魅惑のボトルキャップ【前半/全2回】

July 17, 2015

ウイスキーボトルのコルク栓を開ける瞬間は、誰にとっても心躍る瞬間だろう。しかし、ウイスキーメーカーはこの栓を単なる「フタ」と考えず、様々な趣向を凝らしているのだ。

ボトルキャップは2つの全く異なる機能が一体化したものだ。
コルクは、漏れを防いでスピリッツを保護するという完全に実際的な役目を持ち、一方「ストッパー」(コルクのてっぺん)は美的にもブランドのためにもさまざまに利用できる。

「コルクの一番上になるストッパーの素材については、新製品の開発部やブランドマネージャー、マスターディスティラーと密接に連携して検討します。木製のヘッドにもできますが、この分野に革新をもたらし、ブランドや会社に合った個性的なトップやコルクにするために各種の特製材料も使います」と、ポルトガルのコルクキャップ専門会社、アモリン社の「トップ・シリーズ」部門で販売/マーケティング・ディレクターを務めるヒューゴ・メスキータは言う。

ストッパーに多様な材料が使われるようになったのは比較的最近のことだ。

「この10年で技術が大きく進歩したために、できる事が飛躍的に増えました。以前よりもはるかに細かく、より多くのアイディアをストッパーに盛り込むことができます。何かを浮き彫りにしたり、あるいは逆に彫り込んだり、マット仕上げやシルキー仕上げ、色も最大7色から選べますし、如何様にもブランドに相応しく作れます」とインバーハウス・ディスティラーズ社のパッケージング供給マネージャー ジェームズ・クリリーは言う。

さらに、モリソン・ボウモア社の調達/パッケージング開発プロジェクト・マネージャー イアン・ハミルトンによると、「ストッパーは付加価値をつけて興味をそそる手段になります。大抵はメッセージを入れますね。例えば、グレンギリー用のストッパーは蒸溜所がオープンした年、1797年を強調した木製のトップです。ストッパーはパッケージを構成する重要なディテールで、製品を際立たせるための全体的な効果に一役買っています。将来、この分野ではさらに多くの革新がりそうです」

同時に、考慮するべき実際的な側面がある。ボトルを封印したときにコルクとウイスキー表面の間にできる小さな「ヘッドスペース」だ。

「ヘッドスペースは容積15〜20 mlほどの空間ですが、この大きさが非常に重要です。気温が高い環境ではウイスキーが膨張する可能性がありますから、暑い気候の国に輸出するためにはこの余地が大切なのです」とヒューゴ・メスキータは付け加える。

だが、未開封のボトルのヘッドスペースに入っている空気が、モルトウイスキーに影響を及ぼすことはないのだろうか?

この疑問に対して、ウィリアム・グラント&サンズ社のマスターブレンダー、ブライアン・キンズマンはこう答えた。
「影響があるとは思いませんが、かと言って否定もできませんね。それを分析するための科学的な実験を設計することは非常に難しいので。
封印された古いボトルを現代の同じようなボトリングと比べることはできますが、何年もの間には生産工程にカスクの選択などの微妙な変化がいろいろとあり得ますから、それによって問題が不明確になり、ヘッドスペースの影響だけの比較ではなくなってしまうでしょう。
封印したボトルに何か変化が起こるとしたら、それはとても微妙なものですし、きわめて長い期間にわたった場合にはその可能性も考えられるでしょう。」

インバーハウス・ディスティラーズ社のマスターブレンダー、スチュアート・ハーベイによると、「何か変化があるとしても、あまりにも小さくて検出できないでしょうね。ヘッドスペースの空気による影響からウイスキーを守っている重要な要素は、高いアルコール度です。ウイスキーは概ねアルコール度数40%以上でボトリングされますから、非常に安定しています。アルコール度数が高いほど、ウイスキーは安定します

【後半に続く】

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