国内最難関「マスター・オブ・ウイスキー」で10人目のマスターが合格
文:WMJ
2004年にスタートした『ウイスキーコニサー資格認定制度』は、ウイスキーに関心のある人すべてを対象にした認定制度。そのなかでも『マスター・オブ・ウイスキー認定試験』は、ウイスキーコニサー資格認定試験の最難関として知られる。一次試験の論文、二次試験の筆記試験、口頭試問、官能試験を経て認定される狭き門だ。
このたび実施された試験によって、新しくマスター・オブ・ウイスキーに認定されたのは佐藤一(さとう・はじめ)さん。アサヒビール株式会社でウイスキーアンバサダーも務めるドリンクのプロフェッショナルである。
マスター・オブ・ウイスキーの試験が実施されるのは、今回で10年目。今までに延べ50名がチャレンジしているが、合格したのは佐藤さんを含めて10名という超難関だ。アサヒビールでは、2017年度に合格した牧基親(まき・もとちか)さんに次いで2人目の資格保有者となる。佐藤さんが60代で初めての合格者ということも画期的である。
佐藤一さんは、アサヒビールの千葉や埼玉で統括支社長を務め、エノテカ株式会社東日本営業部長を経て2017年よりアサヒビールのマーケティング本部洋酒・焼酎マーケティング部に配属。その豊かな経験と知識を見込まれて、ウイスキーアンバサダーに任命された。しかし他の7名のアンバサダー(現役は2名)がすべてニッカウヰスキー出身の識者であったことから、焦りを感じて猛勉強を開始。2019年から超難関資格のマスターを目指し、一度だけのチャレンジと決めて試験に臨んだのだという。
知られざるニッカウヰスキーの歴史を論文に
提出が義務付けられる論文のテーマは、『「江別」から「余市」へ(竹鶴政孝の工場候補地変遷の思索、そして現状への提言)』。1927年、竹鶴政孝が北海道の江別に工場建設を検討した幻の計画書に着目した内容だ。「なぜそのタイミングで、なぜ江別だったのか」という疑問から、半年がかりの徹底的な調査をもとに、A4で26ページのレポートをまとめた。
2次試験対策には約1000問の問題集を自作し、参考となる情報誌の内容を熟読。テイスティングでは、ウイスキーの特徴、製造国、地域、アルコール度数、熟成年数などについて短時間での回答を求められる。その対策として、砂時計を使いながら徹底的に訓練を続けたという。
審査を担当したウイスキー文化研究所代表の土屋守氏は、次のようにコメントしている。
「一次の論文審査、そして二次の筆記、ブラインドテイスティング、口頭試問と難問の試験をすべてクリアしないとマスター・オブ・ウイスキーにはなれません。今回10人目にしてはじめて論文審査、ブラインドテイスティング、口頭試問の3つの科目で、最高ランクのA評価が出ました。改めて日ごろの精進と、その努力に敬意を表したいと思います」
見事に超難関資格を取得した佐藤さんは、次のように喜びを語ってくれた。
「イギリスの政治家スタンリー・ボールドウィンの『人間、志を立てるのに遅すぎるという事はない』という言葉を実践できました。資格取得はもちろん、60歳を過ぎても努力すれば目標を達成できると証明できて嬉しいですね」
社内では、後進のウイスキー資格取得を支援する立場でもある。「これからチャレンジする方々に、分かりやすく教えたい」と語る佐藤さん。論文執筆に向けた調査のノウハウや、ウイスキーの最新情報などについても次世代に伝え、ニッカファンをさらに増やすべく意欲を新たにしているところだ。
今後のアサヒビール主催イベントで、その深遠な知識を披露してくれることだろう。経験豊富な新しいマスター・オブ・ウイスキーの活躍にご注目。
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