サントリーウイスキー角瓶の80年

September 20, 2017

今年で発売80周年を迎えるサントリーウイスキー角瓶は、今でもハイボール缶を含めて年間約490万ケース(2017年サントリー見込み)を販売するウイスキー界屈指のNo.1ブランドだ。本格的なウイスキーらしさと日本人の味覚に合った飲みやすさを、チーフブレンダーとのテイスティングで実感する。

文:WMJ

 

日本で売り上げNo.1のウイスキー銘柄は、サントリーウイスキー角瓶である。今年で80年を迎えるロングセラーが、現在もベストセラーを兼ねているのは興味深い。ブランドの歴史を振り返ると、日本のウイスキーの変遷がくっきりと見えてくる。

サントリーの創業者である鳥井信治郎は「スコッチに負けない日本のウイスキー」をつくろうと1923年に山崎蒸溜所を開設した。初めてのモルトウイスキー蒸溜所建設は、鳥井以外の取締役全員が反対したほどの冒険的な事業だったという。日本人の味覚に合ったウイスキーを追求する鳥井は、1937年10月8日にサントリーウイスキー角瓶を発売した。

今でも角瓶のシンボルである亀甲模様のボトルは、チーフデザイナーの井上木它が「日本らしさ」にこだわったデザインだ。ウイスキーのラベルをくまなく探しても「角瓶」の文字はない。ボトルの形から誰からともなくそう呼ばれはじめ、自然に定着した名称なのである。

サントリースピリッツの仙波匠社長いわく、過去80年間の歴史は順風満帆な時代ばかりではなかった。ウイスキー全般が長期にわたって低迷したとき、サントリーは角瓶を中心にしたハイボールの提案に打って出る。この方針に対しても、社内では慎重な意見が根強かったのだと仙波氏は振り返る。

「ハイボール戦略は、ウイスキーのブランド力を低下させるのではないかという懸念もありました。でも『やってみなはれ』という鳥井信治郎の精神で、ブームを巻き起こすことができたのです」

今では「ハイボール」と聞いた多くの人が角ハイボールを連想するようになり、角ハイボールを食事中に楽しむ人(食中飲用率)も約50%に達している。直近10年でウイスキー市場全体が約2倍に成長しているが、そのブームを先頭で牽引してきたのが角瓶だ。日本人の味覚に合わせた日本のウイスキーの原点であり、現在のウイスキーブームも育てた象徴的なウイスキーが角瓶なのである。

 

不易流行の味わいをテイスティングで検証

 

時代によって役割を変えながら、リファインを重ねてきたロングセラー。福與伸二チーフブレンダーは、角瓶を「不易流行のウイスキー」と定義する。

発売当時よりサントリーを象徴する銘柄だった角瓶は、「出世したら角瓶」という高度成長期のシンボルにもなった。その一方で、後発の上位ブランドが増えるなか、根強く支持され続けた経緯もある。サントリーの福與伸二チーフブレンダーが、そんな人気の理由を分析する。

「周りがオールドやローヤルにステップアップしても、角瓶に留まる人は意外なほど多くいました。いわゆる『角瓶党』のお客様です。世代を越えて支持層が広がり、いつの間にか売り上げNo.1ブランドになっていました」

トップブランドに成長し、スタンダードとして愛されるようになった角瓶が、本格的なウイスキーの味わいを崩すことはなかった。飲み飽きない理由は、風味の「引っ掛かり」にあると福與氏は説明する。ブレンダーが「フック」や「キック」と呼んでいる要素だ。

そんな角瓶の魅力をあらためて実証するため、福與氏は2種類のウイスキーを用意してくれた。ひとつは角瓶の現行品。もうひとつは、角瓶がまだ高嶺の花だった頃の味を再現した「復刻版」である。

まずは「復刻版」から味わってみる。ウイスキー特有の甘みとスモーキーな感触が本格的だ。三宅一生や井上陽水がオンザロックで飲んでいた角瓶のCMを思い出す。福與氏いわく、現在の角瓶よりもわずかに濃厚で甘みが強いのが特徴だ。

「この後味に引っかかるスモーク香が、角瓶党の心をつかんでいたのでしょうね。実は現在よりシェリー原酒の比率も少しだけ多かったのです」

続いて現在の角瓶の味も確かめてみる。本格的なウイスキーらしさはそのままに、すっきりとした切れ味が増した印象だ。

「現在は、ハイボールで冴えるキレを強調しています。それでもふんわりと残る香りが、昔ながらの角瓶党の心にも響くようにブレンドしているんです」

最後に味わったのは、「角ハイボール缶」(濃いめ)。ウイスキーの味がしっかりとした味わい深い商品だが、角瓶らしいウッディーな特徴がキレの良い後口を生み出している。

「角瓶には山崎蒸溜所や白州蒸溜所のバーボン樽原酒がバランスよく使用されており、甘く華やかな香りが印象的です。それに加えて、ドライな後口がハイボールのキレを増加させます。揚げ物などに相性抜群なのは、炭酸のウォッシュ効果で料理の味わいが引き立つからです」

時代によって役割を変えながら、繊細にリファインされてきた角瓶。不易流行のウイスキーは、これからどんな変化を遂げていくのだろうか。福與伸二チーフブレンダーが答える。

「ブレンダーになりたての25年前、チーフブレンダーだった稲富孝一がよく『角瓶は都はるみさんのような存在なんだ』と言っていました。デビュー当時と円熟期で違いがあっても、歌声を聞けば誰でも都はるみさんだとわかる。そんな角瓶の未来を自分でも楽しみにしています」

 

最新のCMや、角ハイボールのおいしいつくり方などの情報が満載されたサントリーウイスキー角瓶の公式ウェブサイトはこちらから。

 

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