ウイスキー用語集―AからZまで【S②】

September 15, 2014

ウイスキー用語集「S」についての後半は、「スチル」。ウイスキーづくりの最も重要な工程を司るこの銅製の釜について、改めてご紹介しよう。

ウイスキー用語集―AからZまで【S①】

ウイスキーづくりのメッカであるグレンロセスの街では、スピリットスチルはカセドラル(大聖堂)のようなものとして知られている。
一部の人々は、「ギャラリー」だと主張している。しかし、どの言葉を使って表現しようとも、スチルルームは、ウイスキーづくり工程の中心であり、モルトづくりの魔法が最も顕在化する場所である。

熟成倉庫のアロマは素晴らしく、ウォッシュバックの発酵もドラマティックであるが、銅製のポットスチルが輝き誇って聳え立つ美しくも魅力的な光景に匹敵する場所は蒸溜所のどこにもない。

粉砕、マッシュ、発酵の過程は、ウイスキーづくりの職人技がものを言う。また、熟成倉庫では魔法が起こる。しかし、職人技と実際の技術と魔法とが一体となり、各蒸溜所の独特な特性が最もはっきりと決定付けられるのは、スチルルームにおいてであり、とりわけ、スピリットスチルを通じてである。

蒸溜とは、アルコールを水から分離させる工程である。通常、スコットランドではこの工程は2回繰り返される。1回目の蒸溜の後、ローワインと呼ばれる液体のアルコール度数は20度台前半である。このローワインは、前の蒸溜で使用されなかった部分と混ぜられる。

2回目の蒸溜中には、望ましくない香りと高い揮発性をもつアルコールを捨てなければならない。したがって、フォアショット、あるいはヘッドと呼ばれる蒸溜液の最初の部分は、先ほど述べたとおりローワインに混ぜて再利用される。

スチルマンの技術は、フレーバーを犠牲にすることなく捨てるべき部分を決めることである。なぜなら、高い度数のアルコールとコンジーナーはフレーバーも多いからだ。スチルマンはこの工程のある箇所でスピリッツを取り込み、「ウイスキーとして使用する部分」の決定を下す。これは「カット」と呼ばれ、最も重要な工程である。

取り込まれる量が増えると、アルコール度数は低くなる。最終的に、スピリッツは弱くなったりいやなフレーバーをもつまでに至る。これがテイルフェインツ、あるいは、アフターショットであり、これらもまた再利用される。

どの蒸溜所でも、ふたつのスチルはサイズと形が異なることが多い。
スピリッツはそれぞれのスチルでやや異なった方法で、銅と接触し、コンデンサーに通じるラインアームを通過する。この工程の速さもさまざまで、カットの長さも同様である。スチルに満たされる液体の量も蒸溜所ごとに一様ではない。これらの少しずつの違いとその微妙さが、最終的なニューメイクスピリッツに影響を与える。

たしかに、高級なオークは優れたスピリッツを偉大なものにするとよく言われるが、高級なオークでも粗悪なスピリッツを偉大にすることはできない
だからこそ、熱心なウイスキー愛好家はスチルを眺めるのに飽きることはなく、この「蒸溜」という過程について興味をかき立てられ続ける。そしてスチルを目の当たりにしたとき、その中で起こっていることについて「もう知り尽くした」と思うことは決してないのである。

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