世界的レーサーのシャルル・ルクレールが、シーバスリーガルの新しいグローバルブランドアンバサダーに就任した。ウイスキーとF1のコラボに注目する2回シリーズ。

文:ブラッドリー・ウィアー

 

最近のウイスキー業界で急成長しているパートナーシップといえば、フォーミュラワン(F1)との提携やキャンペーンが挙げられる。例えばスコットランドのグレンモーレンジィは、今年の初夏からフォーミュラワンの公式ウイスキーに指定された。これはモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)とフォーミュラワンの長年にわたる提携の一環である。

シャルル・ルクレールは、名門フェラーリの象徴的なレーサー。なぜ彼がウイスキーブランドのグローバルアンバサダーに任命されたのだろうか。

またテネシーウイスキーのジャックダニエルは、マクラーレンとの継続的なパートナーシップを祝して2025年度の限定版ウイスキーを発売した。このウイスキーのパッケージには、マクラーレンの象徴であるパパイヤのデザインがあしらわれている。

さらには元F1レーサーのジェンソン・バトンがプロデュースしたウイスキー「コーチビルト」と、ジェンソンの古巣であるウィリアムズ・レーシングとのパートナーシップも新たに結ばれている。コラボレーションの一環として、数多くの特別限定版ウイスキーが発売される予定だ。

そしてここ数ヶ月のF1界で特に注目を集めたのは、フェラーリとシーバスリーガルのパートナーシップだ。

モータースポーツ史上で数々の成功を収めてきたフェラーリは、2024年末にシーバスリーガルが公式チームパートナーとなることを発表していた。そして人気ドライバーのシャルル・ルクレールがこのコラボに加わったことで、両ブランドの関係は新たな次元に到達している。

シーバスリーガルは、今年3月にシャルル・ルクレールをグローバルブランドアンバサダーに起用すると発表した。世界中のサーキットで、ルクレールのレースを追う膨大なサポーターがいる。その影響力はInstagramのフォロワー2030万人という数字を見れば明らかだろう。

レーサーとしての人気は、ウイスキーブランドにも大きく貢献してくれるはずだ。特に世界中の若年層がシーバスリーガルに抱くイメージを向上させる画期的な提携である。
 

シャルル・ルクレールがブランドの顔に

 
シーズン開幕戦のオーストラリアグランプリを直前に控えた3月11日には、この提携を記念してメルボルンで一夜限りの「ルクレールのピアノバー」がオープンした。彼のドキュメンタリー『ドライブ・トゥ・サバイブ』(Netflixシリーズ)をご覧になった方なら、ルクレールが独学で習得したピアノの腕前をご存じのことだろう。この夜はVIPゲストたちを招いて、音楽とカクテルでウイスキーを堪能する没入型のイベントが開催された。

グローバルマーケティングディレクターのニック・ブラックネルは、シーバスリーガルのビジョンを支える重要人物だ。シーバスリーガルをフォーミュラワンのチームに例えるなら、ブラックネルはフェラーリのチームを代表するフレデリック・バスールのような存在といえる。つまり長期的な戦略とレースごとの戦術をあらゆる側面から指揮する存在だ。

過酷なレースを戦いながら、ピアノと音楽を愛するシャルル・ルクレール。その特異な個性と巨大なファンベースが、ウイスキーブランドの認知度拡大に貢献する。

ブラックネルはスピリッツ業界で40年にわたる経験があり、ジェムソン、ビーフィータージン、ハバナクラブなどの世界的なブランドディレクターを歴任してきた。シーバスリーガルには2020年7月に入社し、これまでファッションやカルチャーの分野でさまざまなキャンペーンを手掛けている。

そして最新のトレンドとして着目しているのが、モータースポーツの世界なのだとブラックネル自身が語る。

「メルボルンでのイベントは素晴らしい幕開けとなりました。シャルル・ルクレールは、このパートナーシップに予想外のフレッシュな表現を加えてくれました。SNSがウイスキーの世界に新たな観客層を招き入れ、その体験方法を変革してくれます」

今回のコラボレーションでは、シャルル・ルクレールの強力なパーソナルブランドとSNSでの存在感が多彩なファン層との接点を生み出している。それをさらに後押しするのがブラックネルの役割だ。

「デジタルなSNSと実体験のイベントから理想的なプラットフォームを構築し、世界中の新しいオーディエンスに洗練されたドリンク体験を届けることができました」
(つづく)