WWA2012 審査委員長コメント&ジャパニーズウイスキー評

June 4, 2012

WWA2012 審査委員長コメント&ジャパニーズウイスキー評

2012年3月22日に発表されたワールド・ウイスキー・アワード最終結果。審査委員長・ロブ・アランソンからの本年の審査を振り返ったひとことと、テイスティングコメントが届いた。もちろんこれらのテイスティングコメントはブラインド審査の際のもの。このコメントひとつひとつを紡ぎ合わせてみると、評価のポイントやウイスキーの隠れた表情までが見えてくる。世界一のウイスキーとは如何なるモノか?

審査委員長のコメント: ロブ・アランソン

価値あるスピリッツを追求することは大変喜ばしい。審査ラウンドを重ねるごとに次第にジャッジは難しくなり、最終審査に至ってはさらに困難を極めた。
第二ラウンドの際、オフィスに届いた得点表とテイスティングコメントを見て、今年エントリーしたウイスキーがとりわけ高水準であることは明確だった。昨年も良かったが、今年はさらにもう一段階レベルが上がったのだ。この「世界で最も厳しいコンペティション」において勝ち残ることは、素晴らしいバランスと個性をもつ卓越した逸品であると言って良いだろう。
サブカテゴリーの勝者たちもまた、ウイスキー業界の代表レベルだ。他のコンペティションであれば金や銀のメダルを得るだろう。WWAで「ベスト・イン・クラス」の称号を得たことはこの上なき栄誉であり、大いに誇りに思っていただきたい。
例年通り、熟練した審査員たちはブラインドテイスティングを行い、ほんのわずかな情報を頼りにテイスティングする。ひと舐めし、味わい、水を足しながら、それぞれの特徴を評価し、比較した。バランス・複雑さ・個性を評価し、また熟成年数も考慮に入れ、そのウイスキーが「いかに良いか」だけではなく、「この年数カテゴリーの中で優れているかどうか」をも熟考するのである。審査結果が、このアプローチ方法がいかに有効であるかを示しているだろう。
ブラインド方式による審査方法は価格帯の議論にも終止符を打った。審査員たちが価格を知ることなく評価する行程のなかで、高価なウイスキーが勝ち残ることには、異論を挟むことはできないのだ。
サブカテゴリー、カテゴリー、そしてファイナルにおいて受賞された全ての銘柄にお祝いを申し上げたい。今年もまた、とびきり上等なウイスキーとリキュールが審査員をうならせる年だった。
このコンペティションにおいて私の最も好きな行程は、第三ラウンドのロンドンでの業界のエキスパートたちによる審査である。テーブルに飛び交う冗談やおしゃべりはいつもの事ながら興味深い。業界や旅の話に始まり、ウイスキーを推測する鋭いコメントまで、数時間に及ぶテイスティングを費やすには有意義でなごやかな場だ。熟達した舌をもつ仲間たちによるテイスティングは常に新たな発見もある。審査員団(とりわけ我らがメイン審査員団)のウイスキーの知識の集結は、何ものにも代えがたい。
世界各地で審査に携わり、このWWAを各コンペティションの中でも最も印象深くチャレンジ精神あふれるものにして下さった皆様へ、心よりお礼を申し上げたい。
来年もお楽しみに!

 

ワールド・ウイスキー・アワード審査員

メイン審査員

ロブ・アランソン WWA審査委員長
ルーカス・ディノウィアク   「エディンバラ・ウイスキー・ブログ」
ティム・フォーブス   「ザ・ウイスキー・エクスチェンジ」
マーク・ギレスピー   ウイスキー評論家
クリス・グッドラム   「ガントレーズ・オブ・ノッティンガム」
ジョエル・ハリソン   「カスクストレングス」
ロビン・レイン   ウイスキーミュージシャン
レジス・ルメートル   ザ・レジス・ウイスキークラブ
マイケル・ロード   ダフタウン・ウイスキー・ショップ
チャールズ・マクリーン   ウイスキー評論家
ジョニー・マコーミック   ウイスキー評論家
アナベル・メイクル   ウイスキー評論家
マイク・ミラー   バー「ディライラ」
トム・モートン   ウイスキー評論家
スティーブ・ノットマン   「モン・ガブリエル」
ニール・リドリー   「カスクストレングス」
ベルンハルト・シェーファー   ウイスキー評論家
スキンダー・シン   「ザ・ウイスキー・エクスチェンジ」
ピエール・ティエボー   http://www.connosr.com/
ライザ・ワイスタック   ウイスキー評論家

ワールド・ウイスキー・アワード第三ラウンド (ロンドン)審査員

サンディープ・アロラ   「スピリチュアル・ラグジュアリー・リビング」
ジョゼフ・カシディー   ウイスキー評論家
イアン・チャン   カバラン蒸溜所
リュドヴィック・デュクロ   ウイリアム・グラント・アンド・サンズ
ベン・エレフソン   「マスター・オブ・モルト」
ティム・フォーブス  「ザ・ウイスキー・エクスチェンジ」
クリス・グッドラム   「ガントレーズ・オブ・ノッティンガム」
マリオ・グロテクレス   「ザ・ネクター」
ジョエル・ハリソン   「カスクストレングス」
ビリー・ライトン   アイリッシュディスティラーズ
ステファン・マーシャル   ジョン・デュワー&サンズ
ロッディ・マーティン   ウイスキー評論家
ジョニー・マコーミック   ウイスキー評論家
ジェイミー・ミルン  ウイリアム・グラント・アンド・サンズ
ニール・リドリー  「カスクストレングス」
スキンダー・シン   「ザ・ウイスキー・エクスチェンジ」
デイヴィッド・スチュワート   ウイリアム・グラント・アンド・サンズ
ジム・スワン   カバラン蒸溜所
チップ・テイト   バルコンズ蒸溜所
ピエール・ティエボー   http://www.connosr.com/
ジャッキー・ユー   ウイスキーソサエティ韓国

ワールドベスト・ブレンデッドモルト
竹鶴17年 ピュアモルト
テイスティングコメント

興味深い香り、ナッツ、キャンディ、ドライフルーツ、有塩バター。バランスが良く、柔らかく優しい。フルーティでスモーキー。長く、後を引くフィニッシュ。
マリオ・グロテクレス

ピートのウッディさとフルーツの非常に良いバランスを保ち、芳醇でまろやか。まさに舌へのご褒美―リッチでピーティ。複雑さに富む。
ビリー・ライトン

魅力的な香り、皮をむいたフルーツ、オレンジピールとマーマレード。まとまりが良い。ピュアでクリーン。
ジョニー・マコーミック

シトラス系を含む華やかな香り。オレンジ、マーマレード、長い余韻の後味。
デイヴィッド・スチュワート

淹れたてのウーロン茶、倉庫の床、トリュフの香り。口に含むとブラッドオレンジ、BBQステーキ、ウッドスパイス。
ジョエル・ハリソン

スピリッツ感があるがカラメルの香り、グレープフルーツ、古いピートの好ましい煙、のど飴、ブラックベリーの味わい。素晴らしいスモークとクリーミーなアプリコット。傑作!
ニール・リドリー

ドライなスモークとシロップ、少々の煤。口の中ではキリッとした素晴らしい甘味を伴う焚き火、革、オーク。コショウ、乾いた昆布、湿った土と波しぶき。
ティム・フォーブス

いきいきとして、焚き火、ピートの煙がありフルーティ。始めはなめらかで次第に口の中で薄くなる。煙、リンゴ、梨、桜、プラム。
スキンダー・シン

煙とブルーチーズを含む熟成感のある香り。並外れた味わい、ダンネージ式の熟成庫、シガーの箱、古いピート。
リュドヴィック・デュクロ

最終選考リスト
ウィームズ・ヴィンテージ・モルト社  「ザ・ハイブ」
ニッカウヰスキー株式会社  「竹鶴17年ピュアモルト」

ワールドベスト・シングルモルト
山崎25年
テイスティングコメント

絹のようになめらか、リッチでスパイシー。レーズンとデーツ(なつめやし)。オークとシェリーの甘味がうまくまとまり、あたたかく後を引くフィニッシュ。
デイヴィッド・スチュワート

コーヒー、ピート、プラム、チェリー。タバコの香り、チョコレートプラリネとエスプレッソコーヒー。
スキンダー・シン

どっしりとしたシェリー感、糖蜜、シロップのような甘味。熟成感があり、煙、ドライフルーツ、古いピート。ナッツとレーズン、かすかにゴムっぽい香り。
リュドヴィック・デュクロ

非常に深く濃密な香り、シェリー漬けのフルーツの大集合。古いオーク、かすかに家具磨きのポリッシュ。味わいはミディアムボディで、シロップ、よりはっきりしたオークとかすかにスモーク。
ティム・フォーブス

リッチ、バランスの取れたかすかなピートのシェリーのフルボディ感。優れたオークらしさ。
ビリー・ライトン

オイリーで神々しいほどのオロロソシェリーの強烈な香りが、あふれんばかりのラベンダーやムスク、華やかなアルマニャック風のドライフルーツを伴ってシナモンやナツメグなどのウッディなスパイスを運ぶ。味は香りと同様に濃厚で瑞々しくオロロソ感がある。まさにシェリーモンスター! 豊富なウッディ・スパイスとドライフルーツで素晴らしい熟成感。驚くほど深く、エレガント。
クリス・グッドラム

深遠な色、豪華なまでのアロマ(焦がした砂糖、香り付けされたハンドバッグ、アーモンドオイル)。帆布、焦がしたオレンジの皮の味、石炭煙の後味。
チャールズ・マクリーン

たくさんのフルーツの香り、わずかにワイン。最初かすかなタンニンが感じられ、それからスパイスやカラメルとともに凝縮したフルーツが爆発する。
ピエール・ティエボー

シェリーパンチが口いっぱいに広がる。スパイシー。甘く、シンプルで、とにかく美味。素晴らしい!
ベン・エレフソン

ドライフルーツ(桃、梨、リンゴ)、わずかに煙っぽさ。濃厚でカラメル・コーラとシナモンの香りを伴ってスパイシー、かすかなカンゾウとドライフルーツの桃。素晴らしいバランスの中にココナッツが感じられる。口いっぱいに広がるフィニッシュ、重厚だがカラメルとカンゾウの香りですっと終わる。
マーク・ギレスピー

焦がしたオーク。ベリー、革とコーヒー。完璧なアルコール度数でのボトリング。十分にシェリーがのっている。
ジョゼフ・カシディー

旅行用(酔い止め)のキャンディ、少し煙っぽい、シェリー、ラムレーズンのチョコレート。まるで骨董品屋が燃えたようだ!イチジク、ローヤルゼリー、ほんのりとスモーキーで芳醇かつドライ。
ジョエル・ハリソン

磨かれたアンティークの机、クリスマスプディング、カルダモンも含むさまざまな種類のスパイスなどの深くリッチな香り。木炭。非常に層が厚い。フィニッシュにはよりクリスマスプディングが強まり、大麦パン、粗挽きのコショウとかすかに唐辛子。
マイケル・ロード

最終選考リスト
カバラン蒸溜所  「ソリスト・フィノ」
山崎蒸溜所  「山崎25年」
パワーズ社  「ジョンズ・レーン・リリース」
ブッシュミルズ蒸溜所  「ブッシュミルズ21年」
スプリングバンク蒸溜所  「スプリングバンク18年」
オーヘントッシャン蒸溜所  「オーヘントッシャン1999」
スペイバーン蒸溜所  「スペイバーン25年」
グレンフィディック蒸溜所  「グレンフィディック40年」
ハイランドパーク蒸溜所  「ハイランドパーク1971 ヴィンテージ」
ボウモア蒸溜所  「モルトマンズ・セレクション」

 

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