ラベルを読む・5【ユーモラスなボトル 前半/全2回】
ウイスキーのラベルを読み解く連載、第5回は愉快なネーミングやイラストをテーマに取り上げる。
ウイスキーにプライベートラベルを付けることはボトリングと同じくらい古くから行われている。
それはブレンダーが様々な蒸溜所から購入したウイスキーのブレンドに自分の名前を付けたことから始まった。だから、この世にデュワーズ、ブキャナンズ、ウォーカー、シーバス、バランタインがあるわけだ。
1870年以前、ボトルのラベル付けが始まる前、名前はボトルに吹き付けられていた。このスタイルのものもまだ少し残っている。 最近では「ネイキッド・グラウス(裸のライチョウ)(WMJ註:雷鳥が浮き彫りになっていてウイスキーの色をまとっているように見えるため?)。 このテーマのおもしろい一例だ。
ちなみにこちらはWWDA(ワールド・ウイスキー・「デザイン」・アワード)2012でベスト・ボトル賞を獲得している。
アデルフィ、G&M、ダンカンテイラーなどの独立系ボトラーはラベルにそれぞれの会社名と商品名を載せる。大抵の商品名はシングルモルトの蒸溜所を表示しているが、当然ながらブレンドウイスキーでは事情は異なる。ブローカーが蒸溜所から買い上げ、限定品として、あるいはスタンダードアイテムとして、様々な顧客に販売する。
例えば、フランス、ドイツ、英国、スペイン、イタリアなどのスーパーマーケットチェーンはプライベートラベルのブレンドを数多く販売していて、その名前にはタバコや衣類の有名ブランドまでが使われている。
そう、ダンヒル・ウイスキーやバーバリー・ウイスキーが存在するのだ。この2つは驚くというよりブランドイメージが高級感を誘うが、ウイスキー業界がブランドや名前に柔軟に対応するという例にはなるだろう。
スコットランドのブレンダーも、ときには面白いラベルを好むようだ。特に愛用されている題材はネス湖の怪獣・ネッシーで、実に多くのブレンドウイスキーがその名前を使って消費者にアピールしている。
酔っぱらったネッシー①もいれば、実に豪胆にもこの有名な湖の水は「デラックス」だと宣言しているものもある②。お土産としても、ちょっと買ってみたくなるだろう。手に入らなくとも、このラベルだけでも味わってほしい。
言葉遊びやダブルミーニングもよく使われる。
次のラベルはちょっと混乱するかもしれない③。これはラムなのかウイスキーなのか?
まぁ、インナーヘブリディーズ諸島には似たような名前の島があるが、スペルが若干違う(WMJ註:島の名前はラム島(Rùm)。「 tot of rum」は「ラム酒一杯」の意味)。
ウイスキー愛好家なら誰でも「クラシック・モルト」をよく知っているだろうし、あの有名な緑色の銅製台座に並ぶ6種類のモルトを味わったこともあるだろう。
しかし、「クラシック・ブレンド」が存在することを知っている人は多くないはずだ。この場合のクラシックは「クラシック音楽」だが。 例えば、モーツァルトとリストは当時のアルコール飲料愛好家で、本物のパーティ大好き人間として知られていた。それなら、クラシックの作曲家の名前をブレンドにつけてもよかろう? そもそもウイスキーには音楽がある − 少なくとも私の考えでは。その証拠が私独自の限定版、「スプリングバンク ジャズ・エディション」と「ブルース・エディション」だ④(WMJ註:筆者ハンス・オフリンガのオリジナルボトル)。
また個人的には、ウイスキーを数杯ひっかけた後でスキーをするようなことは決して勧めないが、このブランドのブレンダーは全く良心の呵責を覚えていないようだ⑤。
これはスキーを楽しんだ後の夕食とともに、または雪山を眺めながらの夕べを楽しむために持ってゆくことをお勧めする(WMJ註:「On the piste fun」は「スキーのコースでの楽しみ」という意味)。
【後半に続く】