オールドプルトニーの200周年を祝って【第2回/全3回】
文:ガヴィン・スミス
このたびボトリングされた30年熟成のウイスキーも、マルコム自身が若い頃にシフトオペレーターとして製造したスピリッツなのだという。このスピリッツを製造した数日後に、自分で樽詰めしたことも憶えている。

プルトニー史上最高酒齢の「オールドプルトニー50年」(写真右)と「オールドプルトニー30年」。極めて少数のロットで世界のウイスキーファンにお披露目される。メイン写真は、記念ボトルを手掛けたサラ・バージェス(マスター・オブ・ウイスキー・クリエーション)。
「第4倉庫にあったアメリカンオークのリフィル樽に詰めました。熟成の初日から、ずっと私の一部のように感じてきた原酒なんです」
いまや重鎮となったマルコムは、プルトニー蒸溜所でのウイスキーづくりを振り返って言う。
「蒸溜所の200周年は、オールドプルトニーというシングルモルトブランドにとっても重要な節目。かつてここでウイスキーづくりに関わった人や、現在の関係者にとっても誇らしい瞬間です。この蒸溜所は、2世紀にわたって故郷の港町ウィックに深く根ざしてきました。海風の吹きすさぶ独特な立地と気候は、ウイスキーの個性に不可欠な要素。オールドプルトニーほど、生産地と深く結びついたウイスキーはありません」
希少な限定品である「オールドプルトニー30年」と「オールドプルトニー50年」は、どちらも美しいボトルデザインに仕上げられている。優美でありながら、ほどよく控えめな感じもオールドプルトニーらしい。
デカンタはルイス・モーバリーのデザインに基づいて、グレンケアンが特注で製作した。ユニークな外箱はモランズ・ウッド・コンポーネンツが手造りしたのだという。インターナショナル・ビバレッジのサラ・バージェス(マスター・オブ・ウイスキー・クリエーション)が説明する。
「この30年熟成のウイスキーは、定番ラインナップへの格上げも検討しています。今回は1,000本限定ですが、継続的に販売できそうな感触もあります。もう一方の50年熟成は、まさに200周年の記念日を祝う特別な限定品。ボトリングも200本のみなので、アメリカンオークとヨーロピアンオークのリフィル樽を組み合わせた4種類の樽から原酒を選定しました」
熟成年数の「50」に樽種の「4」をかけると「200」になる。だからアニバーサリーにふさわしい数字なのだ。
「この50年熟成のウイスキーは特に海岸のような印象が強く、香味にどこまでも深みがあります」
海の香りでさらなる挑戦へ
長期熟成のシングルモルトをボトリングできた経緯について、マルコム・ウェアリングも特別な思いを語ってくれた。
「プルトニー蒸溜所のモルト原酒は、大半をブレンデッドウイスキーのメーカーに販売する時代が長く続きました。そんな背景を振り返ってみても、これだけの長期熟成原酒を確保できたのは幸運です」
それぞれの原酒は、貯蔵庫の環境によって熟成の状態が異なる。だから個々の樽について熟知していなければならないのだとマルコムは語る。
「ラック式とダンネージ式でも違いがあるし、貯蔵庫内の場所でも違いが出ます。今回使用した原酒の95%はアメリカンオーク樽熟成で、最も古い原酒は1970年に樽詰めされたものでした」

かすかな塩気を感じることから、「北のマンサニージャ」と呼ばれたオールドプルトニー。サラ・バージェスは「オールドプルトニー50年」の処方にマンサニージャシェリー樽の熟成原酒を使用し、オロロソシェリー樽の甘みでまろやかに補った。
この50年熟成のウイスキーは、プルトニー蒸溜所の最高酒齢記録を塗り替えた。これまでにリリースされた長期熟成のウイスキーといえば、2023年と2025年のチャリティーオークション「One of One」用にボトリングした「オールドプルトニー ボウウェーブ」(45年熟成)と「オールドプルトニー ポラリス」(47年熟成)がある。
現在のウイスキー市場は、世界的に厳しい状況が続いている。だがプルトニー蒸溜所への影響は、意外なほど少ないようだ。多くの競合他社とは異なり、プルトニー蒸溜所は減産していない。これまで同様に週5日稼働し、今年も純アルコール換算で年間130万リッターを生産する予定だという。
マルコム・ウェアリングのチームは、地元のワッテン・メインズ農場で栽培された新しい大麦品種を試験的に使用している。これは「ディアブロ」という名の品種で、これまでプルトニー蒸溜所でも300トンをスピリッツ製造に使った。将来的にはこの品種だけでウイスキーをボトリングする構想もあり、さまざまな樽種で熟成を開始したところだ。
長期熟成のシングルモルトと蒸溜所限定商品をボトリングし、プルトニー蒸溜所は新たなマーケティングキャンペーンにも乗り出している。大改修を済ませたビジターセンターが一般公開され、多彩なツアーの体験メニューも注目の的だ。
シングルモルトブランドのオールドプルトニーは、「Character Runs Deep」(個性は深く宿る)というキャッチフレーズを打ち出している。これはブランドのルーツを大事にしながら、新時代の幕開けを告げるメッセージだ。
創業した1826年以来、プルトニー蒸溜所のウイスキーは「ザ・マリタイム・モルト」(海のモルト)として知られてきた。その力強い個性、厳しい自然環境、伝統の職人技について、現代のウイスキーファンにあらためて語り直すキャンペーンとなっている。
ケイスネス地方で、間違いなくもっとも老練なウイスキーメーカー。その個性と伝統を守りながら、プルトニー蒸溜所は新しい歴史に足を踏み出している。
(つづく)





