ジョニーブルーのブレンド

September 25, 2013

めったにないビスポーク・ブレンディング・エクスペリエンスに挑戦する

Reportイアン・バクストン

この前丸太から飛び降りようとして、私は危うく足首を折るところだった。簡単そうに見えるし、理屈も難しくないが、優雅にやってみせるのは別の問題だ。毎日毎晩やるのはもっと難しい。何が言いたいのかというと、ウイスキーのブレンディングは丸太から飛び降りるようなものだと結論づけた。思うよりかなり難しい。

私はディアジオのチャーリー・スミスと午前中を一緒に過ごした後で、この結論に達した。ディアジオのチームのひとつが、ジョニーウォーカー・ブルーラベル・ビスポーク・ブレンド・エクスペリエンス(自分自身のブレンドを造る)という名前のついたイベントを行っていた事があった。

簡単にいえばそれは経験豊かなウイスキーの専門家が、参加者の指定した曜日と場所で会ってくれるということだ。そこで専門家はブルーラベルに含まれる希少で年代物のウイスキーの、このイベントでしか体験できないテイスティングを行う。それから向かい合い、参加者自身のブレンドをどのように造るかについて一通り話し合う。参加者がその結果に納得したなら、目の前で少量のサンプルをブレンドしてみせる。

参加者は誇らしげにそのブレンドとブルーラベルのボトルを持ち帰り、友人と分け合うのだ。テイスティング自体ではロイヤル・ロッホナガー25年、ローズバンク20年、グレンユーリー・ロイヤル36年、さらにはキャンバス蒸溜所のグレーンウイスキー18年といった珍しいものを口にできた。また機会が異なればチャーリー・スミスの立派な革かばんには、リンクウッドインバネスの今は閉鎖された蒸溜所のやや年代物のミルバーンが詰められていたかもしれない。

こんな贅沢な経験が安いはずはないとお思いだろう。その通りだ。では値段の問題を今すぐ解決してしまおう。

ジョニーウォーカー・ブルーラベル・ビスポーク・ブレンド・エクスペリエンスは3,000ポンド掛かった。ロンドンのセルフリッジと提携した1度きりの募集で、10組のみ受付可能だった。より贅沢で高価な「ウイスキー体験」の流行が広まっていることを受けた試みの一環だ。

ビスポーク・ブレンド・エクスペリエンスの大きな特徴は、ジョニーウォーカーのブレンダーたちの技術と専門的な知識、それからブルーラベルの品質により注意が向くように作られている点だ。一部の市場ではブルーラベルはある種のステータスであり、自慢したいために購入するものとなっている。ディアジオは怒ってこそいないものの、傑作が「間違った」理由で買われ、消費されることへの苛立ちは感じられる。

ではウイスキーの愛好家は高価なブレンドを飲むべきなのだろうか?

意外にもここでは経済的な問題が議論の根拠になるだろう。ブルーラベルのブレンドに含まれるすべての成分は、単独でも稀少で高い(私たちがテイスティングしたグレンユーリー・ロイヤル36年の場合、495ポンドにもなる)。実際ブルーラベルに含まれるウイスキーをシングルで出せば、愛好家は興奮するだろうし、間違いなく値が張る。

イギリスでの標準的な小売価格を160ポンド前後として、またブレンドは50%近くがグレーンと見積もれば、ブルーラベルの位置づけははっきりしてくる。超高級ウイスキーとしてはパッケージは比較的地味だが、おそらく自信の表れだろう。新興の競争相手と比べた場合、特に納得せざるを得ない。つまりパッケージに対して金を払っているという気にはさせられないし、やりすぎだという気も起きない。

高価な中身とチャーリーの辛抱強く控えめな指導にも関わらず、私は自分のブレンドに満足できなかった。4度挑戦しても、思い描いた基準に達しなかったのだ。私はリッチでほのかに甘く、まろやかで口いっぱいに広がるウイスキーが欲しかった。夜を締めくくる私の理想の一杯だ。

そこでタリスカーは比較的早く切り捨てることになった。ブレンドに5%弱しか入っていなくても味が非常に強く、消えてもらわなければならなかったのだ。リンクウッドも意外なほど主張が強く、それ自体のサンプルは非常に気に入っていても、私は毎回分量を減らす羽目になった。

最終的なブレンドはキャンバス・グレーンがベースで、リンクウッド、ローズバンク、ロイヤル・ロッホナガー、グレンユーリー・ロイヤルを上に重ねた。リッチな色合いは主にグレンユーリーから得たもので、全体の甘ったるさはおそらくロッホナガー由来のかすかなスモーキーさで中和された。ブレンドして5分間マリッジすると独自の個性が表れてきた。

事実私は満足していたが、ブルーラベルがより複雑な風味、しっかりとしたフレーバー、「大きさ」、口に広がる時の充実感を持ち、全体的により満足がいくものであることは認めざるを得なかった。もちろん使われているウイスキーの数がより多いので、マリッジは違う成果を生むだろうが、完全な質よりも飲む喜びとしての差は大きかった。

私はチャーリーが32年間ウイスキーを手がけており、自分は午前中のひと時しかブレンダーでなかったのだ、と考えて元気を出すようにした。

とりあえず私は彼にウイスキーの記事は書かないでくれといった。丸太から飛び降りて、足を引きずっているところは見たくないから。

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