「ハイランドパーク “ソー”」 雷神上陸
ハイランドパークはモルト好きなら誰もが知っている、スコットランド最北端の蒸溜所。しかしその最北の地で何が行われているかを詳しく知る人は少ないのではないだろうか。4月1日よりレミー コアントロー ジャパンが輸入代理店がとなり、6月には限定品をリリースして話題となった。グローバル・ブランド・アンバサダーが来日して開催されたテイスティングイベントをレポート。
9月19日銀座にて、ハイランドパークテイスティングイベントが行われた。
まず田中雅寿社長からの挨拶では、同社におけるハイランドパークへの並々ならぬ意気込みと今後の展望が語られた。
そしてグローバル・ブランド・アドヴォケイト、ダリル・ハルデイン氏による蒸溜所の紹介。ハイランドパークはスコットランド北端のオークニー諸島、カークウォールの町の高台に位置する。そこでハルデイン氏は一言加えた。「なぜこんな遠く離れた地に蒸溜所を構えたかというと…まあ、税金から逃れるには絶好だったということでしょう。」確かにうなずける話だ。
だが、それだけではない。土地環境が品質を均質化してくれる利点もハイランドパークの確固たる個性を助けている。あまりに風が強い島なので木が育たないため、オークニーのピートは木片が入らずヒースで形成されている。その結果、華やかで優しい煙になるのだそうだ。厳しい自然が逆に穏やかな味わいを生むという、幸運なパラドックスに恵まれている。そしてこの贅沢なピートが今後350年分のウイスキーをまかなえるほど、オークニー島に眠っているのだと言う。ハイランドパークは当面、味の変化の心配をせずに済みそうだ。
そこからフロアモルティングやカスクハーモナイゼーションまで、徹底した品質管理について語られる。そして12年と18年のテイスティング。この2つは熟成年数だけでなく、ファーストフィルシェリー(オロロソ)カスクを使用した割合が違う。12年では25%、18年では60%。ここからもきりっとした12年、甘やかな18年というキャラクター付けがよくわかる。
その後場所を移動して、よりオークニー島に近い環境ということで一段と気温の下がった部屋でグローバル・ブランド・アンバサダー、ジェリー・トッシュ氏が登場。「我々オーガディアン(オークニー人)は、600年ほど前にはスコットランドとは全く異なる文化を持っていました。現在でもスコットランド人が誇りに思っているバグパイプやキルト、メル・ギブソンの名演もあまり関係ありません。ハイランドパーク蒸溜所はスコットランド人にすれば『ああ、この国最北の蒸溜所だね』となりますが、ノルウェーやスウェーデンでは『わが国最南端の蒸溜所だ』と言われます。それほど我々は独特の環境にいるのです。」とオークニー島の特異性から話し始めた。
そして限定ボトル“ソー”を紹介。バイキングシップをかたどった木製フレームに守られるかのような、北欧神話の雷神「マイティ・ソー(Mighty Thor)」をイメージしたウイスキー「ハイランドパーク “ソー”」。限定品シリーズ「ヴァルハラ・コレクション」の第一弾として今年登場した。「“ソー”は豪放磊落で、“ヴァルハラ(天国・楽園)”で死者を迎えてくれる神でもあり、また空や雷の神でもあります。力強く、そして優しい一面も持ち合わせた神、彼をウイスキーにしてみました」カスクストレングスの52.1%(トッシュ氏はゴッド・ストレングスと表現した)。始めは稲妻のごとく強いアタックで口の中で戦い始めるが、シェリー樽由来のふわりとした甘味が後から訪れる。この神をウイスキーとするならば、見事に表現したと言えるだろう。
「ヴァルハラ・コレクション」は今後さらに神をイメージしたウイスキーをシリーズ化する予定。「次は何の神か予想し、その味を想像することを皆に楽しんでほしい」とトッシュ氏は言う。「たとえば女神フレイヤならば柔らかく甘い、神族の王オーディンならば支配的で男性的な味わいになるだろう、というように。」
「ハイランドパーク “ソー”」は全世界23,000本限定。各国振り分けての数量限定販売ではアメリカでは48時間、北欧では24時間で完売した。日本国内では6月に発売を開始し現在も購入可能。
アメリカのThe Spirit Journal誌でBest Spirit in the World(ウイスキーだけでなくすべてのスピリッツの中で世界一)を複数回受賞し殿堂入りするなど、シングルモルトとしては折り紙つきの味わいを誇るハイランドパークだが、近年この“ソー”だけでなく非常に優れたデザインのボトルを発表し、「ハイランドパーク50年」はワールド・ウイスキー・デザイン・アワードでも世界一に輝いている。蒸溜所の個性、コンセプト、ボトル外観も突出したこの“ソー”を、あなたのコレクションの1つに加えてみてはいかがだろうか。オークニーの歴史に思いを馳せながら、秋の夜長を楽しむことができるだろう。
■ 商品概要
<商品名>ハイランドパーク “ソー”(Highland Park Thor)
<アルコール度数/容量/本体価格>
※数量限定/木製ケース付 52.1度 / 700ml / 16,000円