エディンバラで人気のジョニーウォーカー体験【第2回/全3回】
文:クリスティアン・シェリー
ジョニーウォーカー・プリンセスストリート・エクスペリエンスでは、ブランドの歴史を現在に至るまで描いた物語が体験できる。それがすべてマルチメディアを駆使したパフォーマンスに昇華しているから新しい。
きらびやかなパフォーマンスが終わると、次はハイボールを実際に作る体験が待っている。飲み物を味わうだけでなく、作り手の側に回ってもらうのだ。伝統的なウイスキー愛好家の間では、いまだにハイボールを訝しがる向きもいるだろう。だがマネージングディレクターのバーバラ・スミスは、この路線の成功を確信している。
「ウイスキーはあまり飲まない友人が、このツアーを体験して感動していました。『こんなふうにウイスキーを味わうのは初めてだ』と言うんです。期待とはまったく違う体験の連続だから、ウイスキーへの先入観が改められるのでしょう」
私がツアーに参加したときも、ウイスキーが苦手だとこぼしている女性客がいた。だがツアーが終わるころには、私たちと一緒にハイボールを楽しんでいた。
ツアーの体験は、すべてがシンプルに作られている。色分けされたグラスに入ったチップをディスペンサーが読み取り、付け合わせのガーニッシュをおすすめしてくる。ノンアルコールのドリンクやドライバーズキットも用意され、誰もが楽しめるように配慮されているのだ。
ドリンク片手にツアーは進んでいく。ジョニーウォーカーのさまざまなウイスキーに使用される原酒への理解が深まってくる。スコットランドの4地域でつくられるジョニーウォーカーのキーモルトといえば、カードゥ(スペイサイド)、グレンキンチー(ローランド)、クライヌリッシュ(ハイランド)、カリラ(アイラ)だ。ウイスキーの製造法について、興味を惹き付ける形で詳細に説明してくれる。このようなウイスキー製造の解説は、これまでスコットランド内外で見た中で最高のものだった。
光と音が織りなすエンターテインメントは、次の部屋に進んでも続く。ここではさらに多くの蒸溜所やウイスキーの風味について詳しく知ることができる。専用のバースペースでカクテルを楽しむ前に、ツアーを離脱して一息入れるようなコンセプトの部屋もある。
もっとも地味なスペースではあるが、ここでガイドが重要なメッセージを伝えてくれた。「ウイスキーはあらゆる人々が楽しめるドリンクであり、どんな風に飲んでも構わない」という大前提の確認だ。そして短時間でビジターたちからのカジュアルな質問にも答えている。密度の濃いツアーはまだ続いていく。
エコとイノベーションを体現するバー
ジョニーウォーカー・プリンセスストリート・エクスペリエンスのビジターツアーは、もう終盤に差し掛かっている。このツアーで味わうウイスキーカクテルは、とにかく素晴らしい。屋上の「1820バー」でも、カクテルは本当に重要な役割を果たしている。
ヘッドバーテンダーのミラン・チャウハンは、あらゆることに目を配っているようだ。イノベーションやサステイナビリティを重視していることにもすぐ気づくだろう。チャウハンは、特にウイスキーカクテルの創意工夫で高い評価を得ている。ツアー終了後に、チームのトレーニングスペースで話を聞かせてくれた。
「この店のカクテルプログラムは、ざっくりとした季節感に合わせて推移していきます。私たちにはデザイナー的な志向があり、このバーでも漸進的革新と呼ばれるプロセスを実践しているんです。つまり毎日のように小さな微調整を試し、それを積み重ねていくことで大きなイノベーションを達成しようという心がけです」
このような試行錯誤から生まれた成果のひとつが、超音波風呂で熟成させたカクテル「超音波ボビーバーンズ」だ。試飲してみたが、確かに美味しい。そして生のフルーツの代わりに、柑橘の香水を使用したカクテルも話題だ。オレンジのガーニッシュを効かせたカクテルを作るにしても、廃棄されるオレンジをはるかに減らすことができるのだとチャウハンは言う。
「毎日オレンジを1ケース買う代わりに、1ヶ月間使えるオレンジを1ケース用意している。それくらいエコな感覚ですね」
チャウハンは、「1820バー」だけでなく「エクスプローラーズ・ボシー・バー」も統括している。シングルカスクを含む150種類以上のウイスキーが並ぶ本格的なウイスキーバーだ。ウイスキー好きなら、ゆったりとくつろげる場所であろう。
昨年から今年にかけて、チャウハンはいくつかのトレンドに気づいたのだと教えてくれた。
「カクテルを楽しむ層は、非常にオープンマインドで新しいものを試してみたがる人が多いですね。ここでウイスキーを飲む人の大半は女性なのですが、これも嬉しい傾向です」
興味深いのは、客層が若い人に偏っていることだとチャウハンは言う。特に18歳から24歳くらいの若者が多く来店しているようだ。
「かつて18歳や19歳でウイスキーバーに行ってみようと考えた人が何人いたでしょう。その年齢でカウンターに陣取り、ウイスキーの旅を始めようという意欲は素晴らしい。本当に大きな一歩だと思います」
(つづく)