ウイスキークッキング・3 【帆立のソテー】
ウイスキーとフードの相性やウイスキーを使った料理を探る連載、第3回。今回は一風変わった料理教室に参加、帆立とグレンフィディックの合わせ方をご紹介しよう。
数ヶ月前、スコットランドの料理学校について調べるためにネットサーフィンをしていた私は、「エディンバラ・スクール・オブ・フード&ワイン」のサイトに目を留めた。選りすぐりの美味しそうなテーマが並ぶカリキュラムの中に、「グレンフィディックグルメ料理教室」という1日クラスがあったのだ。さらに驚いたことに、「男性向け」と書かれていた。私が「ゴルフ(WMJ註:GOLF=Gentlemen Only Ladies Forbiddenの頭文字/男性限定、女性お断り)」と呼んでいる、あれだ。
ウイスキーのテイスティング付きの男性限定料理教室。近所のスーパーが特別販売品に使う宣伝文句ではないが、「これはたまらない」。
行ってみなければ…結果、教室の取材は歓迎されたが、エプロンは支給できないとはっきり言われた。構いません、ペンとノートとカメラを持っていきます、と私は言った。
到着すると、「女性差別と取らないでください」とシェフのスティーヴ・ブラウンが弁解した。
「女性限定のシャンパンと料理の教室もありますし、もちろん他のクラスは全て男女混合です。ただ、どちらかに限定すると違った雰囲気になるものですから」
男性16人の集まりに紹介されて最初は気後れした。
しかし、彼らは2時間半で3品の料理を用意した後、それを楽しむという課題に真面目に取り組まなければならなかったので、私の存在は間もなく忘れ去られた。 全員がフライパンや包丁を手にするのが待ちきれないようだった。その午後にはマレーフィールドスタジアムでスコットランド対ウェールズの試合が行われていたと言えば、彼らがどれほど熱心だったかお分かりいただけるだろう!
まずシェフが、流れるような手さばきで作り方を示し、次いで男性陣が二人一組になって実際に料理。他に二人のシェフがいて、必要とあれば手を貸していた。 彼ら一日シェフたちは実に意欲的に取り組み、様々な挑戦にもひるむことはなかった。グレンフィディックを味わうのが待ちきれなかったのだろう。
「このクラスはグレンフィディックとの長い信頼関係の成果です」とスティーヴシェフが言う。「同蒸溜所のマネージャー、またはアンバサダーが選んだラインナップをテイスティングする1時間、それがクライマックスですね」
そんなおまけが付いているから、この「男性向けグレンフィディック料理クラス」は誕生日プレゼントとしても有名なのだそうだ。メニュー自体が素晴らしいプレゼントになっている。
メニュー
スコットランド産ホタテ貝のソテー
~セルリアックピューレ、ブドウ、アーモンド、バジルオイル添え
鴨胸肉のロースト、粒マスタード入りマッシュポテトとフェンネルの飴色炒め添え
ルバーブとショウガのパンナコッタ
なかなか難しいが、コツを教えてもらえるしシェフの素晴らしいお手本があるので作りやすい。
さらに、それぞれの料理がグレンフィディックにぴったりの風味を取り合わせている。実に美味しそうだ。
しかし、料理とウイスキーは完全に分けられていて、一緒に味わうのではないと知って少しがっかりした。それでも、思いついたペアリングをどうしてもすぐに彼らに伝えたかった。
スターターは果物と貝を根菜のセルリアックと組み合わせていて、ウイスキーと完璧に合う。食感の組み合わせも重要な役割を果たし、ピューレの滑らかさとカリッとしたアーモンドの食感、そしてブドウのジューシーさが口中に広がる。カラフルで爽やかで美味しい。生のバジルの葉と菜種油でバジルオイルを作ることは、大半の一日シェフにとって新鮮な発見だったようだ。ある男性は「私は料理が大好きで、家ではほとんど私が料理しますから、新しいアイディアが得られてとても嬉しい」と言っていた。
鴨の調理法がこの日のハイライトだった。スティーヴは、「肉が肉汁を保った柔らかいままでいるように、調理後にねかせる時間を取ることが大切」と有益なアドバイスをしていた。
飴色になるまでバターと蜂蜜でゆっくり炒めたフェンネルは素晴らしかった。
タルトと甘い風味を組み合わせたルバーブ・パンナコッタは爽やかで、とてもシンプルなプディングだった。
ペアリングの提案? 私の意見だけれど、今日の料理にはこちらがぴったり。
ホタテ貝には甘くフルーティでバニラ香があり、クリーミーな質感のグレンフィディック ソレラリザーブ15年を少し冷やして。
鴨には、独特のオークっぽさ、それに樹脂とスパイスの香りのグレンフィディック 18年。
パンナ・コッタには、軽く、明瞭でフルーティなグレンフィディック 12 年(少し冷やして、または生のショウガのスライスを添えて出してもよい)。
レシピを手に、家でも作ってみようという固い決意を胸に抱えて帰っていった男性陣の顔に、大きな笑みが広がっているのを見て実に良い気分だった。
その中のひとりから「記事が出たら教えてください」と言われた。「妻は私が一日中グレンフィディックを飲んでいると思っているんです。ちゃんと料理しているところを見せなくては!」
あなたも「グレンフィディックグルメ料理教室」の16人に加わりたい? 大丈夫、そのレシピをこっそりここでお教えしましょう。
「ホタテ貝のソテー
~セルリアックピューレ、ブドウ、アーモンド、バジルオイル」レシピ<6人前>
材料:
・帆立 18個
・セルリアック(根セロリ) 1個
・牛乳 450ml
・バター 50g
・バジル 1束
・菜種油 大さじ3
・白ブドウ 36粒
・乾煎りしたアーモンドフレーク 大さじ3
・クレソン 数枚
・レモン 1個半
・塩、胡椒 少々
手順
①セルリアックピューレを作る。
皮をむいて刻んだセルリアックを、バターを落として温めた鍋に入れ、塩・胡椒を加えて弱火で炒める。
火が通ったら牛乳を加え、 柔らかくなるまで煮る。
②セルリアックをブレンダー(ミキサー)に入れ、鍋の中の牛乳を少量ずつ加えてブレンダーにかける。完全にピューレ状になったら味をみて、必要であれば塩・胡椒を加える。
③ブドウを4等分にカットし、軽く菜種油と混ぜ合わせておく。
④バジルオイルを作る。
小鍋にバジルと、ひたひたになる量の油を注ぎ入れ、弱火にかける。焦げないように常に混ぜ、細かい泡が止まったら火を止める。粗熱が取れたら布で濾す。
⑤帆立に塩・胡椒をし、薄く菜種油をひいて熱したフライパンで、片面を30秒、裏返して20~30秒焼く。火から下ろしたら、レモンジュースを絞りかける。
⑥皿に⑤を盛り付け、ピューレ、ブドウ、バジルオイル、アーモンドとクレソンを盛る。