クラフトジンを生産する国内メーカーも増え、本格的な盛り上がりを見せているジン・ブーム。世界の高品質なジンが一堂に会するビッグイベントが東京の秋葉原で開催された。

文:WMJ

 

数あるお酒のなかでも、洗練されたブランディングがしのぎを削るジンの世界。「ヘンドリックス」はその象徴といってもいいだろう。

会場に入るなり、芳しいハーブのアロマに包まれた。2018年7月28日(土)、東京秋葉原のアキバ・スクエア。ここ数年で特に勢いを増しているジン・ブームを受け、世界に先駆けて東京で開催されたイベントが「GIN LIVE Tokyo 2018」だ。国内外のジンを幅広く取りそろえ、各出展ブースにはさまざまなボトルが並ぶ。

かつてはお決まりのロンドンドライジンの銘柄をいくつか覚えておけばよかったジンの世界だが、時代はここ数年で大きく変わってしまった。有名メーカーだけでなく、新設の蒸溜所や地方の酒造メーカーが手がけた新しい銘柄の多さには驚くばかりだ。それぞれのつくり手が知恵を絞り、独自のボタニカルで勝負をかけている。会場に漂っているのは、そんなボタニカルが競い合う爽やかな芳香なのである。

各ブースでのテイスティングはもちろん、識者によるテイスティング付きのセミナーも大人気だ。ジンは極めて重要なカクテルベースであることから、やはりおなじみのカクテルでどのような個性が表されるのかも興味深いところ。出店されているジンを使ってスタンダードカクテルを作ってくれるブースにも人だかりができている。マティーニ、ギムレット、ジントニックといったクラシックなレシピも、ジンが変わればまったく新しい体験になるのが面白い。

 

世界最高のジンは日本にある

 

特別なジンは、マティーニをはじめとする定番のカクテルでも試してみたい。カクテルブースでは、新しいジンをベースにした約500杯のカクテルがふるまわれた。

会場の一角に特設されたスペースでは、セミナーがおこなわれている。まずはサントリーのジャパニーズクラフトジン「ROKU(六)」について、鳥井和之氏(GIN & SPIRITSシニアスペシャリスト)が解説。1936年のヘルメスジン製造開始から培った大阪工場のノウハウが、新しい時代に適合したジンの創造を後押ししているようだ。参加者は柚子蒸溜酒、桜蒸溜酒、そして製品の「ROKU(六)」をそれぞれテイスティングし、日本の香味が加わった重層的な風味を楽しんだ。

次に登場したのは、世界で一番風変わりなジン「ヘンドリックス」のグローバルブランドアンバサダーを務めるアリー・マーティン氏。スコットランドのウイスキーづくりやブレンディング技術の歴史から「ヘンドリックス」のルーツを解説し、キュウリを代表とするユニークなボタニカルへのこだわりが体感できた。

そして最後のプログラムが、日本初のジン専門蒸溜所でつくられる「季の美 京都ドライジン」。京都蒸溜所でヘッドディスティラーを務めるアレックス・デービス氏が、日英のアプローチの違いを説明する。折しも2018年度のインターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)の「コンテンポラリー」カテゴリーで最高賞「トロフィー」を受賞したばかりとあって、トークにも熱がこもる。

「つまり、いま世界で最高のジンは日本にあるということです。これは日英でジンをつくり続けてきた私にとっても大きな誇りになりました」

そんな言葉に、ジンを愛する観客からは大きな拍手が鳴り響いた。

初開催となった「GIN LIVE Tokyo 2018」の入場者は、台風接近中という悪天候にも関わらず1日で約670人。カクテルブースでは約500杯のカクテルがふるまわれ、来場者や出展企業からも非常にポジティブな意見が事務局に届いているという。ますます面白くなる新しいジンのムーブメントを今後も見守っていきたい。