ブルックラディ新商品発表会 “Laddie To Go!”
アイラ島の伝説の男、ジム・マッキュワンがやってきた。しかもニューリリースを5つもひっさげて! ジムワールドに包まれた新商品発表イベントをレポート。
劇的なレミー・コアントロー社によるブルックラディ蒸溜所買収からおよそ1年。ジム・マッキュワン氏が来日し、氏による新商品のお披露目イベントが、9月10日(火)渋谷区恵比寿「TOOTH TOOTH」にて行われた。
今年8月にウイスキー業界でのキャリア50年という節目を迎えたジム氏が、ユーモアたっぷりに、大きなアクションも交えながら、自身のウイスキーづくりとブルックラディ蒸溜所について説明をする。その詳細なストーリーは、後日じっくりとご紹介するのでお楽しみに。ここでは、この日発表された5つの新商品(10月23日発売)についてレポートしよう。
最初は、「ブルックラディ スコティッシュ・バーレイ」だ。
鮮やかな「ラディ・ブルー」のボトルから注がれたこのウイスキーは、ハッとするほど華やかだ。スコットランド産の大麦を100%使用、ノンピートのいかにもブルックラディらしい軽やかなフルーティさを感じさせる。蜂蜜やシリアル、野原の草のようなフレッシュな香り。味わいは柑橘系フルーツのさわやかな甘さから、時間が経つにつれてなめらかでコクのある甘味に変わる。しかしあくまでエレガント。マルチヴィンテージならではの層を感じるバランスのとれたボトルだ。
次に登場したのは「ブルックラディ アイラ・バーレイ ロックサイド・ファーム2007」。
アイラ島で栽培・収穫された大麦のみを使用したアイラ・バーレイシリーズの第3弾。「ブルックラディ」はすべての樽の熟成を島内のロッホ・インダール海岸沿いの熟成庫で行っているので、アイラで育った麦がスピリッツとなり、アイラの空気の中で熟成したという究極のメイド・イン・アイラウイスキーだ。
香りはハーブのような清々しさとフルーティさを併せ持つ。少々若々しいアルコール感があるが、好ましい元気の良さだ。味はしっかりとした麦、あたたかいパンの香味、わずかにバターのようなオイリーさ。「スコティッシュ・バーレイ」が青いスカートを翻しながら草原でブランコに乗る少女なら、「アイラ・バーレイ」は麦わら帽子をかぶって砂浜を駆ける少年のよう。どちらも愛情たっぷりに育てられた笑顔を振りまいて、思わず頬が緩んでしまう。
そこから一転して「ブルックラディ ブラックアート1990」、23年熟成の登場だ。ブレンディングの配合はジム氏のみが知るという神秘的なこのボトルは、シリーズ4度目のリリースとなる。
レーズンなどのどっしりした香りの奥にシトラスとカーネーション。味わいはチョコレート、ブラウンシュガー、キャラメル。甘みとかすかなほろ苦さのバランス、そこへモルティなフレーバーが深みを与える。少々スパイシー。ミステリアスなタキシードとシルクハットの紳士…しかしその表情は意外に優しそうだ。
ここで別ブランドの「ポートシャーロット」に移る。こちらはピーテッドモルトを使用したいわゆるアイラらしいタイプである。ブルックラディといえばノンピートという印象が強いが、創業時隣村に存在したロッホインダール蒸溜所がつくっていたピーティなモルトへのオマージュとして、「
今回のリリースは「ポートシャーロット スコティッシュ・バーレイ」、スコットランド産の大麦を40ppmのヘビリーピーテッドに仕上げたマルチヴィンテージのボトル。
鼻を近づけるとそれまでの3点とはうって変わったスモーキーな香りに驚かされる。ピートと潮が激しく自己主張をする陰で、フローラルさとナッティな香りが顔を出す。ニートでは強い煙に覆われているが、加水をするとショウガやバニラ、麦の甘みが開き始める。働き者で誰からも好かれる、そばかすの多いお転婆なお嬢さんのような、愛すべきモルトという印象。
最後は「オクトモア 06.1 スコティッシュ・バーレイ」…世界で最もピーティなウイスキーとして名を馳せており、第6弾となるこのボトルは167ppmで5年熟成、カスクストレングス。その他を寄せつけない佇まいからしてまさに孤高の戦士、ピートモンスターだ。
香りは煙というよりもすっかり燃えきった炭、燃えさしそのもの。ピーティでスパイシー。ぴりぴりと刺激があるが、ヒースに覆われた大地のぬくもりも感じられる。味わいは黒パンの甘み、ナッツの薄皮、ジンジャーエール。アイラファンにはたまらない、海と煙のフィニッシュ。ピーティなウイスキーが何より好きという方には、限定販売ではあるが是非味わっていただきたいボトルだ。
それぞれの自慢の子どもたちを丁寧に説明するジム氏。その力強いパフォーマンスも終盤に向かい極まっていく。来場者はジム氏によってアイラの一族の戦士となり、結束を固め、戦闘前夜のごとく誓いの杯を干す。他の誰がこのようなプレゼンテーションをするだろうか? これこそマッキュワン・マジックに他ならない。
正真正銘のアイラ生まれアイラ育ちで、今や世界中で愛されているブルックラディ。1881年創業当時の設備で、時の流れが止まったように伝統の製法を守り続けている。その姿勢は変わることはないだろうが、そこで生み出されるウイスキーは絶えず進化していく…その証明のように登場したこの5つのニューリリースが来月皆さんの前に現れたら、ぜひ手に取ってお試しいただきたい。伝説の男が世に送り出したLaddies(ブルックラディの愛称でもあり、英語では若者・息子たちという意味を持つ)は、期待を裏切らないはずだ。