伝説の男、ロニー・コックスからの贈り物
解説:ロニー・コックス
構成:WMJ
先祖は7世代前からウイスキーづくりに関わってきました。私自身もウイスキー業界で働いて40年以上になります。勤め先であるベリー・ブラザーズ&ラッド(BB&R)は、1698年に創業された英国最古のワイン・スピリッツ商。世界中でビジネスをしながら、今でも家族経営を守っています。1903年にエドワード7世より英国王室御用達を賜り、エリザベス女王とチャールズ皇太子にもご愛顧いただいてきました。女王陛下の4つの宮殿と7つの邸宅すべてにお酒を供給しているのはBB&Rの誇りです。
いつも履いている赤い靴下は、先祖へのオマージュです。戦士だった先祖は、戦いで流れた血を隠せるという理由から、キルトの下に赤いソックスを履いていました。7代前の先祖は、羊を盗んだりしてだいぶ荒っぽいことをやった男。ロバート・ブルースという男に教会で殺されましたが、そのブルースの子孫は私の友人でもあります。スコットランドでは、それくらい過去の時代が身近なのです。
ウイスキー業界でのライフワークは、ブレンデッドウイスキーのカティーサークを世界に普及させること。南米では7回ぐらい命を落としそうになりました。よくある女性がらみの揉め事です。マーガレット・サッチャーとの思い出。モザンビーク、マダガスカル、エクアドルなどの悪徳政治家との取引。ウイスキーの香りは、さまざまな思い出をよみがえらせてくれますね。
また大好きなスペイサイドのシングルモルトを本物のファンに紹介するため、業界で初めてシングルモルトウイスキーにヴィンテージの概念を取り入れたのも私のアイデアです。だから「ロニーズ・リザーヴ」にも熟成年数ではなく、蒸溜と樽詰めがおこなわれた年号が記されています。今でも「ブレンドは飲むためのお酒、シングルモルトは考えるためのお酒」であると考えています。
スコットランドのバーで、高級ウイスキーをタダ飲みする方法を知っていますか? まず店に入るなり「なにかシングルモルトはありますか?」と尋ねます。ロックグラスで出されたら、断固として拒絶し、ウイスキーグラスやコピータを所望しましょう。この時点で、店の人はあなたがエキスパートかもしれないと考えます。ウイスキーはすぐに飲まず、指を使って手の甲にすりこんで香りを確かめてください。お店の人は「やはりエキスパートだ」と確信して、あなたの言葉を待っています。そこであなたは遠くを見つめながら最後の言葉を放つのです。「ああ、あと6ヶ月だけ待てば完璧だったのに」。あなたの意見を拝聴するため、お店の人はたくさんのウイスキーを目の前に並べてくれるでしょう。
私が長年親しんできたロセス川畔の蒸溜所は、ブランドが2年前に売却されました。蒸溜所名がラベルに記載できないのはそのせいです。でも私と蒸溜所の繋がりが終わった訳ではありません。なぜならすでに蒸溜所の原酒を5000樽以上も買い取っているから。そのストックを十分に吟味し、最高の熟成感に達したウイスキーをボトリングしたのが「ロニーズ・リザーヴ」。
そのひとつひとつを一緒に味わってみましょう。
ロニーズ・リザーヴ 1995
リフィルシェリーホグスヘッドの24年熟成で、世界で210本限定。クラシックな趣きのウイスキーです。長期熟成のヴィンテージには、リフィルのシェリーのホグスヘッドが最適。ファーストフィルはスピリッツを凌駕しすぎるからです。ピペットで少し水を入れてみましょう。どんどん蒸溜所のフルーティーな特性が花開いてきますね。加水しても衰えない、しっかりとしたエステル香があります。水を少しずつ加えながら、ウイスキーと対話してみましょう。度数30%くらいにまで薄めると、柑橘系の香りが出てきます。25%ぐらいになるまで入れてもOKです。樽熟成の効果が研究されていますが、解明された要素は40%ほど。残りはミステリーですが、樽が5000本もあれば原酒の選定は難しくありません。
ロニーズ・リザーヴ 1992
リフィルホグスヘッドの27年熟成で、世界で67本限定。度数は51.5%です。このウイスキーが若い頃は、かなりの反逆児といった印象でした。アメリカンオーク材でできたリフィルのホグスヘッドだから、香水のような花とフルーツの香りが満点。バランスがとれ、複雑で、長い余韻があります。ブレンドの一部になる予定でしたが、どういう訳か貯蔵庫に生き残っていました。27年目でシングルカスク商品になったのも反逆児らしい運命だと思います。この蒸溜所では、1990年代から熟成に関する研究が進められてきました。あの頃は生産がコンピューター化されたハイテク時代の幕開け。大半がブレンデッドウイスキーの素材になっていた原酒も、90年代からシングルモルトのシェアが増えていきました。
ロニーズ・リザーヴ 1989
リフィルバーボンバレルの30年熟成で、世界で114本限定。バーボンバレルだから、ココナッツやバニラの香りが顕著です。でも樽の香りが、蒸溜所本来の特徴を凌駕することはありません。1980年代は変化の時代。蒸溜器を増設し、発酵時間も変更することで、それ以前よりもフルーティーなスタイルに変化しました。ウォッカ人気に押され、ウイスキーの生産が半減した不遇の時代もありました。ここにボトリングされた原酒は、間違いなく80年代で最も優れたカスクのひとつから得られました。当時はあまり熟成の研究も進んでおらず、94%がブレンド用。数年内での消費を前提に樽詰めされ、ここまで生き残ったのは奇跡です。木の香りと、ヌガーやビスケットの甘い味わい。いつまでも続く長い余韻を楽しんでください。
ロニーズ・リザーヴ 1979
アメリカンオーク材のリフィルシェリーカスク。40年熟成で、世界で196本限定。蒸溜所の古いスタイルを象徴するウイスキーです。70年代は頂点の時代。テクノロジーが進んで、生産量も増えました。でもコンピューター化されていないので、発酵時間がばらついていたり、一貫性がさほど厳密ではなかったり。だからウイスキーも自然の産物や、偶然の賜物といった趣きがあります。熟成年数でいえば40年。度数は49.5%もあります。通常の40年ものは43〜47%くらいなので、かなり高い部類です。もともとブレンドの一部になるはずだったのに、どういう訳かブレンダーの目を逃れてここまで来ました。年を取るのは悪いことばかりでもありません。香りを嗅いでいるだけで、ずっと楽しめるタイプのウイスキーです。
ロニーズ・リザーヴ 1975
もともとバーボンを貯蔵していたリフィルホグスヘッド。44年熟成で、世界166本限定。ここまで来れば、ウイスキーの年数はあまり関係ありません。グラスの中に入れたときの美味しさや香りが重要です。ウイスキーをこわさないように水もそっと入れて、しっかりと混ざりあってから味わいましょう。さあ、香りが落ち着いてきました。香水みたいで、ちょっと魅惑的な印象。もうひと口、もうひと口とやめられなくなる危険な魅力を備えています。フルーティーで高揚感があり、この蒸溜所の特徴である優美さがいかんなく発揮されています。樽由来のフレーバーと最高のバランスで溶け合い、甘美なハーモニーを奏でています。79年よりも柑橘風味が強く、完璧な食後の1杯になるでしょう。大切な仲間と楽しみたい銘酒です。
ロニーズ・リザーヴ 1969
リフィルホグスヘッドの50年熟成で、世界で123本限定。度数は46.7%。ボトルに書かれた「CurriculumVitae」は履歴書の意味です。つまり私の人生を物語るウイスキーといっても過言ではありません。当時の生産量は年間18000~19000樽くらい。マッカランよりも背の高いスチルを使用しているので、スペイサイドらしいフルーティーな酒質はしっかりと出ています。1969年といえば、私が大学を卒業した年。父に「片道切符だけ買ってやるから、3年間は帰ってくるな」と送り出され、ドイツと南スペインでワイン商の仕事に就きました。今ではもう当時の父親をはるかに上回る年齢です。さあ半世紀の時間を樽の中で過ごし、地球を半周してきたウイスキーを味わってください。極上のエレガンスが、たったいま長い眠りから覚めたところです。
ロニーズ・リザーヴ 1969色:ミドルアンバー |
ロニーズ・リザーヴ 1975色:ライトゴールド |
ロニーズ・リザーヴ 1979色:ミドルゴールド |
ロニーズ・リザーヴ 1989色:アンバー |
ロニーズ・リザーヴ 1992色:ミディアムゴールド |
ロニーズ・リザーヴ 1995色:ライトゴールド |
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