開発担当ブレンダーに聞く
新時代の定番「ブラックニッカ ディープブレンド」の魅力
(後半/全2回)

October 27, 2015

「濃厚なブラックニッカ」を開発せよ。研ぎすました官能評価を軸に、まったく新しいウイスキーへの冒険が始まった。大胆な登用、地道なマーケティング、イマジネーション豊かな試行錯誤から生まれたブレンドに、ジャパニーズウイスキーの未来が見える。

文:WMJ

【←前半】

ブレンダーに着任して半年が過ぎた、2014年夏のある日。二瓶晋ブレンダーは、新商品「ブラックニッカ ディープブレンド」の開発担当に任命された。実務経験1年未満のブレンダーとしては異例の大役といえる。

「濃厚な味わいのブラックニッカをつくってほしい、というのがマーケッターからのリクエストでした。まずは既存商品の味を踏まえた上で、自分なりに濃いウイスキーとはどんなウイスキーなのかをイメージします。ブレンダー室で先輩と相談しながらブレンドを組み立て、マーケッターに提案して互いのイメージをすり合わせました。当然のように、イメージは簡単に一致しません。難しい要求もいただきました」

マーケッターを交えて、ウイスキーの「濃厚さ」が何を意味するのか徹底的に議論した。そのひとつの解答が「樽の濃厚さ」。突き詰めると「新樽の良さを表現したウイスキー」というイメージが浮上してきた。

「新樽熟成の原酒をキーモルトにする方向性は決まりました。でも『濃厚さ』の要素はそれだけではありません。グレーン原酒も熟成感が豊かなものを採用し、モルト原酒も味わいがしっかりしているものを選び、ヘビーピートタイプもアクセントとして入れることにしました」

マーケッターは、試飲を通じた実地の消費者調査によって正確なニーズを探ろうとしている。そのような調査で得られた消費者からのフィードバックを、マーケッターが咀嚼してブレンダーに返す。調査の現場には、二瓶氏も同行した。

「お客様の意見を参考に、最高のブレンドを目指した」と語る二瓶晋ブレンダー。この濃厚さは、ブレンデッドウイスキーの新しい定番となるだろう。

「お客様にお話をうかがいながら、何を美味しいと思ってくれているのか、何が足りないのかを聞き取りました。ネガティブなコメントからは、不要な部分が見えてきたりもします。自分が美味しいと思っている要素と、お客様の評価が一致しているのかを何度も検証しました」

使える原酒すべてを駆使して、試行錯誤は繰り返された。その全工程が全力投球であったと二瓶氏は振り返る。

「自分の中で納得できない部分が少しでもあったら、お客様に試飲していただくわけにはいきません。その時点でベストのブレンドを何度も提案しました。商品として世に出たブレンドが、最終的な答えです。発売前に、あるイベントで試飲されたお客様とお話しして、自分の判断が間違っていなかったとわかりホッとしました」
 

濃厚な深みを自由に味わう

原酒の構成をイメージしてブレンドをつくるのは、ちょうど料理のようなものだと二瓶氏は語る。某大手航空会社の機内誌に自前の弁当が紹介されるなど、社内でもその料理の腕は有名だ。現在も既存商品の処方を維持管理しながら、さまざまなタイプのウイスキーと向き合っている。そんな二瓶氏にとって、「ブラックニッカ ディープブレンド」の開発は、モルトウイスキーとは異なった難しさもあったのだという。

「ディープブレンドの開発には、モルトだけのブレンドより難しい側面もありました。ブレンデッドウイスキーは一般的に飲み口を軽めにしているため、ほんのわずかな微調整で大きな違いが生まれます。しかも今回は濃厚な風味を目指したので、余計にその調整には慎重さが求められました」

実際に味わってみると、明確な主張を持ったウイスキーであることがわかる。イベントで試飲したウイスキーファンが「5,000円くらいの商品ではないのか」と尋ねたくらいに、濃密な風味とふくよかな余韻があるのだ。

「個人的には、いつもオンザロックで飲んでいます。樽の甘さや柔らかさが感じられ、時間の経過とともに風味の変化が楽しめるので。ヘビーピートのアクセントがあるので、ハイボールの味も本格的です。度数が高くしっかりとした味わいなので、水割りやストレートなど、どんな飲み方にもマッチします」

営業マンではないが、実験室に閉じこもるタイプでもないと自己分析する二瓶氏。消費者とのつながりが感じられる職場で働きたいという希望にも、ブレンダーはぴったりの職種である。新しいプロジェクトもすでに始動しており、リーダーとしての新製品開発もこれから増えていくことだろう。ブレンダー人生は、まだ始まったばかりだ。

「できれば最低5年間は、ブレンダーとして新しい課題に挑戦し続けたいと思っています。ウイスキーにはさまざまな味わいがあり、お客様の好みもさまざま。ブレンダー個人の考えと、市場の要請にもギャップがあります。経験を積んでいくなかで、お客様が求めている味にマッチするようなウイスキーをつくれる感性を持つことが当面の目標です」

新樽熟成の原酒から立ち上がるウッディな香り。本格的な深みを感じさせる濃密な味わい。心地よく続くピートと樽の余韻。若きブレンダーの情熱が試行錯誤の末につくり上げた快作は、日本のウイスキーの未来へと続いている。
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