「THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳」発売

August 6, 2014

休止から19年、ついに本坊酒造の信州マルス蒸溜所からニューリリースが発表された。

昨年開催された世界的ウイスキーのコンペティション「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)2013」の結果発表において、世界のウイスキーファンに衝撃が走った。彗星の如く現れたジャパニーズウイスキー「マルス モルテージ3+25」が、世界最高賞「ワールドベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」を獲得したのだ。

だが信州マルス蒸溜所を擁する本坊酒造株式会社のこれまでの道のりは、決して平易ではなかった。
本社を九州・鹿児島に置きながらウイスキーづくりの理想の地を求め、1960年に山梨工場の建設に着手。しかしワイン造りに注力するため71年には蒸溜を休止した。
その後鹿児島で少量ながら生産をしていたが、信州(長野県)へ蒸溜所を新設し1985年より再びウイスキーづくりを本格化した。ところが酒税法の改正、ウイスキー級別廃止に伴い、国内のウイスキーの消費量は激減。ウイスキー受難の時代が到来し、92年には操業休止を余儀なくされた。
その後も熟成中の原酒を使用してのウイスキー販売は継続しており、新たなウイスキーブームの訪れと需要回復の流れに、機は熟したと2010年に修復を開始し、2011年に操業再開。このとき、本誌編集長デイヴ・ブルームがマルス蒸溜所を訪れている

それから3年。ついにスピリッツはウイスキーへと姿を変え、我々の前にお披露目されるときがやってきたのである。

7月29日に行われた本坊酒造株式会社「THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳」の発表会は、活気に満ちていた。期待に沸く出席者だけでなく、蒸溜所関係者が皆ついに迎えたこの日を心から喜んでいる様子が伝わってきた。

発表会では、まず前述のような本坊酒造のウイスキーづくりの歴史が紹介された。この歩みの中で重要な人物、岩井 喜一郎氏を改めてご紹介しよう。
日本ウイスキーの父として知られる竹鶴 政孝氏がスコットランドへ渡ったのは、摂津酒造在籍時のこと。この時竹鶴氏の上司として、帰国後最初に「竹鶴ノート」を受け取ったのが岩井氏である。岩井氏はその後本坊酒造の顧問に就任し、蒸溜所を建設する際にポットスチルの設計に携わっている。
そのため、本坊酒造ではこの岩井氏の功績に感謝と敬意を込め、岩井氏の名を冠したブレンデッドウイスキー「岩井トラディション」をリリースしている。

今後はブレンデッドのラインナップに加え、モルトウイスキーも多様なシリーズを企画。主力商品であり今回発売となる「駒ヶ岳」ブランドに加え、本坊家のルーツでもある鹿児島県南さつま市 津貫の石蔵で熟成させた「津貫エイジング」シリーズ、鹿児島のアイランズのエッセンスが期待される、屋久島で熟成させた「屋久島エイジング」シリーズ、さらに世界のウイスキーをブレンドした「ワールドモルト・ブレンデッド」シリーズなど、独創的なシリーズの構想も明らかになった。

さらに「駒ヶ岳」ブランドについては、1985年~92年蒸溜の原酒を使用した「オールドエイジ」、2011年からの蒸溜所再開後の原酒を熟成年に沿って展開する「スタンダード」、オールドエイジ原酒とスタンダード原酒をヴァッティングし、信州の豊かな自然をモチーフにした「信州の自然」シリーズなど、幅広いラインナップを企画している。

続いて、本年11月に蒸溜所の新規設備投資を行うという計画も発表された。
昨年のラック式貯蔵庫増設に続き、ポットスチルが更新される。スチルは設計・稼働から半世紀以上が経過しているため、新たに入れ替えを行うとのこと。しかし同規格のもので(※スチーム式からパーコレーター式に変更)、岩井氏の設計した現在のスチルを継承する形だ。

そしてテイスティング…用意されていたのはウイスキーのマザーウォーターである軟水の水、今年蒸溜されたライトピーテッドのニューポット、8月6日に発売となる「THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳」だ。

マザーウォーターは硬度20~40度の軟水。霊峰駒ヶ岳で磨かれた水は柔らかく、かすかに甘みを感じる。確かにこの水で仕込んだら、麦も酵母も十分に才能を発揮できそうだ。

ニューポットはまず穀物香が立ちあがり、かすかに灰っぽい。スチルから流れ落ちたばかりというミネラル感がある。味わってみるとスイートポテトのような甘さ、麦の殻、オートミール、ゆでたトウモロコシ。3.5ppmの軽いピートではあるが、麦を包み込む煙を確かに感じることができる。

「THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳」は、キャラメルと消毒液、梨のコンポート、木蓮などの樹木系の花が香る。奥に蜂蜜。舌に乗せてみると麦の甘み、バニラ、メロン、モンブランの栗のペースト、少々ナツメグ。フェノール値は8ppm。度数は58%、熟成年数3年と聞くと荒さやアタックの強さを想像してしまうが、思った以上にこなれた印象を受ける。伸びやかで素直な、生き生きとしたウイスキーだ。
「モルテージ3+25」で世界一を受賞した後だけに、再開後のウイスキーを世に出すのは非常にプレッシャーを感じたと蒸溜所長 竹平 孝輝氏は語る。

「THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳」は200Lのバーボン樽25樽をヴァッティングし6,000本をリリース。一部は海外へ輸出されるとのことで、世界のウイスキーファンを喜ばせてくれるだろう。

見事な復活を果たした信州マルス蒸溜所。今後には更なる期待がかかるが、まずはじっくりこのボトルを…新生マルスの第一歩の力強さをご堪能いただけることと思う。

商品詳細

商品名:THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳
アルコール分:58%
容量:700ml
希望小売価格(税別):10,000円
発売日:8月6日(水)出荷開始

 

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