喜びの架け橋 ― 蜂蜜の秘めた力

September 11, 2013

マルティーヌ・ヌエが蜂蜜とウイスキーの関係を探る

ウイスキーとフードのマリアージュを説明する場合、どのような結びつきを求めているにせよ、私はそのフードとウイスキーをつなぐ「架け橋(つなぎ役)を見つけることの重要性について必ず話す。それは「補完」や「融合」と同じように「対立」も必要なものだ。

今回取り上げたい「架け橋」は蜂蜜 ― ありふれているのにいつまでも神秘的なところを宿した食品だ。滋味に富むさまざま蜂蜜は、料理に驚くほど幅広い風味をもたらす。
私は蜂蜜の達人ではない、いや、達人ではなかった。用途と言えば、喉が痛いときに薬のように呑み込むくらいだ。しかし料理に使うことは好きで、ソースやプディングを甘くしたい場合は、砂糖や他のシロップより蜂蜜を好む。

蜂蜜はシングルモルトのテイスティングコメントに頻繁に現れる用語のひとつで、「ピュアな蜂蜜、蜂蜜シロップで煮た果物、蜂蜜カラメルがけシリアル…」などと書かれることが多い。どのような書き方にせよ、蜂蜜であることに変わりはない。
例えて言うなら、スペイサイドは「ウイスキーと蜂蜜の地」と言えるだろう。あるいは、「蜂蜜を加えたウイスキー」と言うべきか。スペイサイド産モルトの多くが甘くモルティな中核を持ち、それが特有のフルーティさと混じり合って蜂蜜を思わせる性質をもたらしている。

さてその蜂蜜を使った料理だが、どの種類を使うべきか
かつては、材料にシングルモルトを含むレシピを作るときも、そしてマリアージュを考えるときも、私は蜂蜜の種類にはこだわらなかった。味より質感の方に注意を向けていたのだ。濃厚な蜂蜜より混ぜやすい、軟らかい蜂蜜であればよかった。
ここで、以前私はそこそこの価格の液体蜂蜜を買っていたことを告白しなければならない。ラベルにはだいたい「アカシア蜂蜜」と書かれていた。まろやかな味で、完璧な質感。私はずっとそれで満足していた。
しかしその後、スコットランドでヒースの蜂蜜(ヘザーハニー)に出会った。濃厚でクリーミー、独特の味がある。私は、蜂蜜が思っていたよりはるかに複雑なことに気づいた。それ以来、新しい種類の蜂蜜を見つけたら必ず試しに買ってみるようになった。家の棚にはオレンジの花、ユーカリ、ラベンダー、その他多くの蜂蜜が乱雑に積み重なり、私はそのひとつひとつにふさわしい料理の用途があることを発見した。
どれくらい多くの種類の蜂蜜が市販されているのかは分からない。蜂蜜の風味はハチが集めた植物の蜜に由来する。ハチが様々な花から蜜を集めた場合、蜂蜜の香りと味ははっきりしなくなり、ほとんど無個性なこともある。

百花蜂蜜 <Multiflower Honey>
このタイプを避ける必要はない。例えばグレングラントベンリアックのような若くて繊細なシングルモルトは、サーモンのマリネや洋梨を煮るバニラシロップに使うような軽くてデリケートな蜂蜜と注意深く組み合わせるべきだ。

栗蜂蜜 <Chesnut Honey>
百花蜂蜜とは正反対に、ロンドンのバラ・マーケットで昨年発見したこの色の濃い強力なシチリア産栗蜂蜜は、ベンリネスグレンファークラスの一部またはグレンロセスの一部のような土っぽい、またはカビっぽい性質を示すシングルモルトを補完する。この特性はシェリー樽熟成によって強まる。ホロホロ鳥またはキジをオーブンでローストする前に、少量のウイスキーとスパイスを混ぜた栗蜂蜜を塗ってみよう。
特に「コーヒーとクルミのケーキ」には栗蜂蜜を試してみて。

オレンジの花蜂蜜 <Orange Blossom Honey>
花のような香りで味の良いこの蜂蜜は、フルーティなスペイサイド産ウイスキー、特にバーボン樽で熟成したもにぴったりだ。
人参のグラッセ添えラムの焼きカツレツとグレンリベット 12年グレンフィディック・ソレラリザーブまたはグレンマレイを組み合わせる場合、あるいはアップルパイとハニーカスタードを組み合わせる場合の「架け橋」として完璧。

ヒース蜂蜜 <Heather Honey>
スコットランドの最高の食品のひとつ、ヒース蜂蜜は、リッチなドライフルーツと共にモルティな性質を示す、深く複雑なシングルモルトと完璧な組合せになる。少し挙げるだけでもストラスアイラアベラワーバルヴェニークラガンモアなどは、ヒース蜂蜜とウイスキーのアイスクリームに芳しいフルーツケーキの香りを加えるだろう。

最後に、とてもシンプルで簡単に作れるアイスクリームのレシピをどうしてもご紹介したい。これで棚に蜂蜜の瓶を積み重ねるだけの価値があることに賛同いただけるだろう!

ヒース蜂蜜とシングルモルトのアイスクリーム

6人分の材料
セミスキムミルク(半脱脂乳)100 ml
バニラビーンズ 半本
シングルクリーム(低脂肪クリーム)150 ml
卵黄4個
グラニュー糖40 g
ヒース蜂蜜 大さじ1
シングルモルト50 ml

アイスクリームの作り方
①ソース鍋でミルクとクリームを混ぜ合わせる。
②ナイフを使ってバニラビーンズを縦に半分に裂き、種をかき出して①に鞘と種を加える。
③5分間中火にかける。
④10分置いてバニラビーンズを取り除く。
⑤卵黄に砂糖を加えてリボン状に垂れるようになるまで泡立てる。泡立て続けながら、ここに④を注ぐ。
⑥ソース鍋に戻し、弱火にかける。絶えずかきまぜながら、カスタードが濃厚になり、木のスプーンの後ろに付くくらいまで煮詰める(カスタードが凝固してしまうので、沸騰させないこと)。
⑦蜂蜜とシングルモルトを加える。
⑧冷蔵庫で冷やす。
⑨アイスクリームメーカーに入れるか、直接、冷凍庫に入れる。

アルコールを含んでいるので、滑らかでクリーミーな質感が保たれる。
ショートブレッドを添えて味わおう。

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