タイで初めてのシングルモルト「プラカーン」が日本上陸

March 10, 2025

微笑みの国タイから、本格的なシングルモルト3種類が登場。さまざまなスタイルとフードペアリングで、未知の味わいを体験しよう。

文:WMJ

 

東南アジアで建国以来の独立を守り、誇り高い歴史を歩んできたタイ王国。陽気で穏やかな国民性から「微笑みの国」と親しまれ、その豊かな食文化は世界中のグルメたちを魅了している。

タイで初めてのシングルモルトウイスキーは、本場スコットランドの知見をベースにした本格的な味わいだ。

タイの純アルコール消費量は成人1人あたり年間約8リットルで、日本を上回る愛飲家の国である。なかでもスピリッツ類は全アルコール消費量の40%以上を占め、1位のビールに肉薄するほどの人気だ。輸入ウイスキーの消費も年々高まっており、昨年の発表では年間総額1,143億バーツ(約510億円)を売り上げている。

かねてから蒸溜酒が好まれてきたタイ王国だが、モルトウイスキーだけは国内で製造されたことがなかった。しかしそんな歴史は、もはや過去のものとなる。タイ・ビバレッジが2024年11月に発売したシングルモルトウイスキー「プラカーン」3種類は、すでに国内のスピリッツファンを魅了している。ウイスキーマガジンが主催するワールド・ウイスキー・アワードでも全銘柄が入賞し、ワールドクラスの品質を証明済みだ。

そんな注目のタイウイスキー「プラカーン」が、いよいよ日本でも発売されることになった。嬉しいことに、タイ国外では日本が最初の輸出国となる。早速その実力を確かめるため、モダンタイ料理の名店「サーワーン ビストロ」でウイスキーのテイスティングとフードペアリングに臨んだ。
 

古都の誇りと贅沢な自然環境

 

プラカーン蒸溜所は、2018年にタイ西部のカムペーンペットでスピリッツの蒸溜を開始した。カムペーンペットは、13世紀からタイ族初の王朝として栄えたスコータイ王朝の要塞都市である。バンコクとチェンマイのほぼ中間にあり、古都スコータイからは南に80kmほどだ。

古き王朝の情緒を残すカムペーンペットは、かつて南北2200メートルにも及ぶ城壁に囲まれていた。市内には数多くの遺跡や寺院が点在し、歴史公園の一帯がユネスコ世界遺産に登録されている。特に有名なのが「金剛の城壁」と呼ばれる遺跡で、「プラカーン」とはこの城壁にちなんだブランド名である。

発売された3商品はすべて度数は43%で、着色料は使用しない。熱帯らしい熟成の早さも活かし、トロピカルでエレガントな香味を生み出している。

このカムペーンペットの町は、西側が広大なメーウォン国立公園に隣接している。常緑の樹々が生い茂るジャングルは、野生の象やトラが棲む野生のサンクチュアリだ。カワセミやサイチョウなど、タイ国内でも珍しい300種以上の野鳥が生息するバードウォッチングのメッカでもある。

ジャングル周辺では、降り注いだ雨が地下深くにゆっくりと沈み込む。そして大地の巨大な貯水層によって濾過され、再び地表に現れた湧き水は年間を通して尽きることがない。この清涼な天然水こそが、ブラカーンのモルトウイスキーづくりに欠かせない要素なのだ。

プラカーン蒸溜所のDNAは、3つの「P」で説明できるという。第1のPは「産地(Provenance)」。広大な保護林を擁する国立公園と野生動物保護区は、豊富な天然水という大自然の恵みを授けてくれる。タイ西部に広がる手つかずの自然は、プラカーンの清らかな品質を土台から支えている。

また第2のPは「尊厳(Pride)」だ。所在地であるカムペーンペットは、スコータイ王朝時代から続く歴史都市。城壁に刻まれた記憶が、ここで働く人々の真摯な志を代弁する。新しいウイスキーづくりは、誇り高く洗練されたタイ文化を体現しているのだ。

そして第3のPは「情熱(Passion)」である。本場スコッチウイスキーの技術を受け継ぎながら、タイならではの創意工夫を調和させる。大自然の恵みを生かすのは、豊富な知識と情熱にあふれた人々だ。タイ唯一のシングルモルトという重責を担い、妥協なく革新的なウイスキーを完成させる。
 

タイシングルモルト3種類をテイスティング

 

プラカーンのモルト原酒づくりには、ハイランドやスペイサイドの伝統的なスタイルが踏襲されている。銅製ポットスチルをはじめとする設備は、すべてスコットランドのフォーサイス社製。発酵には65〜72時間をかけて香味要素を引き出す。アルコール度数は43%で、着色料は一切使用しない。

このような基本方針は、ワールドクラスのシングルモルトだけを製造しようという明確な意思表示だ。プラカーン蒸溜所を保有するタイ・ビバレッジは、2001年からインバーハウスを傘下に収めている。つまり本格的なスコッチウイスキーを製造してきた長年のノウハウが、プラカーンでも製造工程の隅々にまで注ぎ込まれているのだ。

ストレートはもちろん、オンザロックやハイボールでも上質な香味が解き放たれる。多彩なフードペアリングの可能性も楽しみたい。

プラカーンのウイスキーは3種類ある。なかでもハウススタイルとして位置づけられる「プラカーン セレクトカスク」は、バーボン樽で熟成したウイスキー。ナッツ、ハチミツ、レモンピールなどの香味とやわらかな甘さが特徴で、余韻の印象はトロピカルだ。フードペアリングでは、タイ料理でも多用されるココナッツやハーブの風味に樽由来のバニラ香がマッチする。

また「プラカーン ピーテッドモルト」は、ハイランド産のピーテッドモルトを原料にしたウイスキーだ。バーボン樽で熟成し、ドライなスモーク香を主張しながらフルーティな甘さと優雅にバランスをとっている。ココナッツミルクの魚介料理に合わせると、ウイスキーのキャラメル感が見事に調和していた。

ハイエンド商品の「プラカーン ダブルカスク」は、バーボン樽で熟成後にオロロソシェリー樽で追熟を加えている。グラスを傾けるとレッグが残るように、フルボディの粘度で重層感を押し出す。ダークチョコレートのような香味とパッションフルーツのような余韻が、南国のテロワールを感じさせる。シェリー樽由来のスパイス感とピーナッツソースの相性は抜群だ。

いずれのウイスキーも、ストレートでじっくりと楽しめる。度数が43%あるため、オンザロックで氷が溶けかけても飲み応えは衰えない。ハイボールやカクテルでは華やかな香味が増幅され、割り負けしないパワーもある。エキゾチックな個性を内包しながら、シーンを選ばずに楽しめる万能なウイスキーといえるだろう。

ワールド・ウイスキー・アワード2025では、3種類すべてが初出品でそれぞれ「ゴールド」(セレクトカスク)、「シルバー」(ダブルカスク)、「ブロンズ」(ピーテッドモルト)を受賞した。プラカーン蒸溜所では、現在樽3万本分の原酒が熟成中である。

スコッチの伝統を踏まえた精緻な原酒づくりに、熱帯特有の熟成環境が魔法をかける。日本市場への参入を皮切りに、プラカーンは米国、英国、フランス、ドイツなどでも順次発売が予定されている。タイで初めてのシングルモルトウイスキーは、これからも鮮やかな個性でワールドウイスキーに彩りを加えてくれるはずだ。

 


プラカーン セレクトカスク

アルコール度数:43度

容量:700ml

原産国:タイ

参考小売価格(税別):8,500円


プラカーン ピーテッドモルト

アルコール度数:43度

容量:700ml

原産国:タイ

参考小売価格(税別):9,000円


プラカーン ダブルカスク

アルコール度数:43度

容量:700ml

原産国:タイ

参考小売価格(税別):10,000円

 

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