容量がある。また、「パンチョン」樽も同様に大きい。

未熟成酒法(Immature Spirits Act)
1915年に制定されたこの法律は、ウイスキーを販売する前に最低2年以上、熟成させることを義務付けている。これはアルコールの消費量を減らすために導入されたのだが、連続式蒸溜機を使ってグレーンウイスキーをつくる、ウイスキーの原酒製造者たちに大打撃を与えた。

トウモロコシ(Indian corn)
トウキビ(maize)としても知られている。その昔、ウイスキーの主原料であったトウモロコシは、もともとはスコットランドでグレーンウイスキーをつくるために使われていたが、今では、小麦の方が一般的に使われるようになっている。バーボンにおいては、原料の51%以上がトウモロコシでなくてはならない。アイリッシュ・ウイスキーも昔はトウモロコシを使っていたが、今ではあまり使われていない。

アイリッシュ・ポットスチル・ウイスキー(Irish Pot Still Whiskey)
発芽した大麦としない大麦の両方を使ったマッシュを使い、ポットスチルで蒸溜されたウイスキー、と定義づけることにした。例としては、グリーンスポットやレッドブレストなどが挙げられる。モルトのみを使ってつくられるアイリッシュ・ウイスキーは、これとは全く異なる飲み物であり、アイリッシュ・シングルモルト・ウイスキーと呼ばれるべきだ。この一番良い例が、ブッシュミルズである。

ジガー(Jigger)
この言葉はもともと、酒密造者を指すものだったが、今では全く使われなくなっている。ただし、一部のアメリカでは酒類を量る単位として使われており、通常は1.5オンスを指す。

【ショート・メモ】

アイルランドのわれらが兄弟に最大の敬意を込めて言うのだが、アイリッシュ・ウイスキー業界はその昔、定義や歴史という話になると「能天気なヤツ」と呼ばれてきた。問題は、使われている用語が少々紛らわしいという点だ。
例えば、ポットスチル・ウイスキーの意味をウィキペディアで調べると、連続式蒸溜機ではなくポットスチルを使って何度かに分けて製造されたウイスキーだ、と書かれている。また、通常は発芽した大麦(モルト)とし発芽していない大麦の両方を使ってつくられる、とも書いてある。さらに、これはアイリッシュ・ウイスキーにだけ見られるものだと言う。
だが、この言葉はモルトだけを使ったウイスキーのことも指す、とも書かれている。ならば、ポットスチルを使ってスコットランドで製造されたシングルモルトは、どうしてピュアポットスチル・ウイスキーとは呼ばれないのだろう?
ゆえにこの用語集では、ピュアポットスチル・ウイスキーを上記のように定義している。

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