ローランドを往く【前半/全2回】
スコットランドのウイスキー生産地として知られながら、他地域に比べ話題にのぼることが少ないローランド。蒸溜所の紹介とともに、この地域のウイスキー関連の見どころを紹介する。
シングルモルトウイスキーの「ローランド」という分類には、スコットランドを西のクライド湾と東のテイ湾を結ぶ理論上の「ハイランド・ライン」で区切った南側の蒸溜所が含まれる。
スタイルの点では、従来からローランドモルトはかなり繊細なつくりと見なされ、軽くてあまり特徴がなく、ハイランドやアイランドのウイスキーのような個性がないと片付けられることが多かった。
近年では、この分類も次第に意味をなさなくなっていた。リンリスゴーのセント・マグダレンが1983年に閉鎖され、10年後にはローズバンク、リトルミル、ブラドノックと続いた。
その結果、ローランド地域で操業中の蒸溜所がグラスゴー近くのオーヘントッシャンとエディンバラの南にあるグレンキンチー の2ヵ所しかなくなった。ローランドはその個性同様、「物静かな」ウイスキー産地となっていた。
しかし、スコットランド南西部ウィグタウン近くのブラドノックが2000年に再稼働し、2005年後期にはファイフにダフトミルがオープンして状況は若干良くなった。
もっとも、これを書いている時点で、ブラドノックは再び生産中止しており、ウィグタウンシャーのこの古い蒸溜所の運命は目下、不透明な状態だ。
それでも、モルトウイスキー生産地域としてローランドが返り咲きつつあることは確かだ。驚くことに、現在ローランドで稼働可能な7ヵ所のモルト蒸溜所のうち2005年以前のものはオーヘントッシャンとグレンキンチーのみで、さらに幾つかのローランドの蒸溜プロジェクトが進行中なのだ。
グレンキンチー蒸溜所は「グレンキンチー 12年」と「同 ディスティラーズ・エディション14年」で知られ、エディンバラの南東25 kmほどの豊かな農地に位置している。1825年に設立され、1世紀後には旧ディスティラーズ・カンパニー帝国の一部になった。1組のスチルを使うグレンキンチーは、1986年に最初の「クラシックモルト」ラインナップでローランド代表に選ばれた。
グレンキンチーでは以前にモルティングに使われていた建物を1969年から博物館にしているため、熱心なビジターにとってスコットランドの多くの蒸溜所より見るところが多い。現在は正式な「モルトウイスキー博物館(Museum of Malt Whisky Production)」として、 1924年の大英帝国博覧会のために作られたミニチュア蒸溜所を始め、興味をそそるさまざまな蒸溜装置や記念品が収容されている。
イースト・ロージアンに行ったら、風光明媚な浜辺の町、ノース・バーウィックを訪れるか、その辺りに多いゴルフコースで1ラウンドプレイしてみてもいいだろう。イースト・フォーチュンの国立航空博物館ではコンコルドを見ることもできる!
当然ながら、エディンバラ訪問は欠かせない。スコットランドの首都であるとともに、スコットランド議会の所在地であり、グラスゴーに次いで2番目に大きな町だ。
見事な自然環境と多くの歴史的な建物があることから、ヨーロッパでも屈指の魅力的な町と広く見なされているエディンバラ地域は、1995年にユネスコ世界遺産に登録された。海外から毎年およそ100万人が訪れるエディンバラは、英国ではロンドンに次いで最も観光客が多い町だ。
ウイスキー愛好家にとって、一般公開されていないがグレーンウイスキーで有名なノースブリティッシュ蒸溜所は言うまでもなく、エディンバラには専門店やバーが数多くある。
必見のひとつがエディンバラ城に近いキャッスルヒルにある「ザ・スコッチ・ウイスキー・エクスペリエンス」だ。この施設はウイスキー初心者にスコットランドの国民的飲み物について完璧に手ほどきしてくれるところで、蒸溜所訪問の下準備にも、復習にも最適だ。
コアな愛好家向けにも多くの情報や楽しみがあり、販売コーナーやバー/レストランも充実している。
【後半に続く】