Lost Distilleries―ローランドの蒸溜所たち

November 14, 2012

スコットランド、ローランドの蒸溜所の盛衰、そして将来の再生の可能性
Report:ガヴィン・D・スミス

ローランド物語

今のところスコットランド最南部で操業中の蒸溜所は、ダンフリースから50マイルほど離れた南西の端に位置するブラッドノック蒸溜所だ。かつてはベル社が所有していたこの蒸溜所も、北アイルランドのビジネスマン、レイモンド・アームストロングが粘り強く蒸溜事業を2000年に復活させなければ、「失われた蒸溜所」のひとつとして取り上げられていたところだった。

しかし、幸いなことにそうはならなかった。またダンフリースから15マイルのところに位置する古いアナンデール蒸溜所が修復と再操業の初期段階にあるというニュースも伝えられ、ダンフリース・ガロウェイ地域はついに複数の蒸溜所の操業を誇ることになる見込みだ。

何年にもわたり、この地域はブラッドノックとアナンデールだけでなく、ラングホルムとその近くにあるグレン・タラスの4蒸溜所を擁していた。

4ヵ所のうちではラングホルム蒸溜所の創立が最も早く、長い歴史を持つ毛織物の街、ラングホルムのすぐ南の幹線道路と、隣接するエスク川に挟まれた場所に1765年に建設された。

ラングホルム蒸溜所1832年にアーサー・コネルが購入して以来、操業時代の大部分はコネル家が所有し、1880年代中頃にビクトリア時代の偉大な醸造・蒸溜史家アルフレッド・バーナードが訪れたときには、年間4万6,000ガロンほどのウイスキーを製造していた。

コネル家はラングホルム蒸溜所でつくられたスピリッツの多くをブレンディングに使用してマウンテン・デューという独自のブレンデッドウイスキーを製造し、シングルモルトはイングランドで小売されていた。バーナードはラングホルム蒸溜所のもうひとつの魅力に触れて、「老マネージャーの話によると、ここでは毎年ある程度の量のバーチ・ウイスキーを製造しているが、その秘伝の製法は彼の父親が教えてくれたそうだ」と述べている。残念なことに、この興味をそそられる製品についてはそれ以上の記述がない!

ラングホルム蒸溜所は1917年まで生き延びたが、戦争中で大麦が手に入りにくくなったことも一因で廃業した。施設のほとんどが1926年に取り壊され、3年後には倉庫もなくなった。用地の一部はその後、ガレージとガソリンスタンドに使われた。

ジェームズ・ケネディはアーサー・コネルのパートナーのひとりとして1832〜1835年までラングホルム蒸溜所の事業に関わり、4年後にエスク川の支流タラス川の畔、ラングホルム蒸溜所からおよそ4マイルの場所にグレン・タラス蒸溜所を建設した。

グレン・タラス蒸溜所1872年までジェームズ・ケネディが所有、操業した後、グレンタラス・ディスティラリー社によって買収された。1903年にジンの製造を専門とするロンドンの会社、シーガー・エバンス社に売却されたが、数年後には製造を停止し、1914年の第一次大戦勃発時にはすべての在庫が空になっていた。製造施設と倉庫はその後解体され、今日ではかつての蒸溜所マネージャーの家しか残っていない。アフルレッド・バーナードはグレン・タラス蒸溜所を訪れた際に「ここのウイスキーは強く豊かな風味(原文のまま)のモルトで、主にロンドンで売られている。年間生産量は7万5,000ガロンである」と記している。

アナンデール蒸溜所もグレン・タラス蒸溜所と同じく、1823年の新たな税制施行を受けてスコッチ・ウイスキーが比較的急発展した時期に設立され、1830年に操業を開始した。元収税官のジョージ・ドナルドが創設し、一家で1882年まで操業した後、ジョン・ガードナーにリースされてからは大幅な改修や設備の改変が続いた。

しかし1886〜87年ころ、アナンデール蒸溜所はキルマーノックのジョン・ウォーカー&サンズ社に買収された。買収の理由について現在の所有者、デービッド・トムソン、テレサ・チャーチ夫妻による再興プロジェクトに携わっているウイスキー・コンサルタントのジム・スワン博士は、ブレンディング用にピートの効いたモルトを製造するためだったのではないかと見ている。アルフレッド・バーナードはこの蒸溜所を見学した後、「モルトはエレベーターで製麦工程の終わりにあるキルンに持ち上げられる。キルンの床は網敷きで、ピートを燃やして加熱する」と書いている。

ウォーカー社は1919年にアナンデール蒸溜所の操業を停止したが、ここで取り上げたダンフリース・ガロウェイの他の「失われた」蒸溜所とは対照的に、アナンデール蒸溜所は建物の多くが近隣の農家によって使われ、驚くほど無傷でその後の年月を生き延びたうまく行けば、やがてこの蒸溜所は再生され、ピーテッドとアンピーテッド両方のローランド・ウイスキーを製造することになるだろう。もちろんそれは、過去ではなく将来の物語だが。

カテゴリ: Archive, 蒸溜所