ウイスキーの殿堂「ホール・オブ・フェイム」2020年度表彰者発表
ウイスキーマガジンアワードの一環として2004年にスタートし、今回で17回目を迎える「ホール・オブ・フェイム」。2020年度は台湾と英国でウイスキーの振興に尽力した2名が殿堂入りを果たした。その素晴らしい功績をプロフィールとともにご紹介。
奚大寧
(尚格酒業会長)
奚大寧が、台湾のスピリッツ業界でキャリアをスタートしたのは1989年のこと。政府による輸入蒸溜酒の専売が終了した1990年の直前である。それ以来、地元のパートナー企業とレミーコアントローの合弁会社で勤務し、この会社が1999年にマキシウム台湾となったときに奚大寧は事業部長に就任した。
当時より、奚大寧のチームは台湾で他社に先駆けてシングルモルトウイスキーの市場を育てるべく、消費者への教育普及活動に力を入れてきた。現代に至るまで、台湾におけるウイスキー市場の成長と成熟に多大な貢献をしている。21世紀初頭には台湾でザ・マッカランがシングルモルトウイスキーのトップブランドとして地位を確立したが、この背後には奚大寧による長年の尽力があった。その後、ザ・マッカランの成功に刺激される形で、たくさんのシングルモルトウイスキーブランドが台湾市場に参入している。
2004年、奚大寧は台湾で初めてブレンデッドモルトウイスキーのフェイマスグラウスを発売。この大成功により、多くのウイスキーブランドがそれぞれ独自のブレンデッドモルトウイスキーを開発して台湾市場に投入するようになった。その結果、ブレンデッドモルトウイスキーが台湾における人気ウイスキーカテゴリーとして確立されたのである。
2009年にエドリントンを引退すると、奚大寧はすぐに自身のワイン販売会社を設立。2015年にはホワイト&マッカイ傘下にあるウイスキーの販売代理業務を開始して、ウイスキー業界にカムバックした。このとき手掛けたダルモアは、台湾でも屈指の人気を誇るシングルモルトウイスキーブランドとして定着している。このような功績を認められ、2017年には名誉あるキーパー・オブ・クエイヒに任命された。
メディアや業界関係者から、稀代のトレンドセッターとして評価されている奚大寧。台湾におけるウイスキー市場の成長に情熱を燃やしてきた唯一無二の人物である。
ジョン・グレイザー
(コンパスボックス創業者兼ウイスキーメーカー)
アメリカに生まれたジョン・グレイザーは、コンパスボックスの創業者。業界ではブティックブランドとして有名なコンパスボックスのウイスキーづくりを主導してきた名ブレンダーでもある。コンパスボックスのアプローチは常に革新的であり、独創的なウイスキーづくりの喜びを感じさせてくれる。
もともとはワイン造りを志していたジョン・グレイザーだが、進路を一転して企業家を志す。まずはロンドンのジョニーウォーカーで、マーケティングディレクターを務めるようになった。
だが通常のビジネスに飽き足らなかったジョン・グレイザーは、2000年にロンドンの自宅キッチンでコンパスボックスの事業をスタート。スコッチウイスキーの楽しさをもっと多くの人々に届けたいという一心からの小さな船出だった。
だが最初からジョン・グレイザーの展望は大きく、スコットランドでもトップクラスのウイスキー会社に成長して、ウイスキー業界で通用している品質やスタイルに関する前例を書き換えたいと願っていた。
そして創業から20年のアニバーサリーを迎える今、コンパスボックスはロンドンで2箇所にブレンディングルームを保有。スコットランドでもウイスキーを熟成しながら、20人のチームが世界を股にかけて活動している。
未来を見通した先進的なアプローチで、独創性と一体感をどこまでも妥協なく実現させるジョン・グレイザー。スコッチウイスキーの世界をさらに面白くするというミッションを今でも休みなく追求している。