冬に訪れたいモルトバー【1】「 Whisky Voice」

December 12, 2012

「酔て叩く門や師走の月の影(夏目漱石)」―― 飲む機会の増える12月だが、ときにはウイスキーを傍らに、1年を静かに振り返るモルトバーを訪れよう。酔っぱライター・江口まゆみのバー訪問シリーズ、今回はお台場「 Whisky Voice」へ。

お台場にあるサントリーのオフィスには、地下にバーがある。それがウイスキー・ヴォイスだ。サントリーのモルトウイスキーがそろうお店で、インテリアに樽材を使っていたり、真ん中に水をたたえた池があったりと、雰囲気も素敵。半個室やテーブル席中心だが、10席のカウンターもあるので、一人で行ってもじっくりとウイスキーが愉しめる。

まず一杯目は、「白州」のハイボールを。使うのは、今年5月に発売されたノンエイジの「白州」だ。ビンテージにこだわらない分、さまざまな原酒を使うことができるため、スッキリと飲みやすく仕上がっている。お値段がスタンダードな「白州12年」の半額というのも魅力のひとつだ。
「白州」のハイボール用には、薄張りの緑がかったグラスが用意されている。これがおしゃれでいかにもおいしそう。炭酸は山崎のプレミアムソーダ。山崎の天然水でつくっており、ウイスキー本来の香り・旨味を引き出せるのが特長だ。
ワンショットの「白州」にソーダを注いだら、氷を持ち上げるようにしてゆっくりと縦に一回混ぜる。炭酸を飛ばさないようにするためだ。
飲めば爽やかで軽やかでフルーティー。スモーキーさが少ない分、ウイスキー感やアルコール感も少なく、スイスイ飲めてしまう。まさに「森香るハイボール」というネーミングがぴったりである。

次に飲んだのは山崎のカスクで、ミズナラの樽を使ったモルト。北海道産ミズナラ樽で育まれた日本ならではの稀少な原酒だ。エイジングが浅いときは個性が強すぎると思われたそうだが、熟成すると伽羅や香木のようなオリエンタルなテイストが現れ、山崎の大切な構成原酒の1つになっているという。
ロックで飲んでみると、たしかにほかのウイスキーでは味わえない和風のテイストがある。この原酒が、我がジャパニーズウイスキーの個性の決め手になっているのか。いやはや、ウイスキーづくりは奥が深い。

最後に飲んだのは、「山崎18年」。このお酒は、今年のISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)という世界的な品評会において、スコッチ以外のウイスキー部門で金賞の中のナンバーワンに選ばれた。
これは薄めてはもったいないので、ストレートでいただこう。シェリー樽原酒を中心に使っているので、甘い香りとレーズンのようなフレーバーが特長。そして飲めば飲むほど、どっしりとした複雑で奥行きのある味わい。かつてこれほどの品格と風格を備えたモルトがあっただろうか。さすがに世界で最高賞をとっただけのことはある。

ちなみに今年は「白州25年」も受賞したそうだ。同じメーカーから最高賞が2つも出るのは史上初の快挙なのだとか。棚には白州のシングルモルトシリーズというものもあり、3種類を飲み比べさせてもらった。
バーボン樽のモルトはバニラの香味がたっぷりあり、シェリー樽は甘酸っぱく、ヘビリーピートはスモーキーでソルティ。それぞれ特長があって面白いが、これを混ぜ合わせておいしいウイスキーにまとめ上げる、ブレンダーの技量には驚かされる。
今回はテイスティングしたかったので何も食べなかったが、ウイスキー・ヴォイスには、豊富なお料理メニューもある。この時期にはとくに季節限定のおすすめとして秋刀魚の燻製やいぶりがっこなど、スモーキーフレーバーのウイスキーに合いそうな、和風のつまみがそろっている。次回はぜひとウイスキー片手に、おいしいつまみも味わいたいものである。

過去の江口まゆみさんの記事

バーで飲むハイボール【1】 スタア・バー・ギンザ
バーで飲むハイボール【2】 ロックフィッシュ
秋を彩るウイスキーカクテル【1】 「ST. SAWAI オリオンズ」
秋を彩るウイスキーカクテル【2】 「Bar Noble」

カテゴリ: Archive, features, TOP, バー, 最新記事